金先物で連日サーキットブレーカー発動、背景と今後の見通し
はじめに
2026年2月、日本の金先物市場で異例の事態が続いています。大阪取引所では2日連続でサーキットブレーカーが発動され、前日の急落から一転して急騰するという激しい値動きが投資家を驚かせました。
金価格は2026年1月末に国内で初めて1グラム3万円を突破した後、急落と急騰を繰り返しています。この乱高下の背景には、トランプ政権の関税政策やドル高進行、利益確定売りなど複数の要因が絡み合っています。
本記事では、サーキットブレーカー発動の経緯と仕組み、金価格が乱高下している背景、そして投資家が注意すべきポイントについて詳しく解説します。
サーキットブレーカー発動の経緯
2月2日:急落によるサーキットブレーカー発動
2月2日、大阪取引所は金先物の売買を一時中断するサーキットブレーカーを発動しました。前営業日比で下げ幅が制限値幅の10%に達したためです。
前週末にかけてニューヨーク市場で金価格が急落し、その流れを受けて休日明けの2日もアジア時間の取引で相場が大きく下落しました。田中貴金属は通常、金価格を午前・午後の2回公表していますが、この日は国際指標の急落を受けて夕方にも異例の公表を行いました。
金価格は前週末比で4,341円安の25,287円まで下落。わずか数日前に3万円を突破したばかりの価格から大幅な調整となりました。
2月3日:急騰による連日のサーキットブレーカー発動
翌2月3日、今度は急騰によりサーキットブレーカーが発動されました。前日比の上げが制限値幅の10%に達したためです。
2日のニューヨーク市場で金価格に下げ止まりの兆しがみえ、3日のアジア時間で上昇に転じました。前日の急落を受けて買い戻しが入り、売りが売りを呼んだ前日とは逆に、買いが買いを呼ぶ展開となりました。
1月29日にも急騰でサーキットブレーカー発動
実は、1月29日にも金先物は急騰によりサーキットブレーカーが発動されていました。この日、ニューヨーク市場で金価格は1トロイオンスあたり5,411ドルの史上最高値を更新。国内でも中心限月が前日比1,753円(6.6%)高い28,498円を付け、初めて1グラム3万円を突破しました。
わずか1週間で急騰・急落・急騰と激しい値動きが続き、市場関係者の間でも異例の展開として注目されています。
サーキットブレーカー制度の仕組み
サーキットブレーカーとは
サーキットブレーカーは、金融市場の急激な変動に対応し、取引所が取引を一時的に制限・中断する制度です。市場参加者に冷静な判断を促し、パニック売買を抑制することで、市場の価格形成機能がマヒすることを防ぐ目的があります。
日本では1994年2月に導入されました。取引所が定めた制限値幅の上限または下限値段で約定があった場合、即時に発動され、取引が10分間停止されます。
商品先物における制限値幅
大阪取引所の商品先物では、制限値幅の基準値段(前取引日の清算値段)に所定の比率を乗じて得た値幅が設定されます。金先物の場合、制限値幅は10%となっています。
制限値幅に達した後も相場が過熱し続ける場合は、第一次制限値幅、第二次制限値幅と段階的に拡大される仕組みになっています。これにより、一方向への過度な値動きを抑制しつつも、市場の価格発見機能を維持しています。
即時約定可能値幅制度(DCB)
サーキットブレーカーとは別に、即時約定可能値幅制度(DCB:Dynamic Circuit Breaker)も設けられています。これは直近約定値段を基準として、短時間での急激な値動きを抑制する仕組みです。DCBが発動された場合、最低30秒の中断が入り、継続して発動する場合は30秒ずつ延長されます。
金価格が乱高下している背景
利益確定売りの連鎖
今回の急落は、急騰局面で積み上がった買いポジションが一気に解消されたことが大きな要因です。1月29日に史上最高値を更新した後、利益確定売りが殺到しました。下落に転じた瞬間に売りが売りを呼ぶ展開となり、急落につながりました。
ドル高の進行
為替市場ではドル高が進行しています。金はドル建てで取引されるため、ドルが上昇すると相対的に金の魅力が低下し、売られやすい環境になります。トランプ政権の経済政策への期待からドル高が進んだことが、金価格の下押し要因となりました。
トランプ関税政策の影響
トランプ政権の「米国第一主義」政策は、市場に大きな不透明感をもたらしています。大規模な関税導入は物価上昇を招く一方、サプライチェーンの混乱による経済成長の鈍化も懸念されています。
この「スタグフレーション」(物価上昇と景気停滞の同時進行)懸念から、安全資産である金への資金流入が加速する場面もあります。関税政策の発表直後に金価格が急騰する事例が複数みられました。
中央銀行の金購入と投機マネー
構造的な要因として、世界各国の中央銀行が外貨準備として金を積極的に購入していることが挙げられます。地政学リスクの高まりや、米ドルへの過度な依存を避けたいという思惑から、金への需要は堅調に推移しています。
一方で、ETFを通じた投機的な資金流入も増加しており、価格変動を増幅させる要因となっています。
投資家への注意点と今後の展望
ボラティリティの高まりに注意
2025年の金価格は年間65%上昇し、1979年以来の大幅高を記録しました。しかし、10月には11%急落するなど、価格変動(ボラティリティ)も大きくなっています。2026年は「荒れ相場」を警戒すべき状況です。
サーキットブレーカーが連日発動されるほどの乱高下は、投資家にとってリスクが高い状況を示しています。レバレッジをかけた取引を行っている場合は、想定以上の損失を被る可能性があります。
証拠金の引き上げリスク
CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)は、2025年12月末に金先物の証拠金を引き上げました。その際にも下落幅が拡大する場面がありました。今後も相場の変動が続けば、さらなる証拠金引き上げが行われる可能性があります。
今後の価格見通し
ゴールドマン・サックスは2026年12月に金価格が4,900ドルに達すると予想しています。中央銀行とファンド投資家からの構造的な金需要は2026年以降も続くとみられ、長期的な上昇トレンドは維持されるとの見方が多いです。
ただし、短期的にはドル高・ドル安、関税政策の動向、地政学リスクなどの要因で上下に振れる展開が予想されます。
まとめ
金先物市場で連日サーキットブレーカーが発動される異例の事態は、現在の金市場の不安定さを如実に示しています。急騰と急落を繰り返す背景には、利益確定売り、ドル高進行、トランプ政権の関税政策、投機マネーの流入など複数の要因があります。
長期的な金への需要は堅調ですが、短期的なボラティリティは高い状態が続くと予想されます。金投資を検討している方は、レバレッジのかけすぎに注意し、余裕を持った資金管理を心がけることが重要です。
市場の動向を冷静に見極めながら、リスク管理を徹底した投資判断を行いましょう。
参考資料:
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