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by nicoxz

金価格5000ドル目前、楽観市場への警告シグナルを読む

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はじめに

金(ゴールド)価格の最高値更新が続いています。2026年1月21日、ロンドン現物価格は一時1トロイオンス(約31.1グラム)あたり4887.82ドルと過去最高値を記録し、5000ドルの大台が視界に入ってきました。国内価格も1グラムあたり2万7287円と史上最高値を更新しています。

株式市場では楽観論が広がる中、金価格の上昇は何を意味するのでしょうか。かつて炭鉱夫が有毒ガスの検知に使ったカナリアのように、金は市場に潜むリスクを警告する「黄金のカナリア」として機能しています。本記事では金価格上昇の背景と、投資家が注視すべきシグナルについて解説します。

金価格5000ドル到達の現実味

主要金融機関の強気予想

ゴールドマン・サックスは2026年1月22日付のリポートで、2026年末の金価格予想を従来の1トロイオンス4900ドルから5400ドルに引き上げました。個人投資家や新興国の中央銀行による買いが継続するとの見方です。

J.P.モルガンも2026年第4四半期の平均価格を5055ドルと予測しており、ウォール街の主要金融機関は軒並み5000ドル超えを見込んでいます。2025年の金価格は年間65%上昇し、1979年以来の大幅高を記録したことも、この強気予想を支えています。

史上最高値更新の連続

2026年に入ってからも金価格の上昇は続いています。1月5日にはトランプ大統領がベネズエラのマドゥロ大統領の拘束を発表したことで安全資産への需要が増加しました。1月19日にはトランプ大統領がグリーンランド取得に反対する欧州8カ国への関税示唆で再び最高値を更新しました。

地政学リスクが高まるたびに金に資金が流入するパターンが定着しており、この傾向は当面続くとみられています。

金価格上昇の3つの構造的要因

中央銀行の積極的な金購入

金価格上昇の最大の要因は、世界の中央銀行による継続的な金購入です。ロシアがウクライナを侵攻した2022年以降、中央銀行は3年連続で年間1000トン超という記録的な水準で金を購入してきました。

外貨準備に占める金の割合は、2005年3月末の13.6%から2025年3月末には23.5%へと急上昇しました。これは2000年以降の最高水準です。世界の外貨準備における金の比率は30%へと上昇し、ドル資産は約40%という歴史的な低水準まで下落しました。

ドル離れの加速

公的通貨金融機関フォーラム「OMFIF」の調査によると、参加した中央銀行の58%が「今後1〜2年で準備資産の多様化を計画している」と回答しました。米国の政府債務水準の上昇や、米国による米ドル建て資産凍結への懸念が背景にあります。

「ドルを真に代替できる資産は存在しないが、ユーロや人民元ではなく、金が最も有力な候補」との見方が広がっています。中国、ポーランド、トルコ、インドなど新興国を中心に金準備の積み増しが続いています。

地政学リスクの高まり

ウクライナ戦争の長期化、中東情勢の不安定化、米中対立の深刻化など、地政学リスクは収まる気配がありません。トランプ政権の予測困難な外交政策も不確実性を高めています。

こうした「有事」のたびに金への資金流入が起きる構図が定着しており、安全資産としての金の価値が再認識されています。

「黄金のカナリア」が発する警告

株式市場との乖離

金価格の上昇と株式市場の楽観論には興味深い乖離があります。株価が上昇している局面では通常、投資家はリスク資産である株式に資金を集中させるため、「有事の金」としての魅力は薄れます。

しかし現在は株高と金高が同時進行しています。これは投資家が株式市場の上昇を享受しながらも、将来の急落に備えてヘッジを積み増していることを示唆しています。

大きなショックへの備え

金価格の持続的な上昇は、株価急落を伴うような大きなショックへの備えが水面下で進んでいることを意味します。機関投資家やファンドは、表面上の楽観論とは裏腹に、リスク分散として金のポジションを拡大しています。

ピクテの分析によれば、中央銀行とファンド投資家からの2つの構造的金需要は2026年以降も続き、金価格に上昇圧力がかかり続けると予想されています。

2026年は「荒れ相場」の可能性

一方で、2025年10月には金価格が11%急落した場面もありました。12月末のCME証拠金引き上げ時にも下落幅が拡大するなど、投機色が強まっています。2026年は上昇一辺倒ではなく「荒れ相場」になる可能性も指摘されています。

FRBの利下げ期待が急速に後退すれば、金は急落する可能性もあります。金利上昇局面では利息を生まない金の魅力が相対的に低下するためです。

金投資における注意点

下落リスクも存在

イギリスのリサーチ会社キャピタル・エコノミクスは、金価格の記録的な上昇は主にFOMO(取り残されることへの恐怖)によって押し上げられたものと分析し、2026年末までに1オンス3500ドルまで下落する「小さな暴落」を予想しています。

金価格が下落しやすい条件として、世界経済の安定、金利上昇、ドル高、中央銀行や大口投資家の売却などが挙げられます。これらの条件が重なれば、上昇トレンドが反転する可能性もあります。

ポートフォリオの一部として

金は安全資産としての性格が強く、株式や債券との相関が低いという特徴があります。ポートフォリオ全体のリスク分散として一定割合を保有することで、市場の急変時にクッションの役割を果たすことが期待できます。

ただし、金は利息や配当を生まない資産です。価格変動のみで収益を得る必要があるため、投機的な短期売買よりも長期的な資産保全の観点から保有することが推奨されます。

今後の見通し

5000ドル到達後も上昇継続か

主要金融機関の予想通りであれば、2026年中に金価格は5000ドルを超え、その後も上昇を続ける可能性があります。中央銀行の金購入トレンドは少なくとも10年にわたり続く可能性があるとされています。

外貨準備全体における金の目標配分比率は平均約22%で安定していますが、この目標を引き上げる動きが出てくれば、さらなる需要増加が見込まれます。

地政学リスクの行方がカギ

金価格の行方を左右するのは、地政学リスクの動向です。ウクライナ戦争の終結や米中関係の改善があれば、安全資産としての需要は減退する可能性があります。逆に、台湾有事など新たな地政学リスクが顕在化すれば、金価格はさらに上昇するでしょう。

まとめ

金価格が5000ドルに迫る中、この「黄金のカナリア」は楽観に包まれた市場に重要な警告を発しています。株式市場が楽観論に沸く裏側で、投資家は着実にリスクヘッジを進めています。

中央銀行の継続的な金購入、ドル離れの加速、そして地政学リスクの高まりという3つの構造的要因が金価格を押し上げています。2026年は「荒れ相場」になる可能性も指摘されていますが、長期的な上昇トレンドは継続するとの見方が主流です。

投資家は金の警告シグナルを無視せず、ポートフォリオ全体のリスク管理を改めて見直す好機といえるでしょう。

参考資料:

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