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by nicoxz

金価格が史上初の5000ドル突破、地政学リスクが押し上げ

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はじめに

金(ゴールド)価格の国際指標が、2026年1月26日のアジア時間取引で史上初めて1トロイオンス(約31.1グラム)あたり5,000ドルを突破しました。その後も上昇を続け、5,100ドル台まで達しています。

1年前の2025年1月時点では約2,660ドルだった金価格は、わずか1年でほぼ2倍に急騰しました。2025年3月に3,000ドル、10月に4,000ドルを突破し、今回5,000ドルの大台に到達しています。

この歴史的な上昇の背景には、米国とNATOのグリーンランド問題をめぐる対立、FRB(米連邦準備制度理事会)の独立性への懸念、そして世界的な財政リスクの高まりがあります。本記事では、金価格急騰の要因と今後の見通しについて詳しく解説します。

金価格の推移と最新動向

5,000ドル突破から5,100ドル台へ

1月26日、金現物価格は取引時間中に5,104ドルの史上最高値を記録しました。主要な価格の推移は以下の通りです。

日付価格(1トロイオンス)出来事
2025年1月約2,660ドル-
2025年3月3,000ドル突破-
2025年10月4,000ドル突破-
2026年1月19日約4,676ドルグリーンランド関税発表で最高値更新
2026年1月26日5,104ドル史上初の5,000ドル超え

金先物は2025年12月22日に4,500ドルを突破し、年間上昇率は71%に達しました。これはS&P 500指数の18%上昇を大きく上回る驚異的なパフォーマンスです。

銀も連動して急騰

銀(シルバー)価格も金に連動して急騰しています。1月26日には1トロイオンスあたり100ドルを突破し、一時115ドルまで上昇する場面がありました。

ブルッキングス研究所のRobin Brooks氏は「貴金属価格の上昇は息をのむほどで、非常に恐ろしい。これはもっと大きな何かの一部だ」と警告しています。

価格急騰の要因

1. グリーンランド問題とNATO内の亀裂

金価格上昇の最大の要因は、米国とNATO同盟国の間で深刻化したグリーンランド問題です。

トランプ大統領は2026年初頭、デンマーク自治領グリーンランドの取得を目指し、軍事力の行使も辞さない姿勢を示しました。さらに、グリーンランド売却に応じないNATO加盟8カ国(デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランス、ドイツ、英国、オランダ、フィンランド)に対して、2月1日から10%、6月1日から25%の関税を課すと警告しました。

これに対し、欧州諸国は強く反発しました。フランスのマクロン大統領は関税を「受け入れられない」と非難し、英国のスターマー首相は「完全に間違っている」と批判しました。EUは報復措置として「対抗強制手段(ACI)」の発動を検討するなど、NATO内部の亀裂が表面化しました。

1月21日、トランプ大統領とNATO事務総長のマーク・ルッテ氏が「枠組み合意」に達し、関税脅威は撤回されました。しかし、市場ではNATO同盟の結束への懸念が残っており、安全資産としての金への需要を下支えしています。

2. FRBの独立性への脅威

金価格上昇のもう一つの大きな要因は、FRB(米連邦準備制度理事会)の独立性に対する懸念です。

2026年1月9日、司法省がFRB理事会に対して大陪審召喚状を送達したことが明らかになりました。ジーニーン・ピロ連邦検事が主導するこの調査は、パウエル議長が2025年6月の議会証言で、25億ドル規模の本部ビル改修プロジェクトについて虚偽の説明をしたとするものです。

パウエル議長は、この刑事捜査は「大統領の超低金利要求を拒否したことへの報復であり、脅迫戦術だ」と反論しました。「刑事告発の脅威は、FRBが大統領の意向ではなく、国民に最も役立つと判断した金利設定を行っていることへの対抗措置だ」と述べています。

この事態を受け、金価格は急騰しました。金ETFへの資金流入も加速しており、State Street Investment ManagementのAakash Doshi氏は「トランプ政権2期目がもたらす『不確実性プレミアム』により、金ETFは複数年にわたる蓄積サイクルに入っている」と分析しています。

3. 「通貨価値毀損トレード」の加速

金価格の上昇は、ウォール街で「デベースメント・トレード(通貨価値毀損トレード)」と呼ばれる投資行動の加速を反映しています。

世界各国で政府債務が膨張する中、投資家は政府や中央銀行の信用に依存しない「ハードアセット」として金や銀を購入しています。FRBの独立性への懸念は、米ドル建て資産への信頼を揺るがし、金への資金シフトを加速させています。

バンク・オブ・アメリカのブライアン・モイニハンCEOは「FRBの独立性が損なわれれば、市場は罰を与えるだろう」と警告しています。

4. 中央銀行による金購入の継続

新興国を中心とした中央銀行による金購入も、価格を下支えしています。ゴールドマン・サックスの推計によると、中央銀行による金購入は月平均約60トンで、2022年以前の月17トンを大きく上回っています。

中国やロシアなどは、米ドル依存からの脱却を目指し、外貨準備の一部を金にシフトしています。地政学的な対立が続く中、この傾向は今後も継続すると見られています。

今後の見通し

ゴールドマン・サックスは5,400ドル予想

主要金融機関は金価格についてさらなる上昇を予想しています。

ゴールドマン・サックスは2026年12月の金価格予想を従来の4,900ドルから5,400ドルに引き上げました。同社は「グローバルなマクロリスクと政策リスクへのヘッジ需要が『粘着性』を持つようになった」と分析しています。

一部のアナリストは、現在の傾向が続けば2026年内に6,000ドルに到達する可能性もあると指摘しています。

金価格を支える要因

State Street Investment ManagementのDoshi氏は、以下の要因が金価格を支え続けると予想しています。

  • 地政学的緊張の継続
  • 高水準の政府債務への懸念
  • インフレ圧力への警戒
  • 米ドルの弱含み懸念

「これらのトレンドは2026年中に反転する可能性は低く、総合的に見て金価格にとって追い風となる環境が続く」と同氏は述べています。

注意点と投資上の考慮事項

高値圏でのボラティリティに注意

金価格が史上最高値圏で推移する中、短期的なボラティリティ(価格変動)には注意が必要です。地政学的なイベントや金融政策の変更によって、価格が大きく変動する可能性があります。

長期投資としての金の位置づけ

金は伝統的に、インフレヘッジや地政学リスクへの保険として、ポートフォリオの一部に組み入れられることが多い資産です。ただし、配当や利息を生まないため、保有コストがかかる点は考慮が必要です。

円建て金価格の動向

日本の投資家にとっては、円建ての金価格も重要です。田中貴金属工業によると、1月14日には店頭小売価格(税込)が1グラムあたり26,051円と史上最高値を更新しています。ドル建て金価格と為替(ドル円)の両方が影響するため、動向を注視する必要があります。

まとめ

金価格が2026年1月26日に史上初めて5,000ドルを突破し、5,100ドル台まで上昇しました。わずか1年で価格がほぼ2倍になるという、歴史的な上昇を記録しています。

この急騰の背景には、グリーンランド問題をめぐるNATO内の亀裂、FRBの独立性への脅威、世界的な財政リスクの高まりなど、複合的な要因があります。投資家は政府や中央銀行の信用に依存しない「ハードアセット」として金を求めており、この傾向は当面続く可能性が高いとされています。

ゴールドマン・サックスは2026年末の金価格を5,400ドルと予想しており、一部では6,000ドル到達の可能性も指摘されています。地政学リスクが高止まりする限り、金への資金流入は続くと見られます。

参考資料:

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