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by nicoxz

記録的大雪は温暖化の影響か?科学が解明するメカニズム

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はじめに

2026年1月、日本列島は記録的な大雪に見舞われました。北陸から東北、北海道にかけて多くの地点で積雪が100センチメートルを超え、交通機関の混乱や生活への深刻な影響が続いています。石川県金沢市では6時間降雪量が1月として観測史上最大を記録し、青森県の酸ヶ湯では積雪が457センチメートルに達するなど、各地で歴史的な数字が並びました。

こうした中、「地球温暖化が進んでいるはずなのに、なぜこれほどの大雪が降るのか」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。実は近年の研究により、温暖化と大雪の間には密接な関係があることが明らかになっています。本記事では、そのメカニズムと今後の見通しについて詳しく解説します。

イベントアトリビューションが明かす温暖化と大雪の関係

「事象帰属」という新しい分析手法

近年、気象学の分野で注目されているのが「イベントアトリビューション(事象帰属)」という手法です。これは、特定の気象現象が発生した際に、人為的な地球温暖化がどの程度影響しているかを定量的に分析するものです。

北海道大学の佐藤友徳准教授らの研究グループは、この手法を用いて日本の大雪を分析してきました。2021年12月に札幌や小樽で発生した記録的な大雪について、機械学習と高解像度シミュレーションを組み合わせた分析を実施。その結果、温暖化がなかった場合と比較して、降雪量が最大20%増加していたことが判明しました。

文部科学省の最新研究結果

文部科学省気候変動予測先端研究プログラムの合同研究チームも、令和7年2月上旬の大雪について同様の分析を行っています。研究によると、日本海側を中心とした大雪では7日間積算降雪量が温暖化により約6%増加しており、北海道十勝地方の大雪ではピーク時の降雪量が約10%増加していたことが示されました。

これらの研究は、「温暖化にもかかわらず大雪が降っている」のではなく、「温暖化しているからこそ大雪が増えている」という一見矛盾した現実を科学的に裏付けるものです。

なぜ温暖化で大雪が増えるのか

水蒸気量の増加がカギ

温暖化と大雪を結びつける最大の要因は、大気中の水蒸気量の増加です。気温が1度上昇すると、大気が含むことのできる水蒸気の量は約7%増加するとされています。日本海の海面水温も上昇しているため、冬に寒気が南下した際、海から供給される水蒸気の量が従来より多くなっています。

気象研究所のシミュレーションによれば、温暖化が進むと暖かい海面からは現在よりも多くの水蒸気が蒸発し、それがJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)付近に集まって積乱雲が発達します。この結果、短期間に集中的な降雪が発生しやすくなるのです。

3つの条件が重なるとき

大雪が発生するメカニズムには、3つの重要な条件があります。第一に、気温が上昇しても0度以下であれば雨ではなく雪として降ること。第二に、気温が上がるほど空気中に含まれる水蒸気の量が増えること。第三に、地球温暖化が進行すると日本海の海面水温も上がるため、寒気の吹き出しの際により多くの水蒸気が大気に供給されること。

これら3つの条件が揃ったとき、温暖化以前よりも多くの雪が降ることになります。特に本州の日本海側や北海道の内陸部など、寒気が入っても気温が0度を下回る地域では、増加した水蒸気がそのまま降雪量の増加につながります。

2026年1月の記録的大雪の実態

今季最強の寒波が襲来

2026年1月20日の大寒に合わせるように、今季最強・最長の寒波が日本列島を襲いました。上空5500メートル付近にはマイナス42度以下という非常に強い寒気が流れ込み、各地で記録的な降雪をもたらしました。

金沢市では6時間降雪量が37センチメートルと通年で観測史上1位を記録。札幌市でも積雪が4シーズンぶりに1メートルを超え、1月としては2000年以降で最大の積雪となりました。青森県酸ヶ湯では積雪が457センチメートルに達し、こちらも1月の観測史上最大を更新しています。

交通・物流への深刻な影響

記録的な大雪は、交通や物流に深刻な影響を与えました。北陸自動車道や磐越自動車道の一部区間が通行止めとなり、車の立ち往生も相次ぎました。群馬県北部、長野県北部、岐阜県には大雪警報が発表され、多くの地域で不要不急の外出を控えるよう呼びかけられました。

日本海側では例年の2倍以上の積雪となっている地域もあり、雪下ろし作業中の事故やなだれの危険性も高まっています。

今後の見通しと注意点

「ドカ雪」は今後も増加傾向

気象研究所の長期予測によると、現状のまま地球温暖化が進行した場合、日本全体の年間降雪量自体は減少していく一方で、一度に1メートル以上積もるような「ドカ雪」は増加すると予測されています。

本州の山間部や北海道の内陸部では、大気中に増えた水蒸気が雪として降るため、10年や30年に1度クラスの極端な大雪がかえって増えると考えられています。最近の研究では、冬の平均気温が高くなると、10年に一度といわれる大雪の危険性が5倍になるとの報告もあります。

備えておくべきこと

今後も記録的な大雪が発生するリスクは高まっていくと考えられます。特に日本海側にお住まいの方は、除雪用品の準備や非常食の備蓄など、日頃からの備えが重要です。また、降雪予報が出ている際は、不要不急の外出を控え、最新の気象情報を確認するようにしましょう。

まとめ

2026年1月の記録的大雪は、地球温暖化と無関係どころか、温暖化が一因となっている可能性が高いことが、イベントアトリビューションという科学的手法によって明らかになっています。海水温の上昇により大気中の水蒸気量が増加し、寒気が流入した際により多くの雪が降るようになっているのです。

今後も年間の総降雪量は減少する一方で、短期間に集中的に降る「ドカ雪」は増えていくと予測されています。気候変動への対策と同時に、個人レベルでの防災意識を高め、いざというときに備えることが大切です。

参考資料:

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