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by nicoxz

IHIが連続最高益|航空エンジンと防衛で脱・総合重工

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はじめに

IHI(旧・石川島播磨重工業)の業績が好調です。2026年3月期の連結純利益は前期比11%増の1,250億円と、2年連続で過去最高益を更新する見込みとなっています。

好調の原動力は、民間航空機エンジンの保守・スペア部品事業と、日本政府の防衛予算拡大に伴う防衛関連事業の伸長です。三菱重工業や川崎重工業と並ぶ「重工3社」の一角ながら、IHIは航空エンジンに経営資源を集中させる独自路線を歩んでいます。

本記事では、IHIの業績好調の背景、事業構造改革の実態、そしてドイツのMTUエアロ・エンジンズをベンチマークに据えた成長戦略について解説します。

IHIの2026年3月期業績|受注・売上・利益すべて過去最高

純利益は2年連続最高益の1,250億円

IHIは2025年11月、2026年3月期の連結純利益(国際会計基準)が1,250億円になる見通しを発表しました。従来予想から50億円の上方修正で、市場予想平均(QUICKコンセンサス1,235億円)も上回る水準です。

営業利益も1,600億円(前期比11.5%増)と過去最高を見込んでおり、年間配当は140円と前期から20円の増配を予定しています。

受注高も過去最高の1兆8,500億円

受注高は過去最高となる1兆8,500億円を見込んでいます。当初予想から600億円の上方修正で、原子力事業で250億円、防衛事業で200億円の増加が寄与しています。

航空・宇宙・防衛セグメントが牽引

セグメント別では「航空・宇宙・防衛」が好調です。売上高は6,900億円(前回予想比100億円増)、営業利益は1,190億円(同100億円増)に上方修正されました。

航空・宇宙・防衛事業の営業利益は全社の8割以上を占めるまでに成長しており、IHIの収益構造が大きく変化していることがわかります。

航空エンジン事業|世界トップ10の実力

民間航空機エンジンの保守・スペア部品が稼ぎ頭

IHIの航空エンジン事業において、特に収益性が高いのが民間航空機エンジンのスペアパーツ販売と保守(MRO:Maintenance, Repair and Overhaul)事業です。

コロナ禍からの航空需要回復に伴い、世界の航空会社はエンジンの整備需要を急増させています。IHIはこの需要を着実に取り込み、業績を押し上げています。

世界シェアで6位のMTU、7位のIHI

航空機エンジン業界の世界市場シェアでは、IHIは7位にランクインしています。ドイツのMTUエアロ・エンジンズが6位で、両社は近い規模で競い合う関係にあります。

IHIは日本のジェットエンジン生産の約7割を担うリーディングカンパニーであり、世界トップ10に入るビッグビジネスを展開しています。

国際共同開発での重要な役割

IHIは大手航空機エンジンメーカーとの国際共同開発にも参画しています。代表的な例が、エアバスA320neo型機に搭載されるPW1100G-JMエンジンです。

このエンジンは、米国のプラット&ホイットニー(RTX傘下、シェア51%)を筆頭に、日本航空機エンジン協会(JAEC)を通じた日本の重工大手3社(同計23%)、ドイツのMTUエアロ・エンジンズ(同18%)が共同開発しています。IHIは複合材ファン部品の開発を担当しており、最先端技術で貢献しています。

防衛事業|政府予算拡大で2030年に2,500億円規模へ

戦闘機用エンジンで国内独占的地位

IHIは防衛省が運用する航空エンジンの開発・生産を主契約者として担っており、戦闘機用エンジンは全機種を担当しています。F-15やF-2といった主力戦闘機のエンジン整備・改修に加え、将来の無人機やミサイル向けの小型エンジン需要も見込まれています。

防衛予算GDP比2%で追い風

日本政府は防衛力の抜本的強化のため、2027年度までに防衛予算をGDP比2%へ増額する方針を打ち出しています。ウクライナ戦争の長期化や中国の軍拡を背景に、防衛関連の受注は今後も堅調に推移すると見られています。

IHIは2030年度に防衛事業で売上収益2,500億円、営業利益率10%という目標を掲げています。2022年度の1,000億円規模から2.5倍の成長を目指す野心的な計画です。

次期戦闘機(GCAP)でも中核的役割

日本、イギリス、イタリアの3カ国で共同開発を進める次期戦闘機「GCAP(Global Combat Air Programme)」は、2035年の配備を目指しています。

エンジン開発を担うのは日本のIHI、イギリスのロールス・ロイス、イタリアのアヴィオの3社。IHIは国産戦闘機エンジン技術の蓄積を活かし、GCAPでも中核的な役割を果たすことが期待されています。

事業構造改革|低収益事業を整理し専門特化へ

ポートフォリオのスリム化

IHIは近年、低収益事業の整理を進めています。2023年から2024年にかけて、車両過給機事業の生産拠点整理や、汎用ボイラー、運搬システム、芝草管理機器、コンクリート建材などの事業を譲渡しました。

これらの構造改革により、利益が残りやすい体質への転換が進んでいます。航空機エンジン事業の営業利益率は22.1%と高水準であり、高収益事業への集中が功を奏しています。

重工3社との違い

三菱重工業、川崎重工業とともに「重工3社」と呼ばれるIHIですが、井手博社長は「競合という意識はあまりない」と語っています。

三菱重工がプラント・エネルギーから防衛まで幅広く手掛け、川崎重工が二輪車やロボットなど多角化を進めるのに対し、IHIは民間航空機エンジンと防衛・宇宙事業を成長ドライバーとして明確に位置づけています。

MTUエアロ・エンジンズをベンチマークに

ドイツの航空エンジン専業大手

IHIがベンチマークとして意識しているのが、ドイツのMTUエアロ・エンジンズです。MTUは1934年にBMWの一部が分離して誕生し、2005年に上場した航空エンジン専業メーカーです。

本社はミュンヘンにあり、軍用・民間用航空機向けの航空用エンジンと産業用ガスタービンの開発・製造・アフターサービスを手掛けています。

専業特化で高収益を実現

MTUは航空エンジンに特化することで、高い収益性と安定した成長を実現しています。IHIが「脱・総合重工」を掲げ、航空エンジン事業に経営資源を集中させる背景には、MTUのビジネスモデルへの高い評価があります。

両社は世界シェアで6位と7位の近い規模にあり、今後の競争と協業の両面で関係が深まる可能性があります。

株価動向と今後の見通し

株価は最高値圏を推移

IHIの株価は防衛予算拡大への期待から上昇を続けており、最高値圏を推移しています。2024年10月には1株を7株とする株式分割を実施し、個人投資家の投資しやすさも向上しました。

アナリストのコンセンサス評価は「買い」で、平均目標株価は3,210円。現在の株価からさらに15%程度の上昇余地があると見られています。

成長分野はエネルギーにも

IHIは航空・防衛以外にも、アンモニア燃料事業を成長分野として位置づけています。脱炭素社会への移行に伴い、アンモニアは火力発電所の燃料として注目されており、IHIはこの分野でも先行しています。

注意点・今後の展望

民間航空需要の変動リスク

航空エンジン事業は民間航空需要に大きく左右されます。コロナ禍では航空需要が急減し、IHIも大きな打撃を受けました。今後、景気後退や地政学リスクによる航空需要の減少があれば、業績に影響を及ぼす可能性があります。

為替変動への感応度

IHIの航空エンジン事業は海外取引が多く、為替変動の影響を受けやすい構造です。円安は追い風となりますが、円高に転じた場合は業績の下押し要因となります。

長期的な競争力維持が課題

航空エンジン産業は技術開発に莫大な投資が必要な分野です。GCAPの次期戦闘機エンジン開発や、次世代の民間航空機エンジン技術への継続的な投資が、長期的な競争力維持の鍵を握っています。

まとめ

IHIは航空エンジンの保守・スペア部品事業と、防衛予算拡大を追い風とした防衛関連事業の伸長により、2年連続で過去最高益を更新する見通しです。

低収益事業の整理を進め、航空エンジンと防衛に経営資源を集中させる「脱・総合重工」の戦略は着実に成果を上げています。ドイツのMTUエアロ・エンジンズをベンチマークに、航空エンジン専業に近いビジネスモデルへの転換を進めています。

日本政府の防衛予算増額、次期戦闘機(GCAP)の開発、民間航空需要の回復など、追い風となる材料は多いです。重工3社の中で独自の成長路線を歩むIHIの今後に注目が集まります。

参考資料:

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