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by nicoxz

IHIが8年ぶりに買収、住友重機の駐車場事業を取得

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はじめに

IHIは2026年1月26日、住友重機械工業の子会社が手掛ける機械式駐車場事業を買収すると発表しました。IHIが企業や事業を買収するのは約8年ぶりのことです。

IHIは過去3年間で収益性が低下した事業10件ほどについて売却や撤退を進めてきました。この構造改革に一定のめどがついたことで、成長を見据えた買収戦略へと舵を切ることになります。

今回の買収により、タワー型や多段式駐車場でトップシェアを持つIHI運搬機械に、パズル式地下駐車場のパイオニアとして知られる住友重機械搬送システムの技術とノウハウが加わります。本記事では、この戦略的買収の詳細と背景を解説します。

買収の概要

事業承継のスキーム

今回の買収は、IHIの連結子会社であるIHI運搬機械(東京都中央区)が、住友重機械搬送システム(東京都品川区)から機械式駐車場事業を吸収分割により承継する形で行われます。

吸収分割契約の締結は2026年3月31日を予定しており、効力発生日は同年11月1日の見込みです。取得価額は非公表とされています。

承継される事業の規模

住友重機械搬送システムの機械式駐車場事業の売上高は、2024年12月期で70億9000万円です。承継される資産は2024年12月31日時点で総額67億700万円(流動資産63億4300万円、固定資産3億6400万円)となる見込みで、負債は24億9400万円が予定されています。

両社の強みを融合

買収によって、IHI運搬機械はオフィス、マンション、商業施設向けの地下式駐車場装置事業を取得することになります。タワー型や二・多段式駐車場でトップシェアを持つ同社に、パズル式地下駐車場のパイオニアである住友重機械搬送システムの技術とノウハウが加わることで、製品ラインナップの拡充と経営基盤の共通化による効率化が期待されています。

IHIの構造改革と成長戦略への転換

過去3年間の事業整理

IHIは、経営資源を成長事業および育成事業へ重点的に配分するため、収益性が低下した事業の整理を進めてきました。過去3年間で10件ほどの事業について売却や撤退を実施し、持続的な高成長を実現し得る企業体質への変革を図ってきました。

例えば、芝草・芝生管理機器事業については、国内市場での人口減少や需要低減が見込まれる中、外部環境の変化に対応するため共栄社への譲渡を決定しています。

グループ経営方針2023

IHIは2023年5月に「グループ経営方針2023」を発表しました。この方針では、資源・エネルギー・環境分野、社会基盤分野、産業システム・汎用機械分野について、ライフサイクルビジネス(LCB)の深化と進化を軸とした成長戦略に加え、事業構造改革の徹底を通じたキャッシュ創出に重点を置いています。

市場成長が見込める分野への積極的なリソース投入を方針に掲げており、今回の機械式駐車場事業の買収もその一環と位置づけられます。

成長事業への集中投資

成長事業と位置付ける航空エンジン・ロケット分野では、コロナ禍からの回復による民間機需要の急速な回帰に加え、防衛分野でも需要拡大が見込まれています。また、燃料アンモニア、メタネーション、持続可能な航空燃料(SAF)などのカーボンソリューション分野にも注力しています。

井手博社長は「カーボンソリューションの実現には投資が必要。成長分野に集中的に投資する」と述べており、今回の買収も攻めの経営への転換を示す動きといえます。

機械式駐車場市場の動向

IHI運搬機械の市場ポジション

IHI運搬機械は、1960年代に日本初の機械式立体駐車装置を納入して以来、都心部を中心に各種商業施設やマンションに幅広くパーキングシステムを導入してきました。エレベータパーキングで国内シェア40%を保有し、機械式パーキングの納入台数は70万台以上、自走式駐車場の収容台数は13万5000台余りの実績を誇ります。

同社の強みは、製品受注から開発・設計・製造・販売・据付・メンテナンス・改修・運営管理・リニューアルに至るまで、すべてのセクションが連携するワンストップサービスを確立している点にあります。

市場の課題と新技術

機械式駐車場市場では、駐車場の稼働率低下やマンションでの利用者減少による維持管理の問題が顕在化しています。特に都市部では、カーシェアリングの普及により自家用車保有率が低下し、既存の駐車場設備の維持が課題となっています。

こうした状況に対応するため、IHI運搬機械は業界初となる機械式駐車装置から発生する回生エネルギーを利用した「省エネ型駆動装置」や「電気自動車充電対応パーキング」を開発。環境対応と利便性向上を両立させる製品開発を進めています。

MaaS対応への取り組み

モビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)の普及に伴い、駐車場の役割も変化しつつあります。IHI運搬機械は、都市整備を伴う大規模なMaaSには次世代自走式駐車場で対応し、既存の駐車場問題とシェアリングエコノミーにはIoT技術によるサービスプロバイダーとの協業モデルで対応する戦略を描いています。

海外展開

ASEAN諸国を中心に海外展開も積極的に進めています。主力活動地域のタイではパーキングの活動拠点を設立し、営業から現地据付、24時間365日体制のメンテナンスまで一貫したサービスを提供しています。

住友重機械工業側の狙い

ポートフォリオ改革の一環

事業売却する住友重機械工業は、「中期経営計画2026」に基づくポートフォリオ改革を推進しています。「選択と集中」を実現し、成長性の高い事業領域へ経営資源を重点配分する方針を掲げており、今回の機械式駐車場事業の売却もその一環です。

住友重機械工業グループは、プラスチック射出成形機や減速機などのコア事業に経営資源を集中させ、競争力の強化を図る戦略をとっています。

注意点と今後の展望

市場競争の激化

機械式駐車場市場では、複数のメーカーが競合しています。今回の買収によりIHI運搬機械は製品ラインナップを拡充しますが、市場全体としては成熟化が進んでおり、価格競争も激しくなっています。

統合後のシナジー創出

異なる企業文化を持つ事業を統合する際には、人材や技術の融合が課題となります。住友重機械搬送システムが培ってきたパズル式地下駐車場のノウハウを、IHI運搬機械の営業・メンテナンス網を通じてどのように展開していくかが、買収成功の鍵を握ります。

IHIの今後の買収戦略

約8年ぶりの買収を実行したIHIですが、構造改革に一定のめどがついた今、今後も成長分野での積極的なM&Aを検討する可能性があります。航空・宇宙分野やカーボンソリューション分野など、注力領域での動向にも注目が集まります。

まとめ

IHIによる住友重機械工業の機械式駐車場事業買収は、約8年ぶりの買収として注目を集めています。過去3年間の構造改革を経て、成長戦略へと舵を切ったIHIにとって、この買収は新たなステージの幕開けを象徴する動きといえます。

タワー型・多段式でトップシェアを持つIHI運搬機械に、地下式駐車場の技術が加わることで、顧客ニーズに合わせた総合的なソリューション提供が可能になります。EV充電対応やMaaS対応など、次世代の駐車場ニーズに応える製品開発の加速も期待されます。

機械式駐車場市場自体は成熟化が進んでいますが、都市部での駐車場需要やメンテナンス市場は今後も一定の規模を維持すると見込まれます。IHIの成長戦略がどのような成果を生むか、今後の展開が注目されます。

参考資料:

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