イラン政権が米攻撃に反撃警告、全土デモで体制崩壊危機
はじめに
2026年1月、イランは1979年のイスラム革命以来最大の政治的危機に直面しています。2025年12月28日から始まった反政府デモは、当初は経済的不満から始まったものの、急速に現体制の終焉を求める広範な運動へと発展し、31州・186都市に拡大しました。トランプ米大統領が介入の可能性を繰り返し示唆する中、イラン当局は米国が攻撃してきた場合は反撃すると警告しています。本記事では、イランの経済危機、デモの拡大、米国の対応、そして体制崩壊の可能性について詳しく解説します。
経済危機が引き金となったデモの拡大
通貨リヤルの暴落とインフレ
イランの反政府デモの発端は深刻な経済危機にあります。2025年12月29日、イラン・リヤルは対米ドルで過去最安値となる1ドル=145万リヤルを記録し、その後2026年1月6日にはさらに悪化して1ドル=150万リヤルに達しました。1年前と比較して通貨価値が約68%下落するという異常事態です。
インフレも深刻化しており、2025年12月のインフレ率は42.2%に達し、11月から1.8ポイント上昇しました。特に生活に直結する食料品価格は前年同月比で72%上昇し、保健・医療関連品の価格も50%上昇しています。一般市民の生活は逼迫し、経済的不満が臨界点に達していました。
米国制裁の影響
経済危機の背景には、米国の制裁による石油収入の減少があります。2025年6月の「12日間戦争」と2025年9月の国連制裁の再発動(スナップバック)により、イランは自己強化的な不安定化のサイクルに陥りました。米財務長官は、イラン経済が米国の制裁などの影響で物価高騰や他の課題に直面していると指摘しています。
イラン・イスラエル戦争以降、リヤルは約40%価値を失っており、制裁が経済に与える影響は計り知れません。石油輸出が制限される中、外貨収入が激減し、通貨防衛が困難になっています。
史上最大規模のデモと政府の対応
デモの規模と広がり
2025年12月28日、インフレ、食料品価格の高騰、リヤル紙幣の深刻な下落に対する経済的な不満から始まった抗議活動は、急速に現在の政治体制の終焉を求める広範な運動へと発展しました。この抗議運動は、2022年から2023年にかけて発生したマフサ・アミニの死による抗議活動以来、イランにおける最大規模の騒乱となっています。
デモは31州・186都市に拡大し、報道によれば死者540人超、逮捕者1万人超に達しています。ノルウェーに拠点を置く人権団体IHRによると、当局の治安部隊とデモ参加者の衝突で、デモが始まった昨年末から多数の犠牲者が出ています。
2025年12月28日から10日間で、抗議活動はイラン全土31州のうち27州285カ所以上に拡大し、この抗議活動は2022年の「マフサ・アミニ抗議活動」を質量ともに凌駕する規模となっています。
政府の強硬姿勢
イラン当局は強硬な抑え込みの可能性を示唆しています。最高指導者ハーメネイー師は、デモ参加者は「自らの町を破壊し、アメリカの大統領を喜ばせようとしている」と非難し、「アメリカには多くの問題があり、自分の国の管理に注力するべきだ」と米国を牽制しました。
治安部隊とデモ参加者の衝突は激化しており、政府は強硬な鎮圧姿勢を崩していません。一方で、デモの規模と広がりは過去に例を見ないものであり、政府の対応能力が問われる局面となっています。
トランプ米大統領の介入示唆とイランの反応
トランプ政権の強硬姿勢
トランプ米大統領は1月11日、イランで続く抗議活動について米国が厳重に監視しており、「軍も注視しており、極めて強力な選択肢を幾つか検討している」と述べました。米国はイラン情勢を注視し、複数の対応策を検討しているとされています。
トランプ氏は1月9日、「(デモ参加者を)撃たない方がいい。撃てばわれわれも撃つ」「もし彼ら(イラン政権)が過去にしたように人々を殺し始めたら、米国が介入する」と発言しました。さらに「それは地上軍を投入するという意味ではなく、彼らの痛いところを徹底的に攻撃するという意味だ」と補足し、軍事攻撃の可能性を強く示唆しています。
ベネズエラのマドゥロ大統領を拘束したばかりのトランプ氏は、ここ数日、イランへの軍事攻撃を繰り返し示唆しており、デモ参加者に声援を送っています。
イランの反撃警告
イランは11日、反政府抗議デモへの介入の可能性を公言する米国が攻撃をしてきた場合、反撃すると警告しました。トランプ政権が「弾圧なら攻撃」を示唆する中、イラン側は米国の介入を牽制する姿勢を明確にしています。
この警告は、米国とイランの緊張が新たな段階に入ったことを示しています。トランプ政権の強硬姿勢とイランの反撃警告は、中東情勢をさらに不安定化させる要因となっています。
体制崩壊の可能性と国際的影響
政権崩壊の初期段階か
1月2日、イラン・インターナショナルは、情報分析官やジャーナリストを含む分析家の意見を引用し、イランが政権崩壊の初期段階に入った可能性があると示唆しました。2026年初頭、イラン・イスラム共和国は単なる政治的不安定を超えた状況に直面しており、国家は完全なシステム崩壊の危機に瀨しています。
1979年のイスラム革命以来、イランは現体制の存続そのものを問う歴史的岐路に直面しています。経済崩壊、リーダーシップの空白、戦略的敗北という三重の危機が、体制の基盤を揺るがしています。
複合的な危機要因
体制崩壊の可能性を高めている要因は複数あります。第一に、2026年1月初旬の通貨崩壊による経済的混乱です。第二に、アリ・ハメネイ最高指導者の健康状態の深刻化による権力の空白です。第三に、イランはシリアでの軍事的足場を失い、レバノンのヒズボラやガザのハマスなどの「代理勢力ネットワーク」が壊滅的打撃を受け、中東で長年進めてきた「抵抗の枢軸」の戦略が事実上崩壊したことです。
これらの要因が複合的に作用し、イラン政権は史上最大の危機に直面しています。
中東情勢への影響
イランで体制転換が起きた場合、中東情勢は大きく変化します。イランは中東における主要なパワーバランスの一翼を担っており、その政権崩壊は地域全体の力学を変える可能性があります。
また、米国の軍事介入が実際に行われた場合、イランが警告する反撃により、さらなる地域紛争に発展する恐れもあります。石油価格の高騰や地域の不安定化が世界経済に与える影響も懸念されます。
今後の展望と注意点
短期的な見通し
短期的には、デモの拡大と政府の鎮圧、そして米国の介入示唆という緊張状態が続くと見られます。イラン当局は強硬な抑え込みを継続する可能性が高く、さらなる犠牲者が出ることが懸念されます。
トランプ政権は、イラン政権が強硬な鎮圧を続けた場合、実際に軍事行動を取る可能性を排除していません。ただし、地上軍投入ではなく、精密攻撃などの限定的な軍事行動が想定されています。
体制転換の不確実性
イランが体制崩壊の初期段階にあるという見方がある一方で、最終的な結果は依然として不確実です。過去にもイランでは大規模なデモが発生しましたが、政権は強硬な鎮圧により生き延びてきました。
今回のデモが過去最大規模であることは確かですが、体制転換が実現するかどうかは、軍や治安機関の動向、国際社会の対応、そして国民の持続的な抵抗意志にかかっています。
まとめ
イランは1979年のイスラム革命以来最大の政治的危機に直面しており、経済崩壊を背景とした反政府デモが全土に拡大しています。トランプ米大統領が介入の可能性を繰り返し示唆する中、イラン当局は米国の攻撃に反撃すると警告し、緊張は高まっています。
デモの規模と広がりは過去に例を見ないものであり、アナリストの中にはイランが政権崩壊の初期段階に入った可能性を指摘する声もあります。しかし、最終的な結果は依然として不確実であり、今後の展開が中東情勢と世界経済に大きな影響を与える可能性があります。イラン情勢は引き続き注視が必要な重要な局面を迎えています。
参考資料:
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