イランが中東米軍基地への報復警告、カタールでは退避勧告も
はじめに
2026年1月14日、イラン政府が中東周辺国に対して重大な警告を発しました。米国がイランを攻撃した場合、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)、トルコなどに駐留する米軍基地を攻撃するというものです。
同日、カタールにある中東最大の米空軍アルウデイド基地では一部要員に退避勧告が出されたと報じられています。イラン国内では大規模な反政府デモが続いており、米国が介入する可能性も取り沙汰される中、中東全体の緊張が急速に高まっています。
この記事では、イランの警告の背景と中東情勢の現状について詳しく解説します。
イランからの報復警告の詳細
周辺国への通告内容
ロイター通信によると、イラン政府高官は1月14日、反体制デモへの支援を口実に米国がイランを攻撃すれば、中東にある米軍拠点へ報復攻撃を行うと警告しました。
攻撃対象となり得る国々として、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコなどの名前が挙がっています。イランはこれらの国々に対し、すでに方針を伝達するとともに、米国の攻撃自制を促すよう働きかけを求めているとされています。
カタール・アルウデイド基地の状況
同日、カタールの米軍アルウデイド空軍基地に駐留する一部要員に対し、1月14日夜までに基地から離れるよう勧告が出されました。外交筋3人がロイターに明らかにしたものです。
アルウデイド基地は中東最大の米軍基地で、約1万人が駐留しています。外交筋は「態勢の変更であり、避難命令ではない」と述べていますが、態勢変更の理由については明らかにしていません。
在ドーハ米国大使館とカタール外務省は現時点でコメントを出していません。
イラン国内の反政府デモ激化
デモの発端と経緯
2025年12月28日、イランにおいて経済危機への不満から大規模な反政府デモが勃発しました。当初はインフレ、食料品価格の高騰、イラン・リヤル紙幣の深刻な下落に対する経済的な抗議でしたが、急速に政治体制の終焉を求める広範な運動へと発展しています。
デモが始まった時期、イラン・リアルの為替レートは1米ドル当たり145万リアルという史上最安値を記録し、前年同月比のインフレ率は42.2%に達していました。
デモの規模拡大
わずか10日間で、抗議の火の手はイラン全土31州のうち27州、285カ所以上へと燃え広がりました。2026年1月7日には、イラン全土で政権に反対する大規模な抗議活動が発生し、人権団体はこれを「これまでで最大規模の騒乱の日」と表現しています。
この運動は、2022年から2023年にかけてマフサ・アミニの死をきっかけに発生した抗議活動以来、イランにおける最大規模の騒乱となっています。
犠牲者と政府の対応
2026年1月9日までの13日間で、デモ隊と治安部隊あわせて少なくとも65人が死亡し、2,300人以上が拘束されたと報じられています。イラン国外に拠点を置く放送局「イラン・インターナショナル」は、死者が少なくとも1万2,000人に達し、その多くは30歳未満の若者だったと報じています。
イラン政府はインターネットアクセスに大幅な制限を課し、1月9日にはCloudflareがイラン国内のインターネットが政府によって完全に遮断された可能性があると報じました。
また、イラク・シーア派民兵組織約800人がイランでの抗議活動鎮圧を支援するために派遣されたとの報道もあります。
2025年6月の米イラン軍事衝突の教訓
核施設攻撃と報復の連鎖
現在の緊張は、2025年6月の出来事と深く関連しています。2025年6月22日、米軍はイラン国内の核関連施設3か所(フォルド、ナタンズ、イスファハン)に対して「真夜中の鉄槌作戦」を実施しました。
B-2スピリット爆撃機7機による大型貫通爆弾の投下、さらにトマホークミサイル30発が発射される大規模な攻撃でした。
イランの報復とエスカレーション回避
イランは6月24日にカタールの米軍基地へ反撃しましたが、外交ルートを通じて攻撃実施を事前に通報するなど、事態のさらなるエスカレートを避けるべく慎重に報復を行いました。
その後、イランとイスラエルはトランプ政権が提示した停戦案に合意し、6月25日の停戦発効以来、軍事衝突は収まっています。しかし、今回の反政府デモを契機に再び緊張が高まっている状況です。
トランプ政権の対応と国際情勢への影響
米国の姿勢
トランプ大統領はイランの反政府デモへの支持を表明し、介入の可能性を示唆してきました。イラン政権に対し平和的な抗議活動の参加者を殺害しないよう警告し、1月8日には「当局がデモ参加者に発砲した場合、米国は発砲を開始する」と述べています。
最高指導者ハメネイ師は、米国など外国勢力がデモを後押ししているとの見方を示しており、米イラン間の非難の応酬が続いています。
周辺国の立場
今回の警告を受けた周辺国は難しい立場に置かれています。米軍基地を抱えるサウジアラビア、UAE、カタールなどは、米国との同盟関係を維持しながらも、隣国イランとの関係悪化を避けたい思惑があります。
特にカタールは、イランとの間で天然ガス田を共有するなど経済的なつながりが深く、バランス外交を迫られる状況です。
注意点・今後の展望
エスカレーションのリスク
現状は非常に流動的です。イラン国内のデモがさらに激化し、体制崩壊の可能性が高まれば、イラン政府が外部への攻撃によって国内の不満をそらそうとする可能性も否定できません。
一方、米国が本格的に介入すれば、2025年6月を上回る規模の軍事衝突に発展するリスクがあります。
原油価格への影響
中東情勢の緊迫化は、世界のエネルギー市場にも直接的な影響を与えます。ホルムズ海峡の安全が脅かされれば、原油価格の急騰につながる可能性があり、日本を含む石油輸入国への影響は避けられません。
日本への示唆
日本政府は2025年6月の攻撃時、「事態を早期に鎮静化することが何よりも重要」との立場を示しました。今回も、中東の安定と日本のエネルギー安全保障の観点から、情勢を注視していく必要があります。
まとめ
イランが周辺国の米軍基地への報復を警告したことは、中東情勢が再び緊迫化していることを示しています。背景には、イラン国内で続く大規模な反政府デモと、米国による介入の可能性があります。
2025年6月の核施設攻撃以降、表面上は停戦が維持されてきましたが、今回のデモを契機に新たな衝突のリスクが高まっています。カタール・アルウデイド基地での退避勧告は、米軍が事態の悪化に備えていることの表れとも読み取れます。
今後の展開次第では、エネルギー価格や国際経済にも大きな影響を与える可能性があり、引き続き注視が必要です。
参考資料:
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