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by nicoxz

衆院選で消費税減税競争が激化、財政規律の議論が置き去りに

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はじめに

2026年1月23日、衆議院が解散されました。2月8日の投開票に向けて、日本の政治は一気に選挙モードへと突入しています。今回の衆院選で特徴的なのは、与野党が揃って消費税減税を公約に掲げていることです。

しかし、この「分配一色」の公約競争に対して、金融市場からは警鐘が鳴らされています。長期金利の上昇と円安の進行は、財政悪化への懸念を示すシグナルとも言えます。本記事では、各党の公約の内容と、財政規律をめぐる議論の現状、そして日本経済が直面するリスクについて解説します。

与野党の消費税減税公約

自民党の姿勢転換

自民党は従来、財政規律を重視する立場を取ってきました。しかし、今回の衆院選を前に、消費税減税論が党内に波及しています。

自民党の公約では、物価高対策として「飲食料品を2年間に限り消費税の対象としないこと」の実現に向け、検討を加速すると明記されました。鈴木俊一幹事長は日本維新の会との連立合意書に触れ、「誠実に実現していくのが基本的な立場だ」と強調しています。

高市早苗首相は「日本列島を、強く豊かに。」というスローガンの下、「責任ある積極財政」への経済・財政政策の大転換を掲げています。金融緩和と積極的な財政出動を組み合わせた「高圧経済」政策が、政権の基本路線となっています。

野党各党の公約

立憲民主党は、野田代表が過去に消費税率引き上げを決断した経験があり、財政健全性を重視する立場から減税には慎重な姿勢を示してきました。しかし、他の野党が減税を訴える中で、立憲民主党だけが引き下げに反対し続ければ、野党第1党としての立場が揺らぎかねないという危機感があります。

2026年1月22日には、立憲民主党と公明党が「中道改革連合」を結党し、新たな政治勢力として選挙に臨むことになりました。この新党の財政政策の方向性にも注目が集まっています。

れいわ新選組は「消費税廃止」を強く訴え、消費税を「天下の悪税」と批判しています。日本維新の会も消費税の引き下げを主張しており、各党が家計支援に向けた分配政策で競い合う構図となっています。

金融市場が示す警告サイン

長期金利の上昇

高市政権発足以降、日本の長期金利は急速に上昇しています。10年債利回りは2%の大台を超えて推移しており、これは過去の水準から見ても異例の高さです。

政策金利と長期金利のスプレッドも急拡大しています。通常、利上げ局面でこのスプレッドは拡大しないため、異常な事態とされています。専門家は、これを高市政権が志向する財政拡張に対して投資家が警戒感を抱いていることの証左と分析しています。

止まらない円安

高市政権発足から約10円ほど円安方向に動いており、現在は1ドル=158円台で推移しています。この円安が輸入物価の上昇を引き起こし、家計を圧迫する悪循環が生じています。

長期金利が上昇すれば円安が是正されるといった楽観的な見解もありましたが、実際には円安ドル高が続いています。財政悪化を懸念する「悪い金利上昇」は、円を買う理由にはならないと指摘されています。

市場からの厳しい評価

2026年度当初予算案は一般会計総額122兆円と過去最大規模に膨らみました。これに対し、大手新聞各紙の社説は軒並み厳しい評価を下しています。

日本経済新聞は「責任の視点欠く過去最大の予算案」、毎日新聞は「『責任ある』はどこに行った」、朝日新聞は「財政運営に危機感持て」、読売新聞は「市場の信頼を得る努力尽くせ」と、揃って批判的な論調となりました。

日本の財政状況と課題

突出する債務残高

日本はGDP比260%もの公的債務を抱える「超債務国家」です。この水準は、G7諸国のみならず、世界各国と比べても突出しています。国債の金利が上がれば、利払い費が増大し、財政を一層圧迫するリスクがあります。

民間有識者でつくる令和臨調は、2026年度以降の数値目標として、GDPに対する債務残高の比率を10年以内に25〜30ポイント程度引き下げることを提言しています。

プライマリーバランスの見通し

内閣府の試算によると、国と地方合算のプライマリーバランスは、2026年度には対GDP比で0.5%程度の黒字化が見込まれています。しかし、この試算は現行の経済政策が続くことを前提としており、消費税減税が実施されれば大幅に悪化する可能性があります。

金利上昇がもたらす財政リスク

みずほリサーチの試算によると、「金利のある世界」が実現した場合、長期金利は3.5%まで上昇する可能性があります。一方で、中期的な名目GDP成長率は2.3%での推移が想定されており、長期金利が名目GDP成長率を上回る状況が続くことになります。

この場合、基礎的財政収支の黒字がなければ債務残高対GDP比の発散リスクが高まります。試算では、債務残高対GDP比を維持するために消費税率換算で15%程度の引き上げが必要になる可能性も指摘されています。

注意点と今後の展望

「一度下げると戻せない」消費税

専門家からは「消費税は一度(率を)下げると簡単には戻せない」との警告が出ています。減税を実施すれば、その後に元に戻すことは政治的に極めて困難です。財源の確保なく減税を行えば、将来世代への負担の先送りとなりかねません。

置き去りにされる財政規律

「支援ばかり注目され、財政規律や成長戦略はろくに議論されていない」との指摘があります。選挙戦では家計支援の公約が前面に出る一方で、その財源をどう確保するのか、財政の持続可能性をどう担保するのかという議論は低調なままです。

国会冒頭解散への異論

高市首相が通常国会の冒頭で衆院を解散することに対しては、与野党から異論も出ています。2026年度予算案の成立が4月以降に遅れることへの反発や、解散の大義に欠けるといった意見が上がっています。

まとめ

2026年1月の衆院選は、与野党が揃って消費税減税を競い合う異例の展開となっています。高市政権の「責任ある積極財政」路線の下、分配政策に傾斜する公約が並んでいます。

しかし、長期金利の上昇と円安の進行は、金融市場が財政悪化への懸念を示すシグナルと言えます。GDP比260%という突出した債務残高を抱える日本にとって、財政規律の維持は避けて通れない課題です。

選挙で何が約束されるかだけでなく、その財源や長期的な財政への影響についても、有権者は注視する必要があります。目先の家計支援と、将来世代への責任の両立をどう図るのか。各党の政策を吟味する姿勢が求められています。

参考資料:

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