銀行株の時価総額が13年ぶり高水準に躍進した背景
はじめに
日本株市場で銀行株の存在感が急速に高まっています。東京証券取引所に上場する銀行株の時価総額は2026年1月30日時点で114兆円に達し、全体の1割超と約13年ぶりの大きさとなりました。自動車株や商社株を上回り、業種別で2位に浮上しています。
「金利のある世界」への回帰が銀行の収益構造を根本から変えつつあります。本記事では、銀行株躍進の背景にある金利環境の変化、各行の業績動向、そして投資判断のポイントを解説します。
金利上昇が銀行収益を押し上げるメカニズム
利ざや拡大の構造
銀行株と金利は密接に連動しています。金利が上昇すると、銀行の貸出金利は比較的速やかに引き上げられます。一方、預金金利の引き上げは遅れる傾向があります。この「貸出金利の上昇」と「預金金利の据え置き」のタイムラグが利ざや(Net Interest Margin)を拡大させ、銀行の収益を押し上げます。
TOPIX-17銀行セクターの相対株価は、2023年以降、日本10年国債利回りに概ね連動して推移してきました。2025年11月には10年国債利回りが一時1.8%台と約17年半ぶりの高水準を記録し、2026年1月には2.275%まで上昇しています。
日銀の利上げ継続が追い風
日銀はインフレが続く中で利上げを継続する見通しです。日銀自身が「日本の実質金利はまだ低い」との認識を示しており、追加利上げの余地は大きいとされています。これは銀行にとって利ざや拡大が中期的に続くことを意味します。
銀行株躍進の全体像
時価総額114兆円の意味
銀行株の時価総額合計がTOPIX全体の1割超を占めるのは約13年ぶりのことです。長らく日本株市場をリードしてきた自動車株を時価総額で上回ったことは、日本経済の構造変化を象徴しています。
「失われた30年」の間、超低金利環境のもとで銀行株は長期低迷を続けてきました。メガバンク3行の株価は2010年代にはほぼ横ばいで推移し、投資家からは「成長の見込めないセクター」として敬遠されがちでした。それが金利正常化とともに一変しています。
資金需要の増加も後押し
金利上昇による利ざや改善だけでなく、国内景気の堅調さも銀行株の追い風となっています。設備投資や不動産関連の資金需要が底堅く推移しており、貸出残高の拡大が収益成長を支えています。
投資判断のポイント
PBR1倍割れが依然8割
銀行株は高値圏にあるものの、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回る銘柄が依然として8割を占めています。これは「解散価値」を下回る株価水準であり、バリュエーション面ではまだ割安感が残っているとの見方があります。
ただし、PBR1倍割れの背景には、保有有価証券の含み損リスクや、将来的な不良債権増加への懸念も含まれています。単純にPBRだけで「割安」と判断するのは早計です。
債券含み損リスク
金利上昇は銀行の貸出収益にプラスですが、保有する債券ポートフォリオにはマイナスの影響を与えます。金利が上がれば既存の低利回り債券の価格は下落し、含み損が拡大します。特に地方銀行は国債や地方債への投資比率が高く、金利急騰時の含み損拡大リスクには注意が必要です。
地銀への注目
「億り人」と呼ばれる個人投資家の間では、メガバンクだけでなく地方銀行への投資にも注目が集まっています。地銀は地域の資金需要に密着したビジネスモデルを持ち、金利上昇の恩恵をダイレクトに受けやすい構造があります。一方で、人口減少地域の地銀は中長期的な成長性に課題を抱えています。
注意点・今後の展望
銀行株の上昇が今後も続くかどうかは、金利環境の持続性にかかっています。日銀が利上げを継続すれば銀行収益は改善を続けますが、急激な金利上昇は景気を冷やし、貸し倒れリスクの増大につながる可能性もあります。
また、TOPIX-17業種の分析では「銀行」と「建設・資材」が2026年の日本株をけん引するセクターとして有望視されていますが、金利のピークアウトが見えた時点で銀行株の優位性は低下する可能性があります。
金利上昇の恩恵を享受しつつも、債券含み損や景気変動リスクに目配りした投資判断が求められます。
まとめ
銀行株の時価総額が13年ぶりの高水準に達した背景には、「金利のある世界」への回帰という構造的な変化があります。利ざや拡大と資金需要の増加が銀行収益を押し上げ、長期低迷からの脱却を印象づけています。
投資家にとっては、PBR1倍割れの割安感と債券含み損リスクの両面を見極めることが重要です。日銀の金融政策と景気動向を注視しながら、中期的な視点での投資判断が求められるセクターといえるでしょう。
参考資料:
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