高市首相、食品消費税減税「26年度めざす」 財源めぐり党内に懸念
はじめに
高市早苗首相(自民党総裁)は2026年1月25日のフジテレビ党首討論で、食料品の消費税減税について2026年度中の実現を目指す意向を表明しました。これまでは超党派で社会保障改革を議論する「国民会議」での検討を踏まえて「できるだけ早く」との説明にとどめていましたが、より踏み込んだ発言となりました。
しかし、年間約5兆円とされる税収減への財源確保について、政府・自民党内からは「実現できない」との見方も早くも広がっています。本記事では、高市首相の発言内容と、実現に向けた課題を解説します。
フジテレビ党首討論での発言
26年度中の実現を明言
2026年1月25日のフジテレビ党首討論には、与野党7党の党首が出演しました。番組の進行役が「26年度中に食料品の消費減税を実現する」と約束できるかを問い、挙手を求めたところ、高市首相と日本維新の会の藤田文武共同代表がともに手を挙げました。
高市首相は「給付付き税額控除の制度を実行するまでの2年間のつなぎという考え方だ」と説明し、消費税減税は恒久的なものではなく、あくまで中低所得者支援策が整うまでの時限措置であることを強調しました。
自民党・維新の連立合意
食品消費税ゼロは、自民党と日本維新の会の連立政権合意に基づいています。2025年10月の連立合意では「飲食料品について2年間に限り消費税の対象としないことも視野に、法制化につき検討する」と明記されました。
与党案は2年限定である一方、立憲民主党と公明党による新党「中道改革連合」は恒久化を主張しており、実現方法や期間について各党の立場は異なっています。
財源確保の方針
年約4.8兆円の税収減
食料品の消費税率を8%から0%に引き下げた場合、年間約4兆8千億円の税収減が見込まれています。高市首相は1月24日のニコニコ生放送党首討論で「確実に特例公債(赤字国債)を発行しなくても手当てできる」と強調しました。
具体的な代替財源として、首相は以下を挙げています。
- 租税特別措置(税金の軽減策)の見直し・縮小
- 補助金の見直し・縮小
- 歳出の見直し
- 税外収入の増加
具体的な実現方法
高市首相は、具体的な実現方法として、飲食店などの税負担が増えないように、飲食料品に適用される軽減税率8%を0%に引き下げる手法を検討していることを明らかにしました。
現行の軽減税率制度を活用することで、システム変更のコストを抑えつつ、消費者への還元を実現する狙いがあります。
党内からの懸念と批判
「実現できない」との見方
政府・自民党内からは、食品消費税ゼロについて懐疑的な声が上がっています。東京新聞は「実現できない」との見方が早くも広がっていると報じています。
年5兆円規模の税収減を穴埋めする財源のめどがついていないことが最大の懸念材料です。自民党内からは「そんないいかげんなことを…」と戸惑う声も漏れています。
積極財政派と財政規律派の対立
消費税減税は、積極財政派である高市首相の持論です。昨秋の就任前は「国の品格として食料品の消費税は0%にすべきだ」と公言していましたが、財政規律派の麻生太郎副総裁から支援を得る必要があった昨年9月の総裁選以降、この主張を封印してきた経緯があります。
目立った党内論議もない中で唐突に打ち出した背景には、中道改革連合の目玉政策を取り込むことで、衆院選の争点化を回避する狙いがあるとみられています。
「レジの壁」問題の消失
高市首相は以前、消費税減税が困難な理由として「レジの壁」を挙げていました。レジシステムの改修に時間とコストがかかるため、減税の実施は容易ではないという主張でした。
しかし、今回の発言ではこの問題に言及しておらず、以前の発言との整合性について疑問が呈されています。軽減税率の枠組みを使うことで技術的なハードルを下げる考えとみられますが、詳細な説明は行われていません。
国民会議での議論
超党派での検討
高市首相は、社会保障と税の一体改革を議論する超党派の「国民会議」を衆院選後早期に立ち上げ、食品消費税ゼロの「財源やスケジュールの在り方など、実現に向けた検討を加速する」と述べています。
国民会議では、消費税減税だけでなく、給付付き税額控除の制度設計も議論される予定です。高市首相は消費税ゼロを「給付付き税額控除実施までの2年間のつなぎ」と位置づけており、両制度をセットで検討する方針です。
野党との温度差
中道改革連合の野田佳彦共同代表は、同じ党首討論で「今秋から」の導入を主張しており、実現時期について与野党間で温度差があります。
野田氏は「当面はワンショットのお金が中心かもしれないが、恒久的な財源を位置付けて0%を続けていけるようにしていきたい」と述べ、2年限定ではなく恒久化を目指す姿勢を示しています。
今後の展望
衆院選の争点として
2月8日投開票の衆院選では、食品消費税減税が主要な争点の一つとなります。しかし、日経世論調査では「物価に効かない」と回答した人が56%に達しており、国民の期待は必ずしも高くありません。
与野党がともに減税を掲げる中、差別化のポイントは財源の具体性と実現時期です。有権者には、各党の主張の実現可能性を冷静に見極める姿勢が求められます。
選挙後の課題
仮に高市首相の方針どおり2026年度中の実現を目指すとすれば、衆院選後すぐに国民会議を立ち上げ、制度設計と財源確保を並行して進める必要があります。
しかし、約5兆円規模の財源を租税特別措置の見直しや歳出削減で賄うことは容易ではありません。選挙公約として掲げた以上、実現できなければ政権への信頼低下につながる可能性があります。
まとめ
高市早苗首相が表明した「2026年度中の食品消費税ゼロ実現」は、積極財政派の首相の「悲願」である一方、約5兆円の財源確保という大きな課題を抱えています。
党内からも懐疑的な声が上がる中、選挙公約として掲げた以上、その実現可能性が問われることになります。超党派の国民会議での議論を通じて、財源の裏付けのある具体的な制度設計ができるかが、今後の焦点となるでしょう。
有権者にとっては、減税という「わかりやすい」公約の背後にある財政的な課題も含めて、各党の政策を評価することが重要です。
参考資料:
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