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by nicoxz

衆院選迫り金利上昇圧力、高市積極財政の思惑

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はじめに

2026年2月8日の衆議院選挙の投開票が迫るなか、国内債券市場では金利に上昇圧力がかかっています。背景にあるのは、高市早苗首相が掲げる「責任ある積極財政」への思惑と、首相自身の為替に関する発言が引き起こした円安再燃です。

10年国債利回りは2026年に入って以降、約27年ぶりの高水準となる2.1%台を記録し、足元では2.2%台後半まで上昇しました。選挙結果次第で市場はさらに大きく動く可能性があります。本記事では、金利上昇の背景、選挙情勢、そして今後の市場展望について解説します。

高市積極財政と債券市場への影響

「責任ある積極財政」の中身

高市首相は1月19日の衆院解散表明の記者会見で、政策の柱として「危機管理投資」と「成長投資」を掲げました。プライマリーバランス(基礎的財政収支)を28年ぶりに黒字化し、新規国債発行額を29.6兆円に抑えたことを強調しつつも、積極的な財政出動を継続する方針を打ち出しています。

しかし、市場はこの「積極財政」の持続可能性に対して懐疑的な見方を強めています。インフレが続くなかでの財政拡張は、国債増発への懸念を通じて長期金利の上昇圧力となります。三井住友DSアセットマネジメントの分析によれば、高市政権下では財政・金融政策がより拡張的になるとの見方から、長期・超長期債の売り圧力が強まっているとされています。

金利上昇の実態

2026年の取引初日となった1月5日、新発10年物国債の利回りは一時2.125%まで上昇しました。これは約27年ぶりの高水準です。その後も上昇基調は続き、1月28日時点では2.27%前後で推移しています。

金利上昇の要因は複合的です。日本銀行が2025年12月に政策金利を0.75%に引き上げたことに加え、高市政権の積極財政路線が財政悪化懸念を増幅させています。野村證券は、高市政権の円安許容度を市場が試す展開が続くと分析しています。

高市首相の「ホクホク」発言と円安再燃

問題の経緯

高市首相は1月31日、川崎市での街頭演説で円安について言及しました。「輸出産業には大チャンス。もっと助かっているのが外為特会で、運用が今ホクホク状態だ」と発言し、円安のメリットを強調したのです。

この発言は即座に市場と政界で波紋を広げました。外国為替市場では円売りが再燃し、円安がさらに進行する展開となりました。中道改革連合の安住淳共同幹事長は横浜市での街頭演説で「庶民は苦しい」と首相の姿勢を厳しく批判しています。

釈明と市場の反応

高市首相は翌2月1日、自身のXアカウントで「円高と円安のどちらが良くて、どちらが悪いということはない」と投稿し、火消しに動きました。さらに「足元の円安ではエネルギーや食品など物価高が課題であり、政府として対応すべきなのは当然のことだ」と強調しています。

しかし、朝日新聞は「首相がメリットのみを言及すれば、円安を容認したとも受け取られかねず、金融市場に影響を与える可能性がある」と指摘しています。首相の発言が為替市場での円売りを促し、それが輸入物価の上昇期待を通じて債券市場にも波及するという連鎖が生まれています。

衆院選の情勢と市場シナリオ

自民大勝か、それとも接戦か

各メディアの序盤情勢調査では、自民党が単独過半数の233議席をうかがう勢いだと報じられています。読売新聞や日経新聞などの大手メディアは自民優勢を伝えており、自民党の独自調査では260議席程度を見込めるとの結果も出ています。

一方で、週刊文春の選挙予測は異なる見方を示しています。元自民党事務局長の久米晃氏は「現時点で自民の大勝はない」と断言し、「創価学会票の7割が中道改革に乗る」可能性や「25の小選挙区で自民候補が逆転される」リスクを指摘しています。

紀尾井町戦略研究所の調査では、比例投票先は自民21%、中道8%、国民7%、維新4%、参政4%となっており、自民がリードしているものの圧倒的とまでは言えない状況です。

選挙結果別の市場シナリオ

SBI証券の分析によれば、選挙結果に応じて3つのシナリオが想定されます。

第一に、自民・維新の与党が大勝した場合です。積極財政・成長戦略が加速するとの見方から、株高・円安・債券安(金利上昇)の展開が予想されます。長期金利はさらに上昇する可能性があります。

第二に、与党が惨敗した場合です。いわゆる「高市トレード」の巻き戻しが起き、リスクオフの展開となります。日経平均株価の急落、円高・債券高(金利低下)が見込まれます。

第三に、各党が減税と福祉支出拡大を公約に盛り込んでいることから、選挙結果にかかわらず中期的には財政支出増大懸念により円安・債券安(金利上昇)となる可能性も指摘されています。

注意点・展望

日銀の金融政策との関連

日銀は2025年12月に政策金利を0.75%に引き上げた後、2026年1月の会合では金利を据え置きつつ、インフレ予測を上方修正しました。市場では日銀の追加利上げペースが円安を背景に速まるとの警戒感もあり、これが金利上昇の一因となっています。

選挙後に与党が安定多数を確保した場合、高市首相の積極財政路線が本格化し、日銀との政策協調のあり方が改めて問われることになります。

個人への影響

長期金利の上昇は、住宅ローン金利や企業の資金調達コストに直結します。変動型住宅ローンの金利は日銀の短期金利に連動しますが、固定型ローンは長期金利の影響を受けるため、すでに上昇傾向にあります。一方で、個人向け国債の利回りも上昇しており、預金・運用面ではプラスの側面もあります。

楽観論と慎重論

野村総合研究所の木内登英氏は、国債の大部分が日銀を筆頭に安定保有されていることから、利回りが急騰して市場の波乱要因となるリスクは現時点では限定的との見方を示しています。ただし、財政悪化懸念を払拭しないかぎり、長期金利の上昇には歯止めがかからないとも指摘しています。

まとめ

2月8日の衆院選を前に、日本の債券市場は「高市積極財政」への思惑と首相の為替発言に揺れています。10年国債利回りは2.2%台後半まで上昇し、選挙結果次第ではさらなる変動が予想されます。

与党大勝なら金利上昇が加速し、惨敗なら巻き戻しとなる可能性が高いですが、各党の財政拡張的な公約を踏まえると、中期的な金利上昇圧力は選挙結果にかかわらず続く可能性があります。投開票日に向けて、市場の動向を注視する必要があります。

参考資料:

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