日経平均が前場900円高から一転667円安に急落した背景
はじめに
2026年2月2日の東京株式市場は、投資家にとって目まぐるしい一日となりました。日経平均株価は前場に一時900円を超える上昇を見せたものの、後場に入ると急反落し、終値は前週末比667円安の5万2655円で取引を終えています。
日中の値幅は1591円に達し、約3カ月ぶりの大きさを記録しました。この激しい値動きの背景には、高市早苗首相の円安に関する発言、2月8日に迫る衆院選、そして海外市場のリスク要因が複雑に絡み合っています。本記事では、この乱高下の要因を整理し、今後の市場見通しについて解説します。
前場:高市首相の「ホクホク」発言が円安・株高を誘発
週末の演説が市場を動かした
きっかけとなったのは、高市早苗首相が1月31日に川崎市で行った衆院選の応援演説です。首相は現在の円安について「輸出産業には大チャンス」とし、「外為特会の運用が今ホクホク状態だ」と発言しました。この発言は市場関係者の間で「円安容認」と受け止められ、週明けの為替市場で円売りが加速しました。
外国為替市場では円相場が対ドルで下落し、輸出関連銘柄に追い風が吹きました。トヨタ自動車が3.3%高、ホンダが1.8%高、日産自動車が2.0%高と自動車株が軒並み上昇したほか、機械株など幅広い銘柄に買いが入りました。
海外投機筋の先物買いが上げ幅を拡大
日経平均の上げ幅が900円を超えた背景には、海外の投機筋による先物買いがあります。高市首相の円安容認姿勢に加え、2月8日の衆院選で自民党が圧勝するとの観測が海外投資家のリスク選好を高めました。共同通信の世論調査では比例代表の投票先で自民党が36.1%と高い支持率を示しており、「高市トレード」とも呼ばれる円安・株高の流れが一段と強まりました。
後場:一転して急落、667円安で引ける
米ナスダック先物の下落が引き金に
午後に入ると相場は一変しました。日本時間の午後、米ナスダック100指数の先物(Eミニ・ナスダック100)が1%を超える下落を見せたことが、東京市場の投資家心理を一気に冷やしました。今晩の米国市場でハイテク株が下落するのではないかとの警戒感が広がり、リスク回避の売りが強まりました。
AI関連投資の持続性に対する懸念も浮上しており、前週末の米国市場ではすでにハイテク株に売りが出ていました。こうした流れが東京市場にも波及した形です。
アジア市場全体の軟調も重荷に
韓国総合株価指数(KOSPI)が5%安と急落するなど、アジア各国の株式市場も軟調な展開でした。地域全体でリスク回避姿勢が強まったことが、東京市場の下げを加速させました。東証プライムの売買代金は概算で8兆588億円と約2カ月半ぶりの大商いとなり、売り買いが激しく交錯したことを物語っています。
「戻り待ちの売り」が上値を抑える
日経平均は前週まで続落基調にありました。前場の急騰局面では、これまで含み損を抱えていた投資家が「戻り待ち」の売りを出したことも、上値の重さにつながりました。買い一巡後は利益確定売りも加わり、後場にかけて下げ幅が拡大する展開となっています。
高市首相の釈明と政治的背景
「円安容認は誤解」と釈明
市場の反応を受けて、高市首相は2月1日にX(旧ツイッター)で「誤解がある。円安メリットを強調したわけではない」と釈明しました。「足元の円安ではエネルギーや食品など物価高が課題であり、政府として対応すべきなのは当然のことだ」と強調しています。
しかし、みずほ銀行のマーケット分析では、高市首相の演説全体を通じて「円安になると国内投資が戻ってくる」という認識が一貫している点を問題視しています。「為替だけで企業の行動変容は起きない」という指摘もあり、市場は首相の真意を慎重に見極めようとしています。
野党からの厳しい批判
野党からは厳しい声が上がっています。中道改革連合の野田佳彦共同代表は「円安でスーパーの値札を見ながらホクホクしている人はいるか」と批判しました。共産党の田村智子委員長も「物価高で苦しい時に異常円安を自ら引き起こし、その反省もない」と指摘しています。2月8日の衆院選を前に、円安と物価高は重要な争点となっています。
注意点・今後の展望
衆院選後の市場シナリオ
2月8日の衆院選が当面の最大イベントです。世論調査では自民党の優勢が伝えられており、与党が安定多数を確保した場合、市場には安心感が広がる可能性があります。一方で、「選挙結果の織り込み済み」として材料出尽くしの売りが出るシナリオにも注意が必要です。
米国市場の動向に注目
今回の急落の引き金となった米ナスダック先物の下落に見られるように、海外市場の動向が東京市場に大きな影響を与えています。米国のFRB新議長人事やAI関連投資の動向など、外部要因に振り回される展開が続く可能性があります。
為替相場の行方
高市首相の発言が為替市場に影響を与えたことは事実ですが、中長期的な円相場はファンダメンタルズに左右されます。日米金利差の縮小が見込まれる中で、円安がどこまで持続するかは不透明です。為替の急変動は株式市場のボラティリティを高めるため、引き続き注意が必要です。
まとめ
2月2日の日経平均は、前場900円高から後場667円安へと劇的な反転を見せました。高市首相の「ホクホク」発言による円安・株高の流れが、米国先物の下落やアジア市場の軟調をきっかけに崩れた格好です。
投資家にとっては、2月8日の衆院選、米国市場の動向、為替相場の3つの要因を注視することが重要です。ボラティリティが高い相場環境では、短期的な値動きに振り回されず、中長期の視点を持つことが求められます。
参考資料:
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