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by nicoxz

日本の財政健全化に暗雲、黒字目標達成できず

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はじめに

日本の財政健全化への道のりが一段と険しくなっています。内閣府は2026年1月22日、2026年度の国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)が8000億円の赤字になるとの試算をまとめました。

政府が長年目指してきた2025~26年度の黒字化目標は達成できない見通しです。高市早苗首相が重視する債務残高GDP比は低下が続く見込みを示していますが、潜在成長率の大幅な上昇などが前提となっており、不透明な部分が多い状況です。

本記事では、日本の財政健全化をめぐる現状と、金利上昇が財政に与える影響、今後の見通しを解説します。

プライマリーバランスとは

基礎的財政収支の意味

基礎的財政収支(プライマリーバランス)は、社会保障や公共事業といった政策経費を、借金に頼らず税収などでまかなえているかを示す指標です。黒字であれば、その年の政策経費を借金なしで賄えていることを意味します。

政府はプライマリーバランスの黒字化を長らく財政健全化の目標と位置づけてきました。当初は2010年代初頭の黒字化を目指していましたが、先延ばしが繰り返され、現在は2025年度の黒字化が目標とされていました。

2026年度当初予算での黒字化

2026年度当初予算案では、国債費を除く歳出を税収・税外収入でまかなえるかを示す基礎的財政収支が1兆3429億円の黒字に転じています。前年度当初は7816億円の赤字でした。これは1998年度以来、28年ぶりの黒字化予算です。

しかし、当初予算だけでなく補正予算も含めた「国・地方」のプライマリーバランスで見ると、状況は異なります。

なぜ黒字化目標を達成できないのか

巨額補正予算の影響

2025年度のプライマリーバランスは4兆5000億円の赤字となりました。昨年12月に成立した補正予算に伴う経済対策費が約5兆8000億円の悪化要因になったと政府は説明しています。

さらに、所得税の非課税枠を103万円から123万円へ引き上げる「103万円の壁対策」が約7000億円の悪化要因になりました。こうした政策的支出が、当初予算で見込んでいた黒字化を帳消しにしています。

民間試算ではさらに厳しい見通し

専門家の間では、政府試算よりも厳しい見方が広がっています。高校無償化や子育て支援の歳出、防衛費では具体的に決まっていない財源が仮定されており、今後のガソリン税の旧暫定税率の廃止なども織り込まれていません。

民間の試算では、こうした要因や利上げによる日本銀行の納付金減少などを織り込むと、2026年度もPBは1.2兆円の赤字になるとの見通しも示されています。

金利上昇が財政を圧迫

長期金利27年ぶりの高水準

長期金利は急騰し、一時2.380%と27年ぶりの高水準に達しました。高市早苗首相が誕生して以降、高市政権の財政拡張志向の強さが意識され、金利上昇に弾みがついています。

与野党各党が衆院選の公約に消費税減税を盛り込む検討をしていると伝わり、財政悪化懸念がさらに高まっています。

国債費の急増

2026年度予算案では、国の借金である国債の元本返済と利払い費を合わせた「国債費」が31兆2758億円と過去最大になりました。長期金利の急上昇を受け、利払い費は13兆371億円とかつてない水準に膨らんでいます。

政府は2026年度予算案の国債利払い費の計算に使う想定金利を、2025年度の2.0%から3.0%程度に引き上げました。日銀の利上げやインフレを背景に長期金利が上昇傾向にあることを反映したものです。

金利1%上昇で3.7兆円の負担増

財務省によれば、金利が1%上昇すると、3年後の国債費(利払い費)は3.7兆円増加します。これは名目GDP(2021年度)の約0.7%に相当する規模です。

国債発行残高は年々積み上がり、2026年度末時点で1145兆円に達する見通しです。「金利のある世界」に回帰した今、利払い費負担がさらに財政を圧迫することになります。

高市政権の経済財政運営

「責任ある積極財政」の方針

高市内閣の経済政策の中心は「責任ある積極財政」です。これは行き過ぎた緊縮財政から転換し、積極的な財政支出によって経済成長を促す方針を指します。

従来はプライマリーバランスの黒字化が重要な財政目標の一つとされてきましたが、高市首相はこの考え方を見直し、政府債務残高の対GDP比をより重視しながら、必要に応じて財政支出を拡大する姿勢を示しています。

債務残高GDP比への重点シフト

高市首相は「政府債務残高対GDP比を引き下げ、財政の持続可能性を実現しマーケットからの信認を確保していく」と述べています。

政府の試算では、経済成長が実現すれば(成長移行ケース)、2026年度のプライマリーバランスは2兆2000億円の黒字になるとされています。しかし、これは潜在成長率の大幅な上昇が前提であり、実現可能性に疑問符がつきます。

総合経済対策の規模

2025年11月、高市内閣は「強い経済」を実現する総合経済対策を閣議決定しました。2025年度補正予算案は17.7兆円、減税分を含めると経済対策の規模は総額21.3兆円に達します。

電気ガス代の支援や子育て世帯への給付(18歳以下の子ども1人あたり2万円)など、国民生活を支援する施策が盛り込まれていますが、その財源の多くは国債発行に依存しています。

市場の懸念と財政リスク

国債市場の苦戦

2026年度の市場への国債ネット供給額は前年度比約8%増え、約65兆円に膨らむ見込みです。これは過去10年余りで最大の規模です。日銀は国債保有額を減らしており、民間投資家が消化しなければならない分が増加しています。

国債発行計画では、市場動向を踏まえ超長期債の発行額を減らしています。しかし、金利上昇局面で国債の短期化が進めば、将来の利払い負担が増え、財政悪化への懸念がさらに強まる可能性があります。

積極財政の持続可能性への疑問

専門家の分析によると、高市政権が掲げる積極財政によって潜在成長率を引き上げられるかどうかは不透明です。内閣府や日本銀行が推計した潜在成長率は直近で+0.5~0.7%程度と、2000年代の平均値とおおむね同水準にとどまっています。

また、成長率の範囲内で債務の伸びを抑制することで政府債務残高対GDP比を引き下げるという方針も、金利上昇局面では実現が難しくなる可能性があります。

注意点・展望

形骸化する財政健全化目標

財政健全化目標の形骸化が進んでいるとの指摘があります。高市首相は基礎的財政収支について、単年度黒字化目標を「数年単位でバランスを確認する」方向に見直す方針を示していますが、財政健全化の道筋が見えにくくなることへの懸念もあります。

市場との対話の重要性

財政健全化の道筋を見失うことになれば、市場の不安がさらなる金利急騰を招きかねません。海外では、2022年の英国「トラスショック」のように、市場との対話を軽視した財政拡張が急激な金利上昇を招いた例もあります。

政府は市場の信認を維持しながら、経済成長と財政健全化の両立を図る難しいかじ取りを迫られています。

まとめ

内閣府の試算では、2026年度の国と地方の基礎的財政収支は8000億円の赤字となり、政府の黒字化目標は達成できない見通しです。巨額の補正予算と金利上昇が財政を圧迫しています。

高市政権は「責任ある積極財政」を掲げ、債務残高GDP比の低下を重視していますが、その前提となる経済成長の実現には不透明な部分が多い状況です。金利のある世界に回帰した今、日本の財政運営は新たな局面を迎えています。

参考資料:

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