国内金先物でサーキットブレーカー発動、急変動の背景
はじめに
2026年2月4日、大阪取引所で金先物がサーキットブレーカーを発動し、取引が一時中断されました。これは2月2日から3日連続での発動となり、金市場の激しい価格変動を象徴する出来事となっています。
ニューヨーク市場での金先物の急騰・急落、そして円安・ドル高の進行が複合的に作用し、国内金先物市場は過去に例を見ない変動幅を記録しています。本記事では、サーキットブレーカー発動の背景にある市場メカニズムと、金価格を動かす要因について詳しく解説します。
サーキットブレーカー制度とは
取引一時停止の仕組み
サーキットブレーカーとは、金融市場で価格が急激に変動した際に、取引所が売買を一時的に停止する制度です。電気回路の過負荷を防ぐブレーカー(遮断器)になぞらえて名付けられました。
日本では1994年に導入され、先物やオプション取引において一定の価格変動幅を超えた場合に適用されます。大阪取引所の金先物では、前営業日比で上下10%の制限値幅に達すると発動し、10分間の取引中断が行われます。
制度の目的
サーキットブレーカーの主な目的は、パニック的な売買を抑制し、市場参加者に冷静な判断を促すことにあります。価格の急変動時には、投資家が連鎖的に売買注文を出すことで価格がさらに加速し、市場の価格形成機能が損なわれる恐れがあります。
取引を一時停止することで、投資家に情報を整理する時間を与え、合理的な判断に基づいた取引を促す効果が期待されています。米国ではブラックマンデー(1987年)を教訓に導入され、現在では世界各国の主要取引所で採用されています。
2月の金先物市場の動向
連日のサーキットブレーカー発動
2026年2月の国内金先物市場では、異例の連続発動が起きました。
2月2日には価格急落によりサーキットブレーカーが発動しました。田中貴金属の店頭小売価格は1グラムあたり2万6057円となり、前週末から3,500円以上の値下がりを記録。大阪取引所でも午前に大きく下落し、1グラムあたり2万2601円まで落ち込みました。
翌2月3日は一転して急騰によるサーキットブレーカー発動となりました。ニューヨーク市場で金価格に下げ止まりの兆しが見えたことを受け、国内でも買い戻しが加速。12月限の先物は8.1%(1,822円)上昇し、2万4494円をつけました。
そして2月4日も午後12時39分に制限値幅到達によりサーキットブレーカーが発動。12時50分に取引を再開しました。3日のニューヨーク市場での金先物上昇を受けた買いに加え、円安・ドル高の進行により円建ての国内金に割安感が生じ、買いが集中しました。
ニューヨーク市場の影響
国内金先物の急変動の背景には、ニューヨーク市場での歴史的な価格変動があります。
2026年1月下旬、ニューヨーク金先物は1トロイオンスあたり5,600ドル超という史上最高値を記録しました。年初からの上昇率は13〜20%に達し、異例の急騰となりました。
しかし、1月30日から31日にかけて約9%の急落が発生。トランプ大統領がFRB(連邦準備制度理事会)次期議長にケビン・ウォーシュ氏を指名したことや、短期筋による利益確定売りが重なったことが原因とされています。
その後、2月3日には反発し、COMEX(ニューヨーク商品取引所)の4月物は前日比282.4ドル(6.1%)高の1トロイオンス4,935.0ドルで取引を終えました。
金価格を動かす要因
地政学リスクと安全資産需要
金が「安全資産」と呼ばれる理由は、経済不安や政治的混乱時に価値を維持しやすい特性にあります。
2026年の金価格上昇を支える要因として、トランプ政権の関税政策による市場の不安定化が挙げられます。保護主義的な貿易政策がサプライチェーン不安やスタグフレーション懸念を呼び、株式やドルから金への資金シフトを促しています。
また、グリーンランド問題に象徴される地政学的緊張も、ドル・ユーロ以外の資産への需要を底支えしています。
FRBの金融政策
金は利息を生まない資産であるため、金利動向の影響を大きく受けます。
今回の急落のきっかけとなったFRB次期議長人事では、金融緩和に消極的とされる人物の指名により、利下げ期待が後退。これが金売りを誘発しました。
一方で、1月のFOMC(連邦公開市場委員会)では政策金利が3.50〜3.75%で据え置かれましたが、投票結果は10対2と意見が割れ、2名の理事が利下げを主張しました。FRB内部の意見対立は、金融政策の不透明感を高め、金価格の変動要因となっています。
中央銀行の金準備増加
長期的な金価格の支えとなっているのが、各国中央銀行による金の買い増しです。中国やロシアをはじめとする新興国は、外貨準備の多様化を目的に金の購入を継続しています。
この構造的な需要は、短期的な価格変動とは別に、金価格の長期上昇トレンドを形成する要因となっています。
投資家が注意すべきポイント
高いボラティリティへの備え
今回のサーキットブレーカー連続発動が示すように、金は「安全資産」と呼ばれながらも、価格変動リスクは決して小さくありません。
1日で9%下落した後、翌日に8%上昇するという激しい値動きは、短期売買で大きな損失を被るリスクがあることを示しています。特に初心者投資家は、下落局面で一斉に売却へ動く傾向があり、それが下げ幅を拡大させる要因となることがあります。
分散投資の重要性
専門家は、ポートフォリオにおける金の比率を10〜20%程度に抑えることを推奨しています。金は株式や債券と異なる値動きをする傾向があり、分散効果が期待できる一方、20%を超えると他の投資機会を逃すリスクが高まります。
定期積立による時間分散も有効な戦略です。毎月一定額を積み立てることで、価格変動のリスクを平準化し、高値掴みを避けることができます。
まとめ
大阪取引所での金先物サーキットブレーカー連続発動は、世界的な金市場の激しい変動を映し出しています。ニューヨーク市場での史上最高値更新とその後の急落、FRB人事を巡る思惑、そして円安進行という複合的な要因が国内市場に波及しました。
金は長期的には地政学リスクや中央銀行の買い増しに支えられ、上昇基調を維持すると見る向きが多いものの、短期的には大きな価格変動が続く可能性があります。投資を検討する際は、分散投資と時間分散を意識し、自身のリスク許容度に見合った運用を心がけることが重要です。
参考資料:
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