日韓首脳が奈良で会談、米中板挟みの中で試される結束力

by nicoxz

はじめに

2026年1月13日、高市早苗首相と韓国の李在明大統領が奈良県で首脳会談を開催します。この会談は単なる定例的なシャトル外交にとどまらず、日韓両国が直面する共通の課題——米国と中国という二大国に翻弄される構図——への対処を協議する重要な機会となります。中国による対日輸出規制の強化、トランプ政権の予測困難な外交政策、北朝鮮の核・ミサイル開発という厳しい安全保障環境の中で、隣国としての「結束力」をどう示すかが焦点です。本記事では、奈良開催の歴史的意義から会談の論点、今後の日韓関係の展望まで詳しく解説します。

なぜ奈良なのか――古代交流が象徴する意味

高市首相の地元で行われる外交

今回の首脳会談が高市首相の地元である奈良県で開催されることには、複数の意味が込められています。政治的には、地元開催によって首相の政治基盤を国内外に印象づける狙いがあります。しかし、それ以上に重要なのは、奈良が持つ歴史的・文化的シンボルとしての価値です。

両首脳は1月14日に世界遺産の法隆寺を共同で訪問する予定です。法隆寺は飛鳥時代(7世紀)に創建され、百済からの渡来人が建設や文化伝播に深く関わったとされています。奈良時代の東大寺も訪問案に含まれており、古代から続く日韓の文化的つながりを象徴する場所が選ばれています。

いにしえの糸が結ぶ現代の外交

奈良県の山下真知事は「日韓首脳会談の開催にふさわしい場所」と歓迎のコメントを発表しました。奈良は710年から794年まで日本の首都(平城京)であり、この時代に韓半島(朝鮮半島)から多くの渡来人が技術や文化を伝えました。仏教美術、建築技術、法制度など、現代日本文化の基層には韓半島の影響が色濃く残っています。

歴史認識や領土問題で対立することもある日韓関係において、こうした古代交流の記憶は両国の共通基盤となり得ます。対立より協調を、分断より結束を——奈良という舞台選択には、そうしたメッセージが込められています。

中国の対日輸出規制が会談の論点に

デュアルユース品目規制の衝撃

李在明大統領は日本訪問の直前に中国を訪れ、習近平国家主席と会談しました。その滞在中の1月6日、中国商務部は突如として対日輸出規制の強化を発表しました。軍民両用(デュアルユース)品目が対象で、即日施行という異例の措置です。

中国側は具体的な品目リストを明示していませんが、高市首相の「台湾有事への備え」に関する発言への報復とみられています。レアアースが規制対象に含まれるとの観測もあり、実際にそうなれば日本経済への打撃は甚大です。

レアアース依存の深刻さ

日本のレアアース輸入における中国依存度は、2010年の尖閣諸島問題時の90%から約60%まで低下しましたが、依然として高水準です。特に、ジスプロシウムやテルビウムといった電気自動車(EV)モーター用ネオジム磁石の補助材料は、ほぼ100%を中国に依存しています。

もし輸出規制が3カ月続けば生産損失は約6,600億円、名目・実質GDPを0.11%押し下げると試算されています。1年間継続すれば損失は約2.6兆円、GDP押し下げ効果は0.43%に達します。自動車産業を中心に、耐熱磁石を必要とする電池やモーターへの影響が懸念されます。

日韓協力の可能性

この中国の動きは、日韓首脳会談の重要性を一層高めています。中国がデュアルユース品目規制を対日カードとして使う以上、日本は調達先の多様化を急ぐ必要があります。韓国もまた半導体や電池産業で中国との経済関係が深く、経済安全保障の観点から共通の利害を持ちます。

両国が協力してサプライチェーンの強靭化を図り、レアアースや重要鉱物の代替調達ルートを開拓することは、実務的な協議テーマとなる可能性があります。

トランプ政権下の日米韓三角関係

予測困難な同盟国への要求

2025年1月に発足したトランプ第二次政権は、日韓両国に防衛費増額や米軍駐留経費の負担増を要求しています。かつて安定していた同盟関係が揺らぎ、関税措置を振りかざす「取引型外交」が復活しました。

一方で、トランプ氏の政策アドバイザーはソウルと東京の当局者に対し、中国と北朝鮮に対抗する日米韓三国間関係を深めるバイデン時代の取り組みを支持すると確約したとされます。トランプ政権にとって、日米韓協力は北朝鮮への「最大のレバレッジ」であり、利益になることを理解していると考えられます。

キャンプ・デービッド体制の維持

2023年8月、バイデン前大統領の仲介で日米韓首脳がキャンプ・デービッドで会談し、三国間協力の制度化を進めることで合意しました。この枠組みを維持・具体化できるかが、トランプ政権下の課題です。

ただし、トランプ政権にとって北朝鮮はウクライナ、中東、中国と比べて最優先事項ではないとの指摘もあります。米国のコミットメントが後退すれば、日韓両国は自らの連携強化でこれを補う必要に迫られます。

韓国の国内政治と外交への影響

李在明大統領の外交的成果追求

李在明大統領は国内で厳しい政治状況に直面しており、今回の訪日は外交的成果をアピールする機会でもあります。1泊2日の「シャトル外交」として、13日午後に首脳会談と共同記者会見、夕食会に参加し、14日は法隆寺訪問と在日韓国人との懇談会を予定しています。

韓国内では社会分断が深刻化しており、外交政策が国内政治の道具として利用される傾向があります。日韓関係や北東アジアの安全保障環境への影響が懸念される中、李大統領がどのような外交姿勢を示すかが注目されます。

歴史問題と未来志向のバランス

慰安婦問題や徴用工問題といった歴史認識を巡る対立は、依然として日韓関係の火種です。トランプ氏は過去に「韓国が慰安婦問題に執着する」と批判しつつも、日韓関係改善に期待を表明したことがあります。

今回の首脳会談でこうした問題がどこまで議論されるかは不透明ですが、経済安全保障や北朝鮮対応といった喫緊の課題に焦点を当てる「未来志向」の姿勢が期待されます。

同志国連携の試金石

中国の分断戦略への対抗

中国は、米国を軸にした日米韓の同盟関係を分断する好機と捉えています。李大統領の訪中と訪日を前後させることで、日韓の足並みを乱そうとする意図も透けて見えます。

高市首相が進める「同志国連携」——価値観を共有する民主主義国同士の協力強化——は、こうした中国の戦略に対抗するものです。1月15日にはイタリアのメローニ首相も来日予定であり、欧州との連携も含めた多層的なネットワーク構築が「高市外交」の特徴となっています。

経済連携と安全保障の一体化

日韓両国は経済的に深く結びついており、半導体、電池、自動車などの産業で相互依存関係にあります。この経済的つながりを安全保障面での協力に発展させることが、今後の課題です。

具体的には、防衛装備品の共同開発、サイバーセキュリティ協力、宇宙開発分野での連携などが考えられます。北朝鮮の核・ミサイル脅威に対する情報共有も、継続的な協力テーマです。

今後の展望と課題

今回の奈良会談は、日韓関係の「結束力」を国際社会に示す重要な機会です。しかし、首脳同士が良好な関係を築いても、両国の国内政治や世論の対立が足かせになる可能性があります。

中長期的には、日韓関係を超えた地域協力の枠組み——日中韓三国協力や東アジア首脳会議(EAS)など——をどう活用するかも重要です。中国との対立を深めながらも、対話のチャンネルを維持するバランス外交が求められます。

また、トランプ政権の外交政策がどう展開するかによって、日韓の連携強化の必要性はさらに高まる可能性があります。米国の「アメリカ・ファースト」が強まれば、同盟国同士の自律的な協力が不可欠になるからです。

まとめ

2026年1月13日の日韓首脳会談は、古都奈良という歴史的舞台で開催されることで、両国の文化的つながりを再確認する機会となります。しかし同時に、中国の経済的威圧やトランプ政権の不確実性という現実の課題に直面する会談でもあります。

高市首相と李在明大統領は、法隆寺を訪れながら古代交流の記憶に思いを馳せるでしょう。その「いにしえの糸」が、現代の複雑な地政学的環境の中で、隣国同士の結束を強める力になるかどうか——今回の会談は、日韓関係の未来を占う試金石となります。

国際社会が注視する中、両首脳がどのような共同声明や具体的成果を示すか。経済安全保障、防衛協力、文化交流の各分野で実質的な前進があれば、米中対立の狭間で揺れる東アジアに、安定の一石を投じることになるでしょう。

参考資料:

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