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by nicoxz

長期金利27年ぶり高水準、財政懸念で2.2%台突入の背景

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はじめに

2026年1月、日本の長期金利が歴史的な節目を迎えました。10年物国債利回りが一時2.2%台に上昇し、1999年2月以来、実に27年ぶりの高水準を記録したのです。

この金利上昇の背景には、高市早苗政権が進める積極的な財政政策への懸念や、1月23日に予定される衆院解散の思惑があります。長期金利の上昇は、住宅ローンの返済額増加や企業の資金調達コスト上昇など、私たちの生活に直接影響を及ぼす重要な指標です。

本記事では、なぜ長期金利がここまで上昇したのか、その背景と今後の見通し、そして私たちの生活への影響について詳しく解説します。

長期金利上昇の背景と要因

財政拡張への懸念が金利を押し上げ

長期金利上昇の最大の要因は、高市政権の財政政策に対する市場の懸念です。2026年度当初予算案は過去最大となる122兆3092億円に達し、前年度を7兆円以上上回りました。さらに、2025年度補正予算では18兆円超の規模が積み上げられました。

通常、政策金利が上昇する局面では、政策金利と長期金利のスプレッド(差)は大きく拡大しません。しかし現在、このスプレッドは急拡大しており、野村総合研究所は「異常な事態」と指摘しています。高市政権発足前の1.6%台から約0.6%も上昇しており、財政悪化懸念が主導していることは明らかです。

衆院解散と選挙後の政策への思惑

高市首相は1月23日召集の通常国会冒頭で衆院を解散する方針を表明しました。2月8日投開票が見込まれる衆院選では、与野党各党が消費税減税を公約に盛り込む検討を進めているとの報道もあり、さらなる財政拡張を警戒した債券売りが広がっています。

市場関係者の間では、衆院選で与党が議席を伸ばせば、高市政権の「責任ある積極財政」と「危機管理投資」がさらに加速するとの観測が根強くあります。

日銀の利上げ観測も金利上昇を後押し

日本銀行は2025年12月の金融政策決定会合で0.25%の利上げを決定し、政策金利は0.75%程度と30年ぶりの水準に達しました。植田和男総裁は「経済と物価の動向が予測と一致すれば利上げの準備がある」と再確認しています。

ロイター通信によると、日銀内部では「市場が想定する半年に1度というペースより早いタイミングでの利上げが必要になる可能性もある」との声が出ているとのことです。今後も年2回のペースで利上げが続き、政策金利は2026年度に1.25%、2027年度には1.5%程度まで上昇するとの予測が出ています。

超長期債にも波及する金利上昇圧力

20年債・30年債も高水準に

財政リスクを反映しやすい超長期債にも金利上昇圧力がかかっています。20年債利回りは3.25%、30年債利回りは3.585%まで上昇しました。超長期債は償還までの期間が長いため、財政の持続可能性に対する市場の評価がより直接的に反映されます。

国債格付けへの影響

日本国債の格付けは、先進国の中では最上位(AAA)ではなく、S&PがA+、ムーディーズがA1、フィッチがAとなっています。最大の理由は、債務残高が対GDP比約250%と非常に大きく、中長期的な財政の持続可能性に懸念があるためです。

ムーディーズは「恒久的な減税で赤字が拡大すれば格下げ方向になる」と注意を促しており、財政健全化の行方が格付けにも影響を与える可能性があります。

住宅ローン・企業融資への影響

変動金利型住宅ローンの上昇

長期金利の上昇は、私たちの生活に直接影響を及ぼします。すでに複数の金融機関が短期プライムレート(短プラ)の引き上げを発表しており、多くの金融機関では2026年4月に基準金利の見直しが行われます。実際の毎月返済額は7月分から増えることになります。

今回の利上げを受けて変動金利が0.25%上がると、心理的節目である「1%」を超えるケースが増える見込みです。仮に5,000万円を借りた場合、金利0.75%だと毎月の返済額は約13万5千円ですが、金利1%になると約14万1千円と、月約6千円の増加となります。

固定金利型はさらに大幅上昇

2026年1月適用分の住宅ローン金利では、3メガバンクが10年固定金利をそろって引き上げました。三菱UFJ銀行の10年固定最優遇は前月比0.42ポイント上昇して2.68%、三井住友銀行は0.3ポイント上昇して2.65%、みずほ銀行は0.25ポイント上昇して2.55%となっています。

長期金利に連動する固定金利は、今後も上昇傾向が続く可能性が高いとみられています。

企業の資金調達コストも上昇

短期プライムレートの引き上げは、企業向け貸出金利にも影響します。今後1〜2カ月の間に短プラが上昇する見通しで、中小企業を含めた企業の資金調達コストが増加することになります。

注意点・今後の展望

プライマリーバランスの黒字化は達成されるか

2026年度当初予算案では、基礎的財政収支(プライマリーバランス)が1兆3429億円の黒字に転じる見通しです。当初予算ベースでの黒字化は1998年度以来28年ぶりとなります。

しかし、大和総研の分析によると、米トランプ政権の高関税政策の影響で景気が悪化し、税収が1.6〜3.3兆円減少する懸念もあります。予算修正やトランプ関税の影響を考慮すると、プライマリーバランスは赤字になる可能性もあり、財政健全化目標の達成は困難になりつつあります。

「悪い金利上昇」への警戒

専門家の間では、現在の金利上昇が「良い金利上昇」なのか「悪い金利上昇」なのかが議論されています。経済成長に伴う金利上昇であれば健全ですが、財政悪化懸念による金利上昇は、円安をさらに進め、輸入物価の上昇を招く可能性があります。

実際、高市政権発足以降も円安ドル高が続いており、財政悪化を懸念する「悪い金利上昇」が円を買う理由にはなっていません。

賃金上昇とのバランスが重要

「金利が上がること自体がリスクなのではなく、賃金が上がらないのに金利が上がることがリスク」という点が重要です。金利は経済の体温計と呼ばれ、好景気になって賃金が上がる局面で金利も上がることは自然なことです。今後は、金利上昇と賃金上昇のバランスを注視していく必要があります。

まとめ

日本の長期金利が27年ぶりに2.2%台に上昇した背景には、高市政権の積極財政への懸念、衆院解散に伴う選挙後の政策への思惑、そして日銀の利上げ観測があります。

この金利上昇は、住宅ローンの返済額増加や企業の資金調達コスト上昇という形で、私たちの生活に直接影響を及ぼします。特に変動金利型住宅ローンを利用している方は、今後の金利動向を注視し、返済計画の見直しを検討することが重要です。

2月8日の衆院選の結果次第では、財政政策の方向性が変わる可能性もあります。金利動向と合わせて、政治情勢にも注目していく必要があるでしょう。

参考資料:

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