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by nicoxz

日本3メガバンクがステーブルコイン共同発行へ

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はじめに

日本の金融業界で、デジタル通貨の新たな潮流が生まれています。三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の3メガバンクが、円建てステーブルコインの共同発行に向けた準備を本格化させています。

ステーブルコインとは、法定通貨と価値が連動するデジタル通貨です。世界市場の時価総額は約48兆円規模に成長しており、その99%以上が米ドル建てとなっています。日本勢の参入は、ドル一極集中のステーブルコイン市場に一石を投じる動きといえます。

本記事では、3メガバンクの共同発行計画の詳細、先行するJPYCとの違い、そして米国のステーブルコイン政策が日本に与える影響について解説します。

3メガバンク共同発行の全容

単一ブランドでの発行体制

2025年11月、金融庁は3メガバンクによるステーブルコイン共同発行に向けた実証実験を支援対象として採択しました。この取り組みの特徴は、3行が「単一のブランド」で発行するという点にあります。

具体的なスキームは以下の通りです。みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行の3行が「共同の信託委託者」となり、三菱UFJ信託銀行が「単一の信託受託者」として機能します。これは信託型ステーブルコインと呼ばれる形態で、発行されるコインは日本円の預金および日本国債で保全されます。

この信託型の大きな利点は、移転上限がないことです。後述するJPYCなどの資金移動業者が発行するステーブルコインには1回あたり100万円という送金上限がありますが、信託型にはこの制約がありません。

法人決済での活用計画

3メガバンクのステーブルコインは、まず法人間決済での活用を想定しています。最初のユースケースとして、三菱商事が日本拠点と海外拠点間の越境決済に利用する計画です。

三菱商事は国内外に240社以上の主要事業会社を持ち、日常的に拠点間の送金を行っています。従来の銀行送金では数日を要していた国際決済が、ステーブルコインを活用すれば瞬時に完了します。手数料も大幅に削減できる見込みです。

3メガバンクは合計で30万社以上の主要取引先を抱えています。この巨大な顧客基盤を活かし、日本でのステーブルコイン普及を一気に加速させる狙いがあります。

規格統一による普及促進

3メガが共同発行に踏み切った背景には、「バラバラの銘柄の乱立を防ぐ」という戦略的な判断があります。各行が独自のステーブルコインを発行すれば、規格の不統一が普及の妨げになりかねません。

統一規格のステーブルコインであれば、企業間でのやり取りがスムーズになります。将来的には円建てだけでなく、ドル建てステーブルコインの発行も検討されています。

JPYCとの違いと市場の棲み分け

日本初の円建てステーブルコイン「JPYC」

3メガバンクの共同発行に先立ち、2025年10月27日にJPYC株式会社が国内初の日本円建てステーブルコイン「JPYC」の発行を開始しました。JPYCは2025年8月に資金移動業者として登録を完了しています。

JPYCの特徴は、1JPYC=1円で日本円に償還できる点です。Avalanche、Ethereum、Polygonなど複数のブロックチェーンに対応しており、日常的な即時決済や送金、給与支払い、法人間決済、Web3サービスとの連携などに利用できます。

JPYC社は今後3年間で発行残高10兆円を目指すという野心的な目標を掲げています。現在、TIS株式会社との協業で「ステーブルコイン決済支援サービス」の2026年内提供開始を目指しています。

100万円の壁という課題

JPYCの課題は、第二種資金移動業者として登録されているため、1回あたりの送金上限が100万円に制限されている点です。個人の日常決済には十分ですが、企業間の大口決済には不向きです。

一方、3メガバンクの信託型ステーブルコインには、この移転上限がありません。このため、大口の法人間決済は3メガバンク、個人向けや小口決済はJPYCという棲み分けが想定されます。

2026年以降の日本市場では、複数のタイプの円建てステーブルコインが共存することになります。日本郵便銀行の預金トークン、マネックスの送金用途向けサービスなど、多様なプレーヤーの参入が見込まれています。

米国GENIUS法とドル覇権の構図

ステーブルコインで基軸通貨維持を狙う米国

日本でステーブルコインの発行が進む背景には、米国の動きがあります。2025年7月、米国でGENIUS法(Guiding and Establishing National Innovation for US Stablecoins Act)が成立しました。

この法律は、ステーブルコイン発行者に厳格な準備資産要件を課すものです。発行額と同額の米ドルや短期米国債など流動性の高い資産を裏付けとして保有することが義務付けられました。毎月の保有資産開示と会計監査も必要です。

トランプ大統領は署名式典で「国際金融と暗号資産技術における米国支配を固める大きな一歩だ」と語りました。ベッセント財務長官も「米国債に裏打ちされたステーブルコインが誕生することで、基軸通貨ドルの優位性を維持できる」と明言しています。

2028年に2兆ドル市場へ

GENIUS法の狙いは、ステーブルコインの準備資産として米国債を積み上げさせることにあります。ハガティ上院議員によれば、ある投資銀行の試算では、同法によりステーブルコイン市場は2028年末には2兆ドル規模に達し、その大半の準備資産が米国債になるといいます。

現在、世界最大のステーブルコインはテザー社のUSDTで、市場シェア約61%を占めています。同社は2026年1月、GENIUS法に準拠した新ステーブルコイン「USAT」を発表しました。米国通貨監督庁の監督下で運営される完全規制対応のステーブルコインです。

日本市場への影響

日本では2025年3月、金融庁がSBI VC Tradeに対し、Circle社のUSDCを取り扱う電子決済サービス事業者としての初の認可を出しました。グローバルなドル建てステーブルコインとして、日本で利用可能になったのはUSDCが初めてです。

米国がドル覇権維持の道具としてステーブルコインを位置づける中、日本の3メガバンクによる円建てステーブルコイン発行は、円の国際的なプレゼンス向上という観点からも注目されています。

注意点と今後の展望

預金流出リスクへの対応

銀行にとって、ステーブルコインの普及は両刃の剣です。預金を運用原資とする銀行ビジネスにおいて、顧客が預金をステーブルコインに替えれば、預金流出につながりかねません。

3メガバンクが信託型スキームを採用した背景には、この預金流出リスクを最小化する狙いもあります。信託型では、裏付け資産として預金や国債が保有されるため、銀行システムからの資金流出を抑制できます。

匿名性と規制のバランス

ステーブルコインには匿名性の高さという特徴があり、マネーロンダリングやテロ資金供与への悪用リスクが指摘されています。国際決済での本格活用には、KYC(顧客確認)や取引モニタリングの仕組み整備が不可欠です。

日本の改正資金決済法では、発行者に対し準備資産の完全な信託保護、償還保証、定期的な透明性報告を義務付けています。規制と利便性のバランスをどう取るかが、普及の鍵を握ります。

2026年の注目ポイント

2026年は日本のステーブルコイン元年ともいえる年になりそうです。3メガバンクの本格サービス開始、JPYC関連サービスの拡大、暗号資産税制の見直し(最高税率55%から20%への引き下げ検討)など、市場を後押しする動きが続きます。

まとめ

日本の3メガバンクによるステーブルコイン共同発行は、デジタル金融時代における日本の国際競争力を左右する重要な取り組みです。信託型スキームの採用により法人間大口決済に対応し、JPYCなど資金移動業者のステーブルコインとの棲み分けも明確になりつつあります。

米国がGENIUS法でドル覇権の維持を図る中、日本勢の動きは円の国際的なプレゼンス向上という観点からも意義があります。今後は、規制整備の進展、ユースケースの拡大、そしてグローバル市場での競争力確保が重要な課題となるでしょう。

参考資料:

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