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by nicoxz

半導体「地味スゴ」企業、AIの巨人も頼る日本の黒子たち

by nicoxz
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はじめに

日本の株式市場で半導体関連株の存在感が増し続けています。アドバンテストやレーザーテックなどの値がさ株が注目を集める一方、製造装置や材料の分野には世界トップクラスのシェアを持つ「地味スゴ」企業がまだまだ存在します。

半導体材料における日本企業の世界シェアは55%に達し、製造装置でも32%を占めています。AIブームの中心にいるNVIDIAやTSMCといった巨人たちも、日本の素材・装置メーカーなしには最先端チップを製造できません。

本記事では、世界の半導体産業を支える日本の「黒子」企業の実力と、投資対象としての魅力を探ります。

プローブカードで世界を席巻する日本マイクロニクス

メモリー向け検査器具で世界シェア4割

青森県に本社を構える日本マイクロニクス(6871)は、プローブカードの分野で世界第3位のメーカーです。全体の世界シェアは14%ですが、メモリー向けに限れば約33%で世界首位に立っています。

プローブカードとは、半導体ウェーハ上に形成された集積回路を個々のチップに切り分ける前に電気特性を検査するための接触治具です。数カ月から2〜3年で消耗するため、継続的な需要が見込める事業構造が特徴です。

同社の「U-Probe」は、1枚のウェーハを1回のコンタクトで検査できる画期的な技術として世界的に評価されています。毎年売上高の約10%を研究開発に投じ、技術の進化を続けています。

AI需要がHBM向けプローブカードを押し上げる

AI半導体の急速な発展は、プローブカード市場にも大きな恩恵をもたらしています。特にHBM(High Bandwidth Memory)の世代進化に伴い、DRAM向けプローブカードの需要が拡大しています。

日本マイクロニクスではHBM向けプローブカードの需要が極めて高い状態が続いており、標準納期を上回る対応を行いつつ、設備投資を前倒しで進めています。同社は2026年12月期に売上高800億円、営業利益200億円、営業利益率25%を目標に掲げています。

半導体材料で圧倒的な存在感を示す日本企業

フォトレジスト:シェア90%超の独壇場

半導体製造に不可欠なフォトレジスト(感光性樹脂)は、日本企業が世界シェアの90%以上を占める分野です。JSRと東京応化工業だけで世界シェアの5割以上を握っています。

フォトレジストは回路パターンをウェーハに転写するための材料であり、半導体の微細化が進むほど高い品質が求められます。日本企業が長年にわたって蓄積してきた製造ノウハウは、他国のメーカーが容易に追随できるものではありません。

シリコンウェーハ:信越化学とSUMCOが世界の過半を供給

半導体の基板となるシリコンウェーハでは、信越化学工業とSUMCOの2社だけで世界の過半数を供給しています。シリコンウェーハの品質はチップの性能と歩留まりに直結するため、わずかな不純物も許されない超高純度の製造技術が求められます。

この2社の技術力は他の追随を許さず、最先端プロセス向けのウェーハではさらに高いシェアを持っているとされています。

高純度フッ酸:日本3社で世界の80〜90%

半導体の洗浄工程で使用される高純度フッ酸は、ステラケミファ、ダイキン工業、森田化学工業の日本3社で世界シェアの80〜90%を占めています。この材料は製造技術の難易度が極めて高く、事実上これら3社しか製造できない状況です。

製造装置でも世界トップクラスの日本企業

東京エレクトロン:コータ/デベロッパで世界首位級

半導体製造装置の世界売上高トップ10には日本企業が4社ランクインしています。その筆頭が東京エレクトロンです。コータ/デベロッパ(塗布・現像装置)やエッチング装置で世界トップクラスのシェアを有し、売上高ベースで世界第3〜4位に位置しています。

2025年の半導体製造装置世界市場は1,255億ドル(前年比7.4%増)、2026年は1,381億ドルと過去最高を更新する見込みです。AI関連投資の拡大が市場全体を押し上げています。

洗浄装置のSCREEN、テスターのアドバンテスト

半導体洗浄装置では京都のSCREENホールディングスが圧倒的な存在感を示しています。半導体の製造工程では洗浄が全工程の約3割を占めるとされ、微細化が進むほど洗浄の重要性は増します。

半導体テスター(計測装置)の分野では、アドバンテストが世界市場を席巻しています。AI向け高性能チップの検査需要の増大により、同社の業績は大きく伸びています。

バッチALD装置のKOKUSAI ELECTRIC

原子層堆積法(ALD)を用いたバッチ成膜装置では、KOKUSAI ELECTRICが世界シェアの約70%を占めています。ALDは原子レベルで薄膜を形成する技術であり、最先端の微細加工に不可欠です。同社は2023年に再上場を果たし、独立した装置メーカーとして成長を続けています。

なぜ日本企業が強いのか

暗黙知とカイゼンの蓄積

半導体材料の分野で日本企業が圧倒的なシェアを持つ理由は、材料開発の特殊性にあります。最適化すべきパラメータが多く、マニュアル化できない暗黙知やノウハウが競争力の源泉となっています。

論理的に仕様を決めていくことが難しい材料分野では、現場での継続的な改善・改良が重要です。日本のメーカーが長年の経験によって培ってきた深い知識と技術が、この分野での優位性を支えています。新規参入者がこうした蓄積を短期間で再現することは極めて困難です。

顧客との緊密な協業体制

半導体の材料や装置は、チップメーカーと密接に連携して開発が進められます。日本企業は顧客との長期的な信頼関係に基づいた協業体制を構築しており、次世代プロセスの開発段階から関与することで、競合他社に対する参入障壁を築いています。

注意点・今後の展望

地政学リスクと供給集中のリスク

日本企業のシェアが極めて高い分野では、供給の集中がリスク要因となる可能性もあります。米中対立や台湾海峡問題など地政学リスクが高まる中、各国政府が半導体サプライチェーンの多様化を進めています。

日本企業にとっては、海外での生産拠点の拡充や、安全保障上の規制への対応が経営課題として浮上しています。

2nm以降の技術革新が追い風に

半導体の微細化が2nm世代に進むにつれて、製造の難易度はさらに上がります。EUV(極端紫外線)露光周辺の装置や先端パッケージング材料など、日本企業が強みを持つ分野への需要は2025年から2027年にかけて一段と拡大する見込みです。

まとめ

半導体チップ自体のシェアでは存在感が薄れた日本ですが、製造装置と材料という「縁の下の力持ち」の分野では、依然として世界に不可欠な存在です。フォトレジストで90%超、高純度フッ酸で80〜90%、シリコンウェーハで過半数という圧倒的なシェアは、簡単に覆せるものではありません。

AI時代の到来は、これらの「地味スゴ」企業にとって大きな追い風です。投資家にとっても、華やかなチップメーカーだけでなく、サプライチェーンの上流に位置する日本の実力企業に目を向ける価値があるといえるでしょう。

参考資料:

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