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by nicoxz

メモリー半導体高騰でテック株に明暗、勝者と敗者の構図

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はじめに

2026年に入り、メモリー半導体市場が世界の株式市場に大きな影響を与えています。人工知能(AI)向けの需要が爆発的に拡大する中、メモリーチップメーカーの株価は急騰する一方、パソコン(PC)メーカーなどメモリーを購入する側の企業は利益圧迫懸念から株安に見舞われています。

特に注目すべきは、この状況が一時的なものではなく、少なくとも2027年から2028年頃まで続くと予想されている点です。本記事では、メモリー半導体価格高騰の背景、勝者と敗者それぞれの状況、そして今後の見通しについて詳しく解説します。

メモリー価格高騰の背景:AI需要が「酸素を吸い尽くす」

AIサーバーによるメモリー需要の爆発

現在のメモリー半導体価格高騰の最大の要因は、AIインフラへの投資急拡大です。AIサーバーは従来のサーバーと比較して、GPU(グラフィックス処理ユニット)やTPU(テンソル処理ユニット)に加え、広帯域メモリー(HBM)を大量に必要とします。

TrendForceの調査によると、2026年1月から3月期(Q1)のDRAM契約価格は前四半期比55〜60%の上昇、NAND型フラッシュメモリーは33〜38%の上昇が見込まれています。この価格上昇は、メモリーメーカーがAIサーバー向けに生産能力を優先的に振り向けていることが主因です。

2026年のCES(世界最大の家電見本市)で、NVIDIAのジェンスン・ファンCEOは「メモリーとストレージはAI分野で最も未開拓な巨大市場だ」と発言し、GPUだけではAIは機能せず、大容量で高速なデータストレージが不可欠であると強調しました。この発言は投資家のメモリー関連銘柄への注目を一気に高めることになりました。

供給制約と構造的な価格上昇

メモリー市場の需給バランスは、2026年を通じて供給不足が続く見通しです。市場予測によると、2026年のNAND需要は前年比20〜22%増加する一方、供給は15〜17%増にとどまり、需給ギャップは拡大する見込みです。

さらに、2025年10月にはOpenAIがサムスン電子およびSKハイニックスと戦略的パートナーシップを発表し、「Stargate」AIインフラプロジェクト向けのメモリー供給を確保しました。報道によると、このStargateプロジェクトだけで世界のDRAM生産量の最大40%を消費する可能性があるとされています。

勝者:サンディスクの株価が1年で15倍に

驚異的な株価上昇

メモリーメーカーの中でも特に注目を集めているのが、米サンディスク(SanDisk)です。同社の株価は2025年2月のウェスタンデジタルからのスピンオフ以降、約1,500%(15倍)上昇しました。2026年1月だけで株価は143%上昇し、S&P500種株価指数の中でトップパフォーマーとなっています。

2026年1月30日に発表された決算では、調整後1株当たり利益(EPS)が6.20ドルと、アナリスト予想の3.62ドルを大幅に上回りました。売上高も30.3億ドルと予想の26.9億ドルを超え、データセンター事業は前年比64%増という驚異的な成長を記録しています。

強気の業績見通し

サンディスクの2026年1〜3月期(第3四半期)のEPS見通しは12〜14ドルと、市場予想の4.95ドルを大きく上回る水準で示されました。デビッド・ゲクラーCEOは「顧客需要は供給をはるかに上回っており、この状況は2026年以降も続く」とアナリストに語っています。

バーンスタイン・ソシエテ・ジェネラルは、好決算と価格環境の強さを理由にサンディスクの目標株価を1,000ドルに引き上げました。モーニングスターのアナリストは、メモリーチップの供給制約が少なくとも2028年まで続くと予測しており、サンディスクの価格決定力と収益性には複数年にわたる追い風が吹くとみています。

敗者:デルとHPに忍び寄る利益圧迫

モルガン・スタンレーによる格下げ

メモリー価格高騰の恩恵を受けるメーカーがある一方、メモリーを購入する側の企業は厳しい状況に直面しています。モルガン・スタンレーは2026年1月、デル・テクノロジーズ、HP Inc.、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)の格付けを引き下げ、メモリー価格高騰による利益率圧迫リスクを警告しました。

デルについては目標株価を144ドルから110ドルに引き下げ、「メモリーコスト上昇で最も大きな打撃を受ける銘柄の一つ」と指摘。2027会計年度の粗利益率予想を従来比220ベーシスポイント引き下げ18.2%とし、EPS予想も約12%下方修正しました。

HP Inc.は「アンダーウェイト」に格下げされ、目標株価は26ドルから24ドルに引き下げられました。DRAMおよびNAND価格の上昇がパーソナルシステム部門の利益率を圧迫するとして、2026会計年度の粗利益率予想を90ベーシスポイント引き下げ19.7%としています。

PC価格引き上げの連鎖

TrendForceの報道によると、デルは2025年12月中旬から15〜20%の製品価格引き上げを実施しました。レノボも2026年1月から値上げに踏み切り、HP、ASUS、Acerなども2026年を通じて段階的な値上げを示唆しています。

デルのジェフ・クラークCOOは、AIデータセンターによるメモリー需要が「PC市場の酸素を吸い尽くしている」と表現し、主要部品の価格が最大50%上昇する可能性を警告しました。DDR5などの主要DRAMコンポーネントは前年比70%上昇し、一部の部品は170%もの値上がりを見せています。

PC出荷台数見通しの下方修正

メモリー価格上昇は消費者向け電子機器のBOM(部品表)コストを大幅に押し上げ、小売価格の引き上げにつながっています。これにより市場需要が減退するとの見方から、TrendForceは2026年のノートPC出荷台数見通しを、当初の前年比1.7%増から2.4%減へと下方修正しました。

IDCは2026年のPC出荷台数について、穏健なシナリオで前年比4.9%減、悲観的なシナリオでは8.9%減を予測しています。PCWorldの報道では、2026年のPC価格は平均8%上昇する可能性があるとされています。

メモリー供給をめぐる各社の動き

SKハイニックスの独走

韓国SKハイニックスは、AI向け広帯域メモリー(HBM)供給でリードする立場を確立しています。同社の2025年10〜12月期決算では、営業利益が前年同期比2倍超の19兆2,000億ウォン(約2兆500億円)に達し、過去最高の四半期業績を記録しました。

SKハイニックスはHBM3Eと次世代規格HBM4の両方を安定供給できる唯一のサプライヤーとしての地位を確立しつつあります。同社は韓国・清州市で19兆ウォンを投じた先端半導体メモリーのパッケージング施設建設を2026年4月に着工し、2027年末の完成を目指しています。

キオクシアの戦略転換

日本のキオクシアホールディングスは、競合がHBMに注力する中で、NAND型フラッシュメモリー専業メーカーとしての優位性を打ち出しています。ステイシー・スミス会長は「競合各社がHBMに傾倒している今、NAND専業の当社には有利な局面が訪れている」との認識を示しました。

また、キオクシアは酸化物半導体を用いた新しいDRAM技術(OCTRAM)の開発を進めており、DRAM市場への再参入を図っています。

サムスンとSKハイニックスの価格引き上げ

サムスン電子とSKハイニックスは2026年納入分のAI向けHBM契約価格を約20%引き上げたと報じられています。これにより、AI半導体メーカー側のコスト増加が予想されますが、需要の強さから価格転嫁は進むとみられています。

投資家が注意すべきリスク

メモリー市場の周期性

メモリー半導体市場は本質的にシクリカル(循環的)な性質を持っています。現在の価格上昇は構造的な要因に支えられているものの、需要の減速、新規生産能力の稼働、AI投資の調整など、何らかの変化があれば急激な価格下落を招く可能性があります。

サンディスクなどメモリーメーカーの株価は、将来の期待をすでに大幅に織り込んでいる可能性があり、期待に届かない決算や見通しが示された場合には急落リスクがあります。

ハードウェア企業への長期的影響

アップルからHP、デルに至るハードウェア企業は、高価なメモリー部品を購入し続ける必要があり、この状況は投資リスクとなります。しかも、SKハイニックスが警告するように、DRAM供給の逼迫状態は2028年まで続く見通しであり、すぐには改善しそうにありません。

Windows 10のサポート終了(2025年10月)に伴うPC買い替え需要が期待されていた2026年ですが、価格高騰により需要喚起効果が限定的になる可能性もあります。

まとめ

メモリー半導体価格の高騰は、テクノロジー業界に明確な勝者と敗者を生み出しています。サンディスクをはじめとするメモリーメーカーは、AI需要の恩恵を受けて株価が急騰する一方、デルやHPなどPCメーカーは利益率圧迫と需要減退のダブルパンチに直面しています。

この構造的な変化は少なくとも2027〜2028年頃まで続くとみられており、投資家はメモリー市場の動向を注視する必要があります。AIインフラへの投資が続く限り、メモリー需給の逼迫は解消されず、テック株の明暗はさらに分かれる可能性が高いといえます。

個人投資家としては、メモリーメーカーへの投資は高リターンの可能性がある一方で高リスクであること、PCメーカーは短期的な利益圧迫を覚悟する必要があることを認識した上で、分散投資を心がけることが重要です。

参考資料:

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