柏崎刈羽原発6号機で制御棒トラブル発生、再稼働直後に作業中断
はじめに
東京電力ホールディングスは2026年1月22日、前日に13年10カ月ぶりに再稼働させた柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)6号機で、制御棒の引き抜き作業中に警報が発生したため、原子炉を停止すると発表しました。
福島第一原発事故後、東京電力として初の原発再稼働でしたが、わずか数時間でトラブルが発生する事態となりました。外部への放射能の影響はないとされていますが、再稼働直後のトラブル発生は、原発の安全性に対する不安を改めて浮き彫りにしています。
この記事では、今回のトラブルの詳細、制御棒の仕組みと役割、そして柏崎刈羽原発が抱える課題について解説します。
今回のトラブルの経緯
再稼働から数時間でトラブル発生
柏崎刈羽原発6号機は2026年1月21日夜に再稼働し、制御棒を引き抜いて核分裂反応を開始させる作業が進められていました。しかし、22日午前0時30分ごろ、制御棒の引き抜き作業中に警報が発生しました。
東京電力によると、6号機には燃料の核分裂反応を抑える制御棒が205本あります。警報が発生した時点では、52本が完全に引き抜かれた状態で、追加で26本を引き抜いている最中でした。205本中1本の制御棒について、操作監視系の警報が鳴りました。
電子部品の交換でも改善せず
東京電力は当初、制御棒の操作盤の電子部品に問題があると考え、部品の交換を試みました。しかし、状況は改善しませんでした。
原因の特定に時間がかかると判断した東京電力は、安全を優先して原子炉を停止することを決定しました。原子力規制委員会は「原子炉の状態は安定しており、安全上問題はない」との見解を示しています。
制御棒とは何か
原子炉の「ブレーキ」としての役割
制御棒は、原子炉の出力を制御するための重要な設備で、いわば原子炉の「ブレーキ」の役割を果たします。制御棒はカドミウムや炭化ホウ素など、中性子をよく吸収する物質でできています。
核分裂は中性子がウランにぶつかることで起こります。制御棒を炉心に挿入すると中性子が吸収されて核分裂が抑制され、逆に制御棒を引き抜くと中性子が増えて核分裂が促進されます。
沸騰水型原子炉(BWR)の特徴
柏崎刈羽原発6号機は沸騰水型原子炉(BWR)を採用しています。BWRでは、制御棒は圧力容器の下方から水圧で押し込む構造になっています。これは、圧力容器上部に汽水分離器があるためです。
BWRの制御棒は十字形の断面を持ち、4体の燃料集合体の間に配置されます。緊急時には、蓄圧タンクの加圧水により制御棒が一斉に炉心に挿入され、原子炉を緊急停止(スクラム)させます。
再稼働前にも発生していたトラブル
1月17日の警報未作動問題
実は、今回のトラブルの前にも問題が発生していました。1月17日、再稼働に向けた試験中に、制御棒を引き抜いた際に本来作動するはずの警報が鳴らないという不具合が見つかりました。
東京電力の調査により、この原因は制御棒の不用意な引き抜きを防ぐ機能の設定ミスであることが判明しました。驚くべきことに、この誤った設定は6号機が運転を開始した1996年から30年間にわたって存在していたのです。設定ミスは88件に上りました。
当初予定の再稼働延期
この不具合を受けて、当初1月20日に予定されていた再稼働は延期されました。東京電力は設定を修正した上で、1月21日に再稼働を実施しましたが、その直後に別のトラブルが発生する結果となりました。
過去の制御棒関連トラブル
6号機では、2025年6月に制御棒の引き抜きに使う電動装置の一部が動かない不具合が見つかっています。また、8月にも制御棒の引き抜きができないトラブルが発生しており、制御棒関連の問題が繰り返し起きている状況です。
東京電力への根強い不信感
福島事故からの信頼回復は道半ば
柏崎刈羽原発は、原子力規制委員会が2017年12月に新規制基準に適合すると判断してから、再稼働まで8年以上を要しました。その背景には、新潟県民の東京電力に対する根強い不信感があります。
2011年の福島第一原発事故を起こした東京電力が、再び原発を運転することへの不安は、地元住民の間で依然として強く残っています。
テロ対策の不備も発覚
2021年3月には、テロ対策に関わる侵入検知装置が長期間にわたり機能喪失していたことが発覚しました。原子力規制委員会はこの問題の重要度を「最悪」と評価し、2021年4月には核燃料の移動を禁じる是正措置命令を出しました。
また、IDカードの不正利用など、安全意識の希薄さを示す問題も相次いで明らかになっています。
運転経験の不足
福島第一原発事故後、東京電力の原発は長期間停止しており、運転経験の不足も指摘されています。柏崎刈羽では、運転員の約4割が稼働中の原発を動かした経験がないとされています。
今後の見通しと課題
原因究明と再稼働の行方
東京電力は現在、今回のトラブルの原因究明を進めています。電子部品の交換では改善しなかったことから、より根本的な問題が潜んでいる可能性も否定できません。
原因が特定され、対策が講じられるまで、再稼働の時期は不透明な状況が続くことになります。
安全性の確保と透明性
今回のトラブルは、30年前から存在していた設定ミスが発覚した直後に発生しました。長期間にわたって見過ごされてきた問題の存在は、原発の安全管理体制に対する疑問を投げかけています。
東京電力には、トラブルの原因を徹底的に調査し、情報を透明に開示することが求められます。
県民投票運動の広がり
新潟県では「柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で決める会」による署名運動が展開されており、2026年1月6日時点で14万筆を超える署名が集まっています。これは直接請求の成立要件を大きく上回る数字です。
まとめ
柏崎刈羽原発6号機は、13年ぶりの再稼働からわずか数時間で制御棒のトラブルに見舞われ、原子炉停止を余儀なくされました。外部への放射能の影響はないとされていますが、再稼働直前にも30年来の設定ミスが発覚していたことと合わせ、原発の安全管理に対する不安が広がっています。
東京電力は福島第一原発事故後、信頼回復に努めてきましたが、相次ぐトラブルや不祥事により、その道のりは険しいものとなっています。原因究明と再発防止策の徹底、そして地元住民への丁寧な説明が不可欠です。
参考資料:
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