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by nicoxz

柏崎刈羽原発6号機が再稼働、東電事故後初の運転

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はじめに

2026年1月21日、東京電力ホールディングスは柏崎刈羽原子力発電所6号機(新潟県)を再稼働しました。2011年の福島第1原子力発電所事故以来、東京電力として初めて原発を再稼働させたことになります。

福島第1原発事故を起こした企業が再び原発を動かすという決断は、日本のエネルギー政策における重要な転換点となります。この再稼働は東電の経営再建、首都圏への電力安定供給、そして日本全体のエネルギーセキュリティに大きな影響を与えます。

本記事では、柏崎刈羽原発6号機再稼働の経緯、経営への影響、電力供給面での意義、そして安全対策の現状について解説します。

再稼働までの経緯

地元同意の完了

柏崎刈羽原発6号機の再稼働は、長い調整プロセスを経て実現しました。新潟県の花角英世知事は2025年11月21日の臨時記者会見で再稼働を容認する意向を表明し、同年12月22日には新潟県議会が知事の信任を決定しました。

花角知事は12月23日、赤澤経済産業大臣に対して地元として再稼働に同意することを正式に伝え、地元同意の手続きが完了しました。これにより、東電は2026年1月20日の原子炉起動を決定し、21日に実際の再稼働が行われました。

6号機が先行した理由

当初、東電は7号機を先に再稼働させる計画でした。しかし、再稼働に必要な「特定重大事故等対処施設」(テロ対策施設)が2025年10月13日の設置期限に間に合わなかったため、計画を変更しました。

6号機のテロ対策施設の設置期限は2029年9月であり、時間的余裕があることから、6号機を優先する方針に転換されました。7号機については、テロ対策施設の完成時期が2029年8月に延期されています。

営業運転開始までのスケジュール

原子炉起動後、制御棒を引き抜いて核分裂反応を開始し、原子炉の出力を徐々に上昇させます。定格出力に達した後は総合負荷性能検査を実施し、2026年2月26日の営業運転開始を目指しています。

東電経営再建への影響

年間約1000億円の収益改善

東京電力にとって、柏崎刈羽原発の再稼働は経営再建の柱の一つです。原発1基が稼働すれば年間で約1000億円の収益改善が見込まれています。

東電の試算では、外部からの電力調達コスト減が約2500億円、再稼働によるコスト増が約1600億円となり、差し引き約900億円の収益改善効果があるとされています。

新潟県への還元策

新潟県は東北電力の供給エリアに属しており、柏崎刈羽原発の再稼働による直接的なメリットを享受しにくい状況にあります。電気料金引き下げなどの恩恵は、電力供給先の首都圏に偏る構造となっています。

このため東電は、柏崎刈羽原発が再稼働すれば、その収益を原資に新潟県向けに10年程度で1000億円規模を還元する方針を表明しました。地元の理解を得るための重要な取り組みです。

福島第1原発事故の賠償・廃炉費用

東電は福島第1原発事故の賠償や廃炉に巨額の費用を要しており、柏崎刈羽原発の再稼働による収益改善はこれらの資金確保にも寄与します。経営再建と社会的責任の両立が求められる中での判断となりました。

首都圏への電力供給と料金への影響

東日本の電力供給構造の課題

現在、東日本(東京・東北エリア)は電力供給の約8割を火力発電に依存しています。そのうち約9割の火力電源が東京湾岸や太平洋沿岸に集中しており、運転開始後40年以上の老朽火力も約1割存在します。

自然災害等に対して脆弱な構造であり、柏崎刈羽原発の再稼働はリスク分散の観点からも意義があります。経済産業省の見通しによると、6号機の再稼働により関東エリアの供給予備率が約2%向上するとみられています。

電気料金への影響

東日本大震災後、東日本の電気料金は西日本と比べて2〜3割程度高くなっています。西日本では既に合計12基の原発が再稼働しているのに対し、東日本では東北電力女川原発2号機のみが再稼働している状況でした。

柏崎刈羽原発6号機の再稼働による値下げ効果については、標準世帯で月額約122円との分析もあります。大きな値下げとはなりませんが、エネルギーコスト削減への第一歩となります。

東日本で15基目の再稼働

柏崎刈羽原発6号機は、2011年の東日本大震災後で全国15基目の再稼働となります。これまで再稼働した原発は西日本に集中しており、東日本では女川原発2号機に続く2基目となります。

安全対策と不祥事への対応

過去の重大な不祥事

柏崎刈羽原発では2021年に深刻な不祥事が発覚しました。テロリズム対策に関わる侵入検知装置が長期間機能喪失していたことが明らかになり、原子力規制委員会は問題の重要度を「最悪」と評価しました。

2021年4月、原子力規制委員会は東電に対し、状況改善が確認されるまで核燃料の移動を禁じる是正措置命令を発出しました。核セキュリティー分野で「赤」判定が出るのは日本で初めてであり、同様の検査制度を運用するアメリカでも近年例がないとされる重大事案でした。

是正措置命令の解除

2023年12月、原子力規制委員会は自律的な改善が見込める状況が確認できたとして、運転禁止命令を解除しました。約2年半にわたる是正期間を経て、再稼働への道が開かれました。

直近の問題と東電の対応

2025年11月にも、核物質防護に関する機密情報の不適切な取り扱いが報告されました。社員が必要な手続きを取らずに機密書類を持ち出してコピーを取り、自分の机で保管していた事案です。

ただし、情報漏洩は確認されておらず、業務効率化のための行為と捉えられています。東電は一連の不適切事案を踏まえた改革を継続しており、組織体質の改善に取り組んでいます。

安全対策費用の増大

柏崎刈羽原発の再稼働に向けた安全対策費は約1兆1690億円に達しています。2013年前半の段階では東電は700億円と見積もっていましたが、テロ対策施設の建設費用などがかさみ、大幅に増加しました。

注意点と今後の展望

7号機の再稼働見通し

6号機に続き、7号機の再稼働も計画されています。ただし、テロ対策施設の完成が2029年8月に延期されており、再稼働はそれ以降となる見込みです。2基体制での本格運用には時間を要します。

継続的な監視の重要性

福島第1原発事故を起こした東電が再び原発を運転することについては、社会的な監視の目が向けられています。安全対策の徹底と透明性のある情報公開が継続的に求められます。

脱炭素とエネルギーミックス

原発再稼働は、2050年カーボンニュートラル達成に向けたエネルギーミックスの観点からも議論されています。再生可能エネルギーの拡大とともに、原発の位置づけについて国民的な議論が続くと考えられます。

まとめ

柏崎刈羽原発6号機の再稼働は、福島第1原発事故から約15年を経て、東京電力が原発運転に復帰する歴史的な転換点となりました。2026年2月26日の営業運転開始を目指し、首都圏への電力安定供給と東電の経営再建に寄与することが期待されます。

一方で、過去の不祥事を踏まえた安全対策の継続と、社会からの信頼回復は依然として課題です。原発を取り巻く環境は技術面・社会面・政策面で複雑であり、今後も注視が必要です。

電力需給やエネルギー政策に関心のある方は、今後の7号機再稼働の動向や、他の原発の再稼働状況についても継続的に情報を確認することをお勧めします。

参考資料:

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