Research

Research

by nicoxz

消費税減税に自民党内で慎重論、衆院選の争点を読み解く

by nicoxz
URLをコピーしました

はじめに

2026年2月8日に投開票を迎える衆院選で、食料品の消費税率ゼロが最大の争点となっています。高市早苗首相が「悲願」と語る食料品消費税ゼロですが、足元の自民党内では慎重論が根強く存在します。日本経済新聞の立候補者アンケートでは、自民党で回答のあったうち閣僚を含む約2割が消費税率の「現状維持」と回答しました。

減税を掲げる各党が並ぶ中、なぜ自民党内に慎重論があるのか。年5兆円とされる財源問題や、各党の公約の違いを整理しながら、消費税減税の実現可能性を読み解きます。

食料品消費税ゼロをめぐる自民党内の温度差

高市首相の「悲願」と党内の現実

高市首相は2026年1月19日の記者会見で、食料品の消費税率ゼロを「私自身の悲願」と表明しました。自民党の衆院選公約にも「飲食料品を2年間に限り消費税の対象としないことについて、実現に向けた検討を加速する」と明記されています。

しかし、この公約には重要な留保が含まれています。具体的な実施時期は示されず、財源やスケジュールの検討は超党派の「国民会議」に委ねるとされました。高市首相自身も国会で「残念ながら自民党内で賛同を得られなかった」と述べており、党内調整が難航した経緯がうかがえます。

「現状維持」を選んだ2割の意味

衆院選の立候補者アンケートで自民党の約2割が消費税率の「現状維持」と回答したことは、注目に値します。他の政党ではほとんど見られない回答であり、与党内に財政規律を重視する勢力が一定の影響力を持っていることを示しています。

政府・自民党内には「実現できない」との見方が早くも広がっています。食料品の消費税率をゼロにすれば年約5兆円の税収減が生じますが、それを補う具体的な財源のめどは立っていません。

年5兆円の財源問題

税収減の規模

財務省の試算によると、消費税に関する各シナリオの税収減は以下の通りです。食料品の税率をゼロにする場合は年約5兆円、消費税率を一律5%に引き下げる場合は年約15兆円、消費税を全て廃止する場合は年約31兆円の減収となります。

消費税は社会保障制度を支える基幹税であり、年5兆円の穴埋めは容易ではありません。高市首相は「特例公債(赤字国債)に頼ることなく、補助金や租税特別措置、税外収入などの見直し」と述べていますが、具体的な数字の裏付けは示されていません。

経済効果は限定的との指摘

野村総合研究所の分析によれば、食料品の消費税を2年間ゼロにした場合の実質GDP押し上げ効果は年+0.22%にとどまります。約5兆円のコストに対して効果が限定的だとの指摘があり、費用対効果への疑問が呈されています。

さらに、消費税減税の方針が固まれば「悪しき先例」になるとの懸念もあります。社会保障財源を守るという節度が失われることで、海外格付け機関から日本国債の格下げを受けるリスクも指摘されています。

各党の消費税公約を比較する

与党・自民党

自民党は維新の会との連立合意で「飲食料品を2年間に限り消費税の対象としないことを視野に法制化を検討」としています。ただし、実施時期は明記されておらず、高市首相の各種討論会での説明も二転三転しています。

中道改革連合(立憲・公明の新党)

中道改革連合は、2026年秋から恒久的に食料品の消費税率をゼロにすることを掲げています。財源としては、国の資産を一体的に運用する「ジャパン・ファンド」の創設や、政府内の「積み過ぎ基金」の活用を提案しています。

国民民主党

国民民主党は消費税率を一律5%に引き下げることを主張しています。食料品に限定せず、全品目を対象とする点が他党との違いです。

その他の政党

共産党は消費税廃止に向けてまず5%への引き下げを提起しています。れいわ新選組、減税日本・ゆうこく連合、参政党、社民党は消費税の「廃止」を掲げ、日本保守党は「食品ゼロの恒久化」を打ち出しました。チームみらいは社会保険料の引き下げに重点を置き、消費税減税は盛り込みませんでした。

注意点・展望

消費税減税の議論では、いくつかの重要な点を見落とさないことが大切です。

まず、消費税は社会保障の安定財源として位置づけられている点です。高齢化が進む日本では社会保障費の増大が続いており、安定的な税収の確保は不可欠です。減税による税収減をどう補うかが曖昧なまま実施されれば、将来世代への負担先送りとなる懸念があります。

次に、食料品の税率ゼロ化が飲食店経営に与える影響です。テイクアウトと店内飲食で税率が異なる軽減税率制度がさらに複雑化する可能性があり、事業者の実務負担が増大する恐れがあります。

選挙後の注目点は、どの政党が政権を担い、実際にどこまで減税を実行に移せるかです。公約と実行の間には大きな距離があり、財源確保の具体策が示されない限り、消費税減税の実現は不透明な状況が続きます。

まとめ

2026年衆院選で食料品の消費税率ゼロが争点化する中、自民党内には閣僚を含む約2割が現状維持を主張するなど、慎重論が根強く存在します。年5兆円の財源問題、限定的な経済効果、財政への信認リスクなど、課題は山積しています。

有権者にとって重要なのは、各党の公約の中身を冷静に比較し、実現可能性と財源の裏付けを見極めることです。2月8日の投開票結果が、今後の消費税政策の方向性を大きく左右することになります。

参考資料:

関連記事

最新ニュース