自民党衆院選公約案、定数削減と食品消費税ゼロを柱に
はじめに
2026年1月27日公示、2月8日投開票の衆院選に向け、自民党が掲げる公約の原案が明らかになりました。衆院議員の定数1割削減を目標に、選挙後に開かれる次期国会で法案の成立を目指すと明記するほか、食料品の消費税を2年間ゼロにする方針も盛り込んでいます。
公約の原案には5本の柱が据えられ、強い経済、地方の活性化、外交・安全保障、社会保障、憲法改正が中心となります。スローガンには「日本列島を、強く豊かに」を掲げ、高市早苗首相の政治姿勢を前面に打ち出す構えです。本記事では、自民党公約の主な内容と背景を解説します。
衆院議員定数1割削減
連立合意に基づく公約
自民党と連立を組む日本維新の会は、2025年10月の連立政権合意書において「1割を目標に衆院議員定数を削減するため、臨時国会で議員立法で法案を提出し成立を目指す」と明記していました。今回の公約原案は、この合意に基づき、次期国会での法案成立を明記したものです。
両党は2025年12月5日、衆議院議員定数削減法案を国会に提出しました。現行の465議席から1割削減を目標とし、420議席以下にする内容となっています。
自動削減条項の設置
注目すべきは、法案に盛り込まれた「自動削減条項」です。施行から1年以内に具体的な方法について結論が得られない場合、小選挙区25、比例代表20の合計45議席を削減する法律改正が自動的に施行されます。
これは維新が強く求めていた「身を切る改革」を担保するための仕組みで、議論が停滞した場合でも削減が実現する設計になっています。
定数削減の影響
日本経済新聞の試算によると、小選挙区25削減が実現した場合、20都道府県で定数が減少する見通しです。東京や神奈川では複数の選挙区が減り、地方部への影響も大きくなります。
一方で、「1票の格差」が拡大するリスクも指摘されています。定数削減によって都市部と地方の間の議席配分がさらに偏る可能性があり、選挙制度の公平性をめぐる議論は今後も続くとみられます。
世論の反応
日本経済新聞とテレビ東京の世論調査(2025年12月)では、定数削減について「選挙制度自体の見直しと一体ですべきだ」が56%で最多となり、「定数削減のみをすべきだ」は24%、「定数削減をする必要はない」は13%でした。単純な定数削減よりも、抜本的な選挙制度改革を求める声が多いことがうかがえます。
食料品の消費税2年間ゼロ
物価高対策の目玉
公約原案には、食料品の消費税を2年間ゼロにする方針が盛り込まれています。これも連立政権合意に「飲食料品については2年間に限り消費税の対象としないことも視野に法制化の検討を行う」と明記されていた内容を具体化したものです。
高市早苗首相は2026年1月19日の記者会見で、食料品消費税ゼロについて「私自身の悲願だ」と述べ、実現への強い意欲を表明しました。衆院選後には社会保障と税の一体改革を議論する超党派の「国民会議」を早期に立ち上げ、財源やスケジュールの検討を加速する考えを示しています。
維新との連携
日本維新の会の藤田文武共同代表も「2年間に期間を限定したゼロは我が党がずっと言ってきた。強く訴えていきたい」と述べ、与党として一体となって推進する姿勢を示しています。物価高で家計が圧迫されている状況を踏まえ、有権者への分かりやすいアピールとなっています。
財源問題という課題
しかし、食料品の消費税率をゼロにした場合、年間約5兆円の税収減が見込まれます。消費税は社会保障財源に充てると法律で定められており、財源確保は大きな課題です。
高市首相は財源について「特例公債に頼ることなく、補助金や租税特別措置、税外収入などの歳出・歳入全般の見直しが考えられる」と述べましたが、具体策は明示していません。自民党内には社会保障財源を削ることへの慎重論も根強く、実現へのハードルは高いとみられます。
他党の動向
公明党と新党「中道改革連合」を結成した立憲民主党も消費税減税を掲げており、衆院選では減税が主要な争点となる見通しです。公明党の西田実仁幹事長は、政府系投資ファンドを創設して財源を確保する案を示しており、各党の財源論争も注目されます。
政治資金改革の行方
「27年9月までに結論」
公約原案には、政治資金のあり方について「27年9月までに結論」を出すと明記されています。これは2024年に発覚した政治資金問題を受けた対応で、国民の政治不信を払拭する狙いがあります。
自民党は2024年の衆院選で、政策活動費について「将来的な廃止も念頭に政治資金制度改革に取り組む」と公約していましたが、野党からは「曖昧な表現だ」との批判を受けていました。今回、期限を設けたことで改革への本気度を示す狙いとみられます。
調査研究広報滞在費の改革
具体的には、調査研究広報滞在費(旧文通費)の使途を明確化し公開すること、未使用分を国庫返納すること、当選無効となった議員の歳費返納を義務付ける法改正などが盛り込まれる見通しです。
5本柱の公約
強い経済
高市首相は所信表明演説で「強い経済をつくる」と宣言しており、経済政策は公約の中核となります。物価高対策としての食料品消費税ゼロに加え、成長戦略や賃上げ促進策なども盛り込まれる見通しです。
地方の活性化
「日本列島を、強く豊かに」というスローガンには、単なる「日本」ではなく国土としての広がりを意識した意味が込められています。自民党の鈴木貴子広報本部長は「領土、領海、領空を皆様にも想像していただける」と説明しており、地方創生や安全保障を重視する姿勢が示されています。
外交・安全保障
高市首相は「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」と述べており、外交・安全保障政策も重点分野となります。日米同盟の強化や防衛力整備、経済安全保障などが含まれる見通しです。
社会保障
少子高齢化が進む中、社会保障制度の持続可能性は大きな課題です。年金・医療・介護の改革や子育て支援の充実などが盛り込まれるとみられます。
憲法改正
自民党と維新は、緊急事態条項について両党で起草協議会をつくり、2026年度中に条文案を国会に提出する目標を掲げています。公約には「緊急事態対応や自衛隊明記に関する条文案を起草し、改憲原案の作成、国会発議を行う」と明記される見通しです。
ただし、2024年の衆院選で「改憲勢力」が衆院の3分の2を失い、衆院憲法審査会長に立憲民主党の枝野幸男元代表が就任するなど、改憲を取り巻く環境は厳しくなっています。
選挙情勢と展望
高い支持率を背景に
高市内閣の支持率は、2025年10月の発足以来70%台を維持しています。特に20代から40代の若い世代の支持率が高く、「サナエ人気」とも呼ばれています。
現在、衆議院では自民党会派が199議席、連立を組む維新と合わせて233議席で過半数ラインぴったりです。高市首相としては、高い支持率を背景に議席の上積みを狙う考えとみられます。
戦後最短の選挙戦
1月23日召集の通常国会冒頭で衆議院を解散し、2月8日投開票となれば、解散から16日間の短期決戦となります。これは戦後最短だった2021年の17日間を下回る記録です。
野党側は準備期間が短いことから不利との見方もありますが、立憲民主党と公明党が結成した「中道改革連合」が与党への対抗軸を形成できるかが注目されます。
注意点と今後の見通し
公約の実現可能性
食料品消費税ゼロや議員定数削減など、有権者受けする政策が並ぶ一方、財源確保や選挙制度との整合性など課題も多くあります。選挙後にこれらの公約がどこまで実現されるかは不透明です。
連立政権の安定性
自民党と維新の連立は2025年10月に発足したばかりで、両党の政策調整が円滑に進むかどうかも今後の焦点です。特に憲法改正や社会保障制度改革では、両党の温度差が表面化する可能性もあります。
まとめ
自民党の衆院選公約原案は、議員定数1割削減と食料品消費税2年間ゼロを柱とし、連立パートナーである維新との合意内容を反映したものとなっています。5本柱として強い経済、地方の活性化、外交・安全保障、社会保障、憲法改正を掲げ、「日本列島を、強く豊かに」をスローガンに戦います。
高い支持率を背景に与党の勝利が予想される中、有権者にとっては各政策の実現可能性や財源論を見極めることが重要です。1月27日の公示、2月8日の投開票に向け、各党の政策論争に注目が集まります。
参考資料:
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