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by nicoxz

マツダがEV戦略車を2029年以降に延期、米欧市場の政策転換で

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はじめに

マツダは2026年1月16日、電気自動車(EV)の世界戦略車の販売時期を当初計画の2027年から2029年以降に延期することを明らかにしました。主力市場である米国や欧州でEV推進政策が見直され、普及が鈍化すると見込まれることが背景にあります。

この決定は、トランプ米政権によるEV購入補助金の廃止や、カリフォルニア州のゼロエミッション車(ZEV)販売義務撤回など、2025年以降に相次いだ政策転換を受けたものです。日本の自動車メーカーの中では、トヨタやホンダもEV戦略を軒並み修正しており、マツダの延期判断は業界全体のトレンドを反映しています。

本記事では、マツダのEV戦略延期の背景、米欧市場の政策変化、日本車メーカー全体のEV戦略見直しの動き、そして過渡期における自動車業界の展望について解説します。

マツダのEV戦略延期の詳細

当初計画と変更内容

マツダは2027年にEVの世界戦略車の販売を予定していました。この計画には、山口県での電池組み立て工場の新設も含まれており、2027年度の稼働を目指して準備が進められていました。具体的には、山口県岩国市の旭化成建材の岩国工場跡地を活用し、年間10ギガワット時の生産能力を持つ電池工場を建設する計画です。

しかし今回、EV戦略車の販売時期を2029年以降に延期することを決定しました。マツダは16日までに取引先にこの変更を伝えたとされています。この延期により、電池工場の稼働計画にも影響が出る可能性があります。

延期の理由

マツダが延期を決めた最大の理由は、主力市場の米国や欧州でEV推進の政策が見直され、普及が鈍化すると見込まれることです。需要に見合った計画に改めるため、当面は需要が高いハイブリッド車(HV)などに注力して、EV普及期までの過渡期を乗り切る方針です。

マツダのような年間販売台数約140万台規模の「スモールプレーヤー」にとって、市場の不確実性が高い中でEVへの大規模投資を進めることはリスクが大きすぎると判断したと考えられます。

米欧市場のEV政策転換

トランプ政権の「脱EV政策」

2025年1月に就任したトランプ米大統領は、バイデン前政権のEV推進政策を次々と撤回しました。最も大きな影響を与えたのは、2025年9月30日にEV購入補助を終了したことです。バイデン政権下で導入された、北米産EVを購入した場合に受けられる最大7,500ドルの税額控除が打ち切られました。

さらに、2026年度(2025年10月~2026年9月)予算法案には、以下の措置が盛り込まれました:

  • 新車・中古車・商用車購入者向けのEV税額控除の廃止
  • バッテリー生産に係る先進製造業向けの税額控除の段階的廃止と制限
  • EV登録料として1台当たり年間250ドル(ハイブリッド車は100ドル)の支払い義務

充電インフラ助成金の停止

米運輸省(DOT)は2025年2月12日、インフラ投資雇用法(IIJA)に基づいて開始されていたEV充電施設の設置向け助成金の拠出を停止しました。充電インフラの整備が遅れることで、EV普及のペースはさらに鈍化する見通しです。

カリフォルニア州ZEV義務の撤回

2025年6月12日、トランプ大統領はカリフォルニア州のZEV(ゼロエミッション車)販売義務撤回に署名しました。カリフォルニア州は全米で最もEV普及が進んでいた地域であり、この義務撤回は象徴的な意味を持ちます。

EV普及見通しの大幅下方修正

これらの政策変更により、市場調査機関は米国のEV普及見通しを大幅に下方修正しました。ブルームバーグNEFは2025年6月、2030年時点における米国のライトビークル販売に占めるEVの割合が27%にとどまるとの見通しを示し、2024年時点の予測値48%から大幅に引き下げました。

また、アリックス・パートナーズは、米国の新車販売に占めるEVとPHVの比率は2030年に前政権の目標の半分の23%にとどまると予想しています。

日本車メーカー全体のEV戦略見直し

トヨタのマルチパスウェイ堅持

トヨタは2026年にバッテリーEV100万台という目標を事実上軌道修正し、佐藤恒治社長が「市場の実需を重視する」として、マルチパスウェイ(多様な電動化技術の並行展開)という考え方を堅持することを説明しています。

2026年3月期の業績見通しでは、電動化率49.8%のうち、HEV(ハイブリッド車)が466万3,000台と最も多く、バッテリーEVは31万台にとどまる見込みです。トヨタは2026年には固体電池を先行搭載したハイブリッド車を投入し、エネルギー密度と充放電速度を大幅に改善する計画です。

ホンダの大幅な目標引き下げ

ホンダは2030年度までにEV関連に10兆円投資する目標を7兆円に引き下げ、同時に30年度のEV販売目標計画も200万台から75万台程度に落としました。EV戦略の見直しを受けて、ホンダはハイブリッド車の強化に軸足を移し、2024年12月に新型ハイブリッド技術を公表し、2020年代後半から市場投入する方針を示しています。

一方で、ホンダは2040年のEV・FCV販売比率100%達成に向け、まったく新しいEVシリーズ「Honda 0(ゼロ)シリーズ」を2026年からグローバルで展開する計画も進めています。

日産の全固体電池開発継続

日産は2028年度を目標に、自社開発の全固体電池の実用化を目指しており、現在は横浜工場内に設置した試作生産ラインで開発を加速させています。日産はEV戦略を大きく変更せず、技術開発を継続する方針です。

ハイブリッド車の再評価

EVの代替・補完としてハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)が世界的に再評価されています。トヨタをはじめとする日本メーカーが得意とするHEVは、燃費性能と価格のバランスに優れ、世界的に販売を伸ばしました。

2026年以降のEVは単なる「普及」だけでなく、ハイブリッド車(HV)を含む「多様化」が進むと予測されます。

注意点と今後の展望

スモールプレーヤーの戦略課題

マツダのような年間販売台数約140万台規模のスモールプレーヤーにとって、EV開発には莫大な投資が必要です。電池工場の建設、EV専用プラットフォームの開発、充電インフラへの対応など、資金力で勝る大手メーカーとの競争は厳しいものがあります。

マツダは「ライトアセット戦略」を公表しており、既存資産を最大限活用しながら電動化を進める方針です。無理にEV化を急ぐのではなく、市場の実需に合わせて柔軟に対応することが、スモールプレーヤーの生き残り戦略となります。

政策の不確実性

米国のEV政策は政権交代によって大きく変動することが明らかになりました。2028年の大統領選挙で政権が再び交代すれば、EV推進政策が復活する可能性もあります。自動車メーカーは、こうした政策の不確実性を織り込んだ柔軟な戦略が求められます。

欧州でも、2035年のガソリン車販売禁止の目標に対して、一部の国や自動車メーカーから見直しを求める声が出ています。政策の方向性が固まるまで、各社は様子見の姿勢を強めています。

技術開発は継続

EV戦略を延期するとはいえ、技術開発を止めるわけではありません。マツダの電池工場計画は継続されており、トヨタの固体電池、日産の全固体電池など、次世代技術の開発は各社とも進めています。

市場が本格的にEVにシフトする時期が来たときに、技術的な優位性を確保しておくことが重要です。延期はあくまで「時期の調整」であり、「EV化の放棄」ではありません。

ハイブリッド車の戦略的重要性

当面の過渡期において、ハイブリッド車は日本メーカーの強みを活かせる重要な市場セグメントです。燃費性能、価格、航続距離、充電インフラの不要性など、ハイブリッド車には消費者にとって魅力的な要素が多くあります。

マツダがハイブリッド車に注力する戦略は、市場の実需に合致しており、収益性の確保と技術開発資金の確保の両立を可能にします。

まとめ

マツダのEV戦略車の販売延期は、米欧市場におけるEV政策の大幅な転換を受けた現実的な判断です。トランプ政権によるEV補助金廃止、充電インフラ助成金の停止、カリフォルニア州ZEV義務の撤回など、2025年以降の政策変更により、EV普及見通しは大幅に下方修正されました。

トヨタやホンダも同様にEV戦略を見直しており、日本の自動車メーカーは市場の実需に合わせて柔軟に対応する姿勢を強めています。当面はハイブリッド車に注力しながら、次世代電池技術の開発を継続し、市場が本格的にEVにシフトする時期に備える戦略が主流となっています。

スモールプレーヤーであるマツダにとって、無理なEV投資で経営を圧迫するよりも、収益性を確保しながら技術開発を進める「ライトアセット戦略」は合理的な選択です。政策の不確実性が高い中、2029年以降という柔軟な販売時期設定により、市場環境の変化に対応できる余地を残しています。

参考資料:

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