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by nicoxz

ステランティス4兆円損失、EV戦略の逆回転

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はじめに

欧州自動車大手ステランティスは2026年2月6日、2025年12月期決算で222億ユーロ(約4兆円)の損失を計上すると発表しました。電気自動車(EV)需要が想定を大幅に下回ったことを受け、EV関連投資の大規模な減損処理と事業再編に踏み切ったものです。

アントニオ・フィローサCEOは「エネルギー転換のペースを過大評価していた」と率直に認めました。この発表を受けてステランティスの株価は一時27%急落し、5年超ぶりの安値を記録しています。フォードの195億ドル、GMの71億ドルと合わせると、デトロイト3社のEV関連損失は計530億ドル(約8兆円)に達しました。急ぎすぎたEVシフトの「逆回転」が鮮明になっています。

222億ユーロの損失の内訳

米国事業が損失の3分の2を占める

222億ユーロの損失のうち、約147億ユーロ(全体の3分の2)は米国事業で発生しました。トランプ政権がEV購入時の7,500ドルの連邦税額控除を廃止したことが大きな引き金です。2025年10月にはEV販売台数が前月比24%急減し、同年第4四半期のEV販売は前年同期比36%も落ち込みました。

ステランティスは米国で電動ピックアップトラック「ラム」のフルEVモデルの計画を中止し、プラグインハイブリッド仕様のジープやクライスラーモデルも打ち切りました。EV生産全体の縮小も実施しています。

損失の主な構成要素

損失の内訳は多岐にわたります。約150億ユーロは、米国における製品開発計画の見直しに伴う減損です。EV製品への期待値を大幅に引き下げ、顧客の実際の需要に合わせた車種構成への転換コストが含まれます。

そのほか、EVサプライチェーンの縮小に伴う費用、製品品質問題に起因する保証引当金の見直し、欧州における人員削減費用なども計上されています。約65億ユーロは2026年から4年間にわたる現金支出として発生する見通しです。

EV戦略からの方向転換

「需要主導」への転換宣言

フィローサCEOは戦略転換の方針を明確に打ち出しました。今後の電動化は「コマンド(命令)ではなくデマンド(需要)に基づくペースで進める」という方針です。EVの開発は継続するものの、ハイブリッド車(HV)やエンジン車への投資も同時に強化します。

「Freedom of Choice」戦略

ステランティスは新たに「Freedom of Choice(選択の自由)」戦略を掲げています。EV一辺倒ではなく、レンジエクステンダーEV(EREV)やマイルドハイブリッドなど、多様なパワートレインを顧客に提供する「テクノロジー・アグノスティック(技術中立)」な企業を目指す方針です。

具体的には、ラムのピックアップトラックにV8エンジンを復活させるほか、ジープ・チェロキーの新型にはマイルドハイブリッドを搭載します。EV性能を求めつつも「航続距離不安(レンジアンクザイエティ)」を抱える顧客層をEREVで取り込む戦略です。

バッテリー合弁事業の清算

ステランティスはカナダにおけるLGエナジーソリューションとのEVバッテリー合弁事業の持ち分49%を売却することにも合意しました。フォードも韓国SKグループとのバッテリー合弁事業(60億ドル規模)を解消しており、欧米メーカーによるバッテリー内製化の動きが後退しています。

欧米自動車業界全体で「EV撤退」の波

デトロイト3社の損失合計530億ドル

ステランティスの損失は単独の事象ではなく、欧米自動車業界全体の構造的な問題の表れです。フォードは195億ドル、GMは71億ドルのEV関連減損・リストラ費用を計上しています。3社合計で530億ドル(約8兆円)という巨額の損失は、EV移行戦略の根本的な見直しを象徴しています。

フォードはフルEV仕様のF-150ライトニングの開発を中止し、計画していた電動トラック「T3」も白紙撤回しました。GMもEV事業の大幅な縮小を進めています。

なぜ欧米メーカーはEVで失敗したのか

欧米メーカーがEV戦略で躓いた要因は複合的です。第一に、EV需要の成長ペースを過大に見積もったことがあります。特に米国では、充電インフラの不足や車両価格の高さから、消費者のEV移行は予想より緩やかでした。

第二に、中国メーカーとの価格競争に勝てなかったことです。BYDやNIOなどの中国勢は、バッテリーのコスト優位性を武器に低価格EVを投入し、世界市場でシェアを拡大しています。欧米メーカーの高コスト体質では太刀打ちできませんでした。

第三に、トランプ政権によるEV支援策の撤廃という政策変更も追い打ちをかけました。連邦税額控除の廃止と排出規制の緩和により、消費者のEV購入インセンティブが大幅に低下しています。

注意点・展望

今回の大規模損失は「一時的な費用計上」であり、ステランティスの事業そのものが直ちに存亡の危機に陥るわけではありません。同社は2026年の売上高を1桁台半ばの伸び、調整後営業利益率を1桁台前半と見込んでおり、回復への道筋を示しています。

ただし、EV市場を中国メーカーに奪われた穴を、HVやEREVでどこまで埋められるかは不透明です。欧州では排出規制が依然として厳しく、EV販売比率を一定以上に保つ必要があります。「EVからの撤退」と「規制対応」の間でバランスを取ることが、フィローサCEOの最大の課題です。

また、フォルクスワーゲンやポルシェも35億ドルのEV関連損失を計上しており、欧州メーカー全体が同様の苦境に立たされています。中国勢との競争力格差がさらに広がるリスクも看過できません。

まとめ

ステランティスの222億ユーロ(約4兆円)の損失計上は、欧米自動車業界が進めてきた「急速なEVシフト」の行き詰まりを象徴する出来事です。フォード、GMと合わせた530億ドルの損失は、需要を無視した供給サイド主導の戦略の限界を示しています。

各社はHVやEREVへの回帰を進めていますが、中国メーカーとの競争や欧州の排出規制への対応など、課題は山積しています。自動車産業の電動化は止まるわけではありませんが、そのペースと方法論は大きく修正されることになりそうです。

参考資料:

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