マツダが5年ぶり赤字、米関税の打撃と回復の兆し
はじめに
マツダが2026年2月10日に発表した2025年4〜12月期の連結決算は、最終損益が147億円の赤字となりました。前年同期の905億円の黒字から一転し、同期間での赤字は5年ぶりです。
最大の要因は米国の関税政策による影響です。しかし、事前の市場予想(320億円の赤字)を大幅に上回ったほか、直近の10〜12月期には営業利益308億円を計上して黒字に転換するなど、回復の兆しも見えています。この記事では、マツダの業績悪化の背景と今後の回復戦略を詳しく解説します。
米関税がもたらした業績への打撃
1192億円の減益インパクト
マツダの業績悪化の最大の要因は、米国の関税政策です。日本から輸出する自動車・部品に対する15%の関税、メキシコからの輸出分に対する25%の関税が、2025年4〜12月期の営業利益に対して1192億円もの減益要因となりました。
この関税負担は、マツダの事業構造にとって特に深刻です。マツダは国内生産比率が高く、日本の工場から北米市場へ輸出するモデルが多いためです。トヨタやホンダのように北米での現地生産比率が高いメーカーと比べると、関税の影響を受けやすい体質にあります。
売上高は前年同期比5%減の3兆5014億円、営業損益は231億円の赤字(前年同期は1482億円の黒字)となり、収益構造の大幅な悪化が数字に表れています。
メキシコ生産の抑制と世界販売の減少
関税の影響を和らげるため、マツダはメキシコでの生産を抑制する対応を取りました。メキシコから米国への輸出に25%の関税がかかるため、収益性が大幅に悪化するモデルの出荷を調整したのです。
この結果、世界全体の販売台数も減少しました。米国市場では関税の影響が直接的に表れ、2025年1月の米国販売は14%減と苦戦が続いています。大型SUVのCX-70やCX-90の販売も伸び悩み、特にCX-70は29%減と厳しい数字です。
10〜12月期の黒字転換が示す回復の兆し
3四半期ぶりの営業黒字
業績全体では厳しい状況が続くものの、直近の10〜12月期(第3四半期)には明るい兆しが見えています。同期間の営業利益は308億円、純利益は306億円と、いずれも3四半期ぶりに黒字を確保しました。
この黒字転換は、マツダが進めてきた関税対策の効果が表れ始めたことを示しています。仕向け地の変更やコスト削減、米国アラバマ工場の稼働率引き上げなど、複合的な施策が成果を出し始めました。
アラバマ工場の戦略的活用
マツダの関税対策の柱のひとつが、米国アラバマ州にある生産拠点「MTM」(マツダトヨタマニュファクチャリング)の最大限の活用です。アラバマ工場ではCX-50を生産しており、米国内で生産することで関税の影響を回避できます。
マツダはアラバマ工場の稼働率をさらに引き上げ、ハイブリッドモデルを含むCX-50の拡販を図る方針です。また、メキシコで生産していた一部モデルの日本への生産移管も検討しており、生産体制の最適化を急いでいます。
市場予想を上回った要因
最終赤字147億円は、事前の市場予想(QUICKコンセンサス、320億円の赤字)を大幅に上回りました。10日午後1時半の決算会見を受けて、マツダの株価は一時上昇する場面もありました。
この「予想より良い」結果は、関税対策のコスト削減効果が想定以上に早く表れたことに加え、為替の円安が一定程度寄与したものと考えられます。
注意点・展望
マツダの2025年度通期では、関税負担は1452億円の減益要因になると見込まれています。日本とメキシコからの輸出に対する関税率を前提に試算すると、影響額は2333億円に上りますが、仕向け地変更やアラバマ工場の活用などで1452億円まで抑える計画です。
通期のグローバル販売台数は前年度から3000台減の130万台を目標としており、米国市場では8%減の40万台を見込んでいます。関税を巡る米国の政策動向次第では、さらなる計画修正の可能性も残されています。
自動車業界全体では、日系メーカー6社が関税影響の見通しを公表しており、業界全体で生産拠点の再配置が進んでいます。マツダに限らず、グローバルなサプライチェーンの再構築は中長期的な課題として続くでしょう。
新型CX-5の投入による台数構成の改善や、電動化モデルの展開も、下期以降の収益回復を左右する重要な要素です。マツダが掲げる下期1000億円規模の営業黒字目標の達成には、こうした複合的な施策の成否がかかっています。
まとめ
マツダの2025年4〜12月期は最終赤字147億円と厳しい結果となりましたが、市場予想を上回り、10〜12月期には黒字転換を果たすなど、回復の兆しも明確です。米関税という外的要因への対応として、アラバマ工場の活用や生産体制の最適化を進めています。
今後は関税政策の動向を注視しつつ、新型モデルの投入や生産拠点の再配置を通じた収益力の回復が焦点となります。自動車業界全体が直面する関税リスクの中で、マツダがどのように競争力を維持していくか注目されます。
参考資料:
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