医療費控除は家族合算がお得!マイナポータル活用術
はじめに
確定申告の時期が近づいてきました。2026年(令和7年分)の確定申告期間は、2026年2月16日(月)から3月16日(月)までです。年間の医療費が多かった方は、医療費控除の申告を検討する価値があります。
医療費控除は、自分だけでなく家族の医療費も合算して申告できることをご存知でしょうか。さらに、マイナポータルを活用すれば、医療費データを一括で取得でき、確定申告の手間を大幅に削減できます。
この記事では、医療費控除の基本から家族合算のメリット、マイナポータル連携の具体的な手順まで詳しく解説します。
医療費控除の基本を理解する
医療費控除とは
医療費控除は、1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得から控除できる制度です。年末調整では申告できないため、確定申告が必要となります。
控除を受けるための条件は、年間の医療費が10万円を超えることです。ただし、総所得金額が200万円未満の方は、総所得金額の5%を超えた金額が控除対象となります。控除の上限額は200万円です。
医療費控除の計算方法
医療費控除額は以下の計算式で求めます。
医療費控除額 = 支払った医療費の合計額 − 保険金などで補てんされる金額 − 10万円(または総所得金額の5%)
たとえば、年間の医療費が25万円で、保険金の補てんがなかった場合、25万円 − 10万円 = 15万円が控除額となります。所得税率が20%の方であれば、15万円 × 20% = 3万円の税金が還付される計算です。
対象となる医療費
医療費控除の対象となる費用は幅広く設定されています。病院での診療費や治療費はもちろん、処方薬の購入費、入院費、通院のための交通費なども含まれます。また、歯科治療(自由診療を含む)、出産費用、介護保険サービスの一部も対象です。
一方で、美容整形や健康診断(病気が見つからなかった場合)、予防接種などは対象外となります。
家族合算で申告するメリット
「生計を一にする」家族なら合算可能
医療費控除は「自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費」が対象となります。つまり、家族の医療費を合算して申告できるのです。
「生計を一にする」とは、必ずしも同居している必要はありません。学生の子どもに仕送りをしている場合や、離れて暮らす親に生活費を送っている場合も該当します。共働き夫婦で別々に収入がある場合でも、同一生計であれば合算が可能です。
合算のメリットは2つある
家族の医療費を合算するメリットは主に2つあります。
1つ目は「10万円の足切り」をクリアしやすくなることです。個人では10万円に届かない医療費でも、家族全員分を合計すれば10万円を超えるケースは多くあります。
2つ目は「所得税の累進税率」を活用できることです。日本の所得税は累進課税で、所得が高いほど税率も高くなります。同じ控除額でも、税率の高い人が申告した方が還付額は大きくなります。
誰が申告すべきか
家族の医療費を合算する場合、原則として所得の高い人が申告するのが有利です。ただし、所得の高い人の税率と、控除額のバランスによっては、別の家族が申告した方が得になるケースもあります。
たとえば、夫の年収が高く所得税率が23%、妻の所得税率が10%の場合、通常は夫が申告します。しかし、夫の医療費控除額が少なく、妻の医療費が多い場合は、それぞれで申告した方が有利になることもあります。
マイナポータル連携で医療費データを一括取得
マイナポータル連携とは
マイナポータル連携とは、確定申告の際にマイナポータル経由で各種データを一括取得し、申告書に自動入力できる機能です。令和6年分の確定申告では310万人が利用しており、年々利用者が増加しています。
医療費通知情報のほか、給与所得の源泉徴収票、ふるさと納税の寄付金控除証明書なども取得できます。領収書を集めたり、金額を集計したりする手間が省けるのが大きなメリットです。
医療費通知情報の取得時期
確定申告に使用する1年分の医療費通知情報(XMLデータ)は、例年2月9日頃から取得可能となります。申告年分の1月から12月までの医療費データが一括で取得できます。
なお、通常は毎月11日に前々月の診療分が更新されますが、確定申告用の年間データは2月9日以降に取得することをおすすめします。
自動入力の対象と対象外
マイナポータル連携で自動入力されるのは、保険診療分の医療費です。自動入力されたデータについては、領収書の保存義務がありません。
ただし、以下の医療費は自動入力の対象外となります。
- 自由診療(自費診療)の費用
- はり・きゅう等の施術費用
- 整骨院・接骨院の柔道整復療養費
- ドラッグストアで購入した医薬品
- 通院のための交通費
これらの費用は、別途手入力で追加し、領収書を5年間保存する必要があります。
家族分の医療費データを取得する方法
代理人登録の手順
マイナポータルで取得できる医療費通知情報は、初期設定では本人分のみです。家族分も取得するには、マイナポータルで「代理人登録」を行う必要があります。
手順は以下のとおりです。
- 確定申告をする方(代理人)と家族(委任者)の両方のマイナンバーカードを用意
- 家族のマイナポータルにログインし、代理人設定を行う
- 「医療費通知情報サービス」「確定申告への医療費通知情報提供」の委任設定をオンにする
- 確定申告をする方のマイナポータルで、委任を受諾する
この設定は一度行えば翌年以降も有効です。ただし、家族全員がマイナンバーカードを取得していることが前提となります。
確定申告書等作成コーナーでの操作
代理人登録が完了したら、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」でマイナポータル連携を行います。自分と家族の医療費データが自動で取り込まれ、医療費控除の明細書と確定申告書に反映されます。
取り込んだデータは内容を確認し、自由診療分や交通費など、自動入力されなかった医療費を手動で追加します。
セルフメディケーション税制との比較
セルフメディケーション税制とは
セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例として設けられた制度です。ドラッグストアで購入した特定の市販薬(スイッチOTC医薬品)の購入費が年間12,000円を超えた場合に、控除を受けられます。
控除の上限額は88,000円で、通常の医療費控除(上限200万円)と比べると小さいですが、適用のハードルが低いのが特徴です。
どちらを選ぶべきか
医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか一方しか選択できません。両方の条件を満たす場合は、控除額が大きい方を選ぶのが基本です。
目安として、市販薬の購入額が年間10万円未満で、病院での自己負担も少ない場合は、セルフメディケーション税制が有利になる可能性があります。一方、市販薬と病院での支払いの合計が年間188,000円を超える場合は、通常の医療費控除を選んだ方が得になります。
セルフメディケーション税制の注意点
セルフメディケーション税制を利用するには、その年に健康診断や予防接種などの「健康の保持増進への取組」を行っていることが条件です。会社の健康診断を受けていれば、この条件を満たします。
また、対象となる市販薬はすべての医薬品ではなく、スイッチOTC医薬品として指定されたものに限られます。レシートに「セルフメディケーション税制対象」と記載があるかどうかで確認できます。
確定申告の注意点と手続きのコツ
還付申告は1月1日から可能
医療費控除による税金の還付を受ける場合、確定申告期間(2月16日〜)を待つ必要はありません。還付申告は対象年の翌年1月1日から提出できます。早めに提出すれば、その分早く還付金を受け取れます。
また、還付申告は5年間有効です。過去に医療費控除の申告を忘れていた方も、5年以内であれば遡って申告できます。
e-Taxの活用がおすすめ
確定申告はe-Tax(電子申告)で行うのがおすすめです。マイナポータル連携もe-Taxで利用でき、書類の郵送や税務署への持参が不要になります。
e-Taxでの申告受付は、2026年1月5日(月)から開始予定です。マイナンバーカードとスマートフォン(またはICカードリーダー)があれば、自宅から申告を完了できます。
領収書の保存について
マイナポータル連携で取得した医療費については、領収書の保存義務がありません。ただし、自由診療や交通費など、手入力で追加した医療費については、領収書を5年間保存する必要があります。
領収書の提出は不要ですが、税務署から確認を求められた場合に備えて、きちんと保管しておきましょう。
まとめ
医療費控除は、家族分を合算することで10万円の足切りをクリアしやすくなり、所得の高い人が申告することで還付額を最大化できます。マイナポータル連携を活用すれば、医療費データの収集や入力の手間を大幅に削減できます。
2026年(令和7年分)の確定申告を控え、今のうちに以下の準備を進めておくことをおすすめします。
- マイナンバーカードの取得(本人と家族全員)
- マイナポータルでの代理人登録
- 自由診療や交通費の領収書の整理
還付申告は1月1日から可能です。早めに準備を整え、スムーズな確定申告を目指しましょう。
参考資料:
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