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by nicoxz

診療報酬改定で初診・再診料を引き上げ、物価高に対応

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はじめに

中央社会保険医療協議会(中医協)は2026年2月13日、2026年度の診療報酬改定に伴う個別サービスの見直し内容を答申しました。物価高騰への対応として初診料に20円、再診料に30円を上乗せするほか、医療従事者の賃上げ原資となる報酬も引き上げます。施行は2026年6月からです。

診療報酬本体の改定率は3.09%で、3%を超える引き上げは1994年度以来、約30年ぶりの高水準となります。医療機関の経営改善と従事者の処遇向上を図る一方で、患者負担の増加にもつながるため、その内容と影響を正確に理解しておくことが重要です。

改定の柱は「物価対応」と「賃上げ」

物価対応料の新設

今回の改定の大きな特徴は、物価高騰に対応するための「物価対応料」が新設された点です。2026年度と2027年度の物価上昇を見据えた措置で、段階的に引き上げる設計となっています。

外来・在宅物価対応料は初診時に2点(20円)が加算されます。入院についても物価対応料が設定され、急性期一般入院料1では58点(580円)が上乗せされます。これらの点数は2027年度にはさらに2倍に引き上げられる方針です。

診療報酬は1点=10円で計算されるため、外来の初診で20円、入院では1日あたり数百円の増額となります。個人の窓口負担は保険の自己負担割合に応じて、この一部を支払うことになります。

賃上げへの対応

医療従事者の賃上げについても大幅な拡充が行われます。外来・在宅ベースアップ評価料(I)は、現行の初診時6点から17点へと約3倍に引き上げられます。継続的に賃上げを実施する施設に対しては23点まで加算される仕組みです。

入院ベースアップ評価料も大幅に拡充され、最大250点まで引き上げられます。対象となる職員の範囲も「当該医療機関に勤務する職員」へと拡大され、より多くの医療従事者が賃上げの恩恵を受けられるようになります。

30年ぶりの高水準改定の背景

医療機関の経営難

今回の大幅改定の背景には、医療機関を取り巻く厳しい経営環境があります。近年の物価高騰は、光熱費、医療材料、食材費など医療機関の運営コストを大きく押し上げています。

さらに、他産業での賃上げが進む中、医療業界の賃金水準が相対的に低下し、看護師をはじめとする医療従事者の人材確保が困難になっています。診療報酬は公定価格であるため、医療機関が自らの判断で価格を引き上げることはできず、改定を通じた対応が不可欠でした。

2年連続改定の異例措置

今回の改定では、2026年度だけでなく2027年度の物価上昇も見据えた設計がなされています。2026年度の本体改定率は2.41%、2027年度はさらに3.77%への引き上げが予定されています。物価・人件費の継続的な上昇に対応するため、2年分の改定を一度に決定するという異例の措置が取られました。

患者負担と医療費への影響

窓口負担の変化

診療報酬の引き上げは、患者の窓口負担にも直接影響します。現役世代(3割負担)の場合、初診料の引き上げ分は窓口で数円から十数円の増額となります。1回の受診で見れば少額ですが、頻繁に通院する慢性疾患の患者にとっては年間で数千円単位の負担増となる可能性があります。

ただし、薬価は0.8%引き下げられるため、処方薬の自己負担は若干軽減される見込みです。両方を合わせた実質的な負担の変化は、受診パターンや処方内容によって異なります。

保険料と国費への影響

マクロの視点では、全体改定率は約2.22%のプラスとなり、国費を1300億円弱押し上げます。医療費全体で2%の上昇は、現役世代の保険料負担を約5000億円押し上げると試算されています。

医療費の増加は社会保障費の膨張につながるため、持続可能な医療保険制度を維持するための財源確保が引き続き課題となります。

注意点・展望

今回の改定では医療従事者の処遇改善が大きな柱となっていますが、引き上げ分が実際に賃上げに充てられるかどうかは各医療機関の判断に委ねられる部分もあります。ベースアップ評価料は届出制のため、届出を行わない施設では加算されません。

今後の見通しとしては、2027年度にさらなる引き上げが予定されており、物価動向次第ではさらなる改定が必要になる可能性もあります。また、病院の機能分化の推進や地域医療構想との連動など、改定に伴う医療提供体制の再編も注視すべきポイントです。

まとめ

2026年度の診療報酬改定は、物価対応料の新設と賃上げ評価料の大幅拡充を柱とする30年ぶりの高水準改定です。6月からの施行により、医療機関の経営改善と従事者の処遇向上が期待されます。

一方で、患者の窓口負担や保険料の増加は避けられず、医療費全体の膨張にもつながります。自身の受診パターンへの影響を確認するとともに、かかりつけ医の活用など効率的な受診行動を心がけることが重要です。

参考資料:

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