半導体メモリー争奪戦、AI需要でPC・スマホに供給危機
はじめに
2026年の半導体市場は、メモリーの奪い合いが最大の焦点となっています。生成AI(人工知能)向けの需要が急増し、高帯域幅メモリー(HBM)だけでなく汎用メモリーまで逼迫する事態に発展しています。
韓国サムスン電子は2025年10〜12月期に過去最高の営業利益を記録し、メモリー市場の好況を象徴しています。しかし、AI向けに生産リソースが集中する結果、スマートフォンやパソコン、自動車など一般消費者向け製品の生産に支障が出る恐れも出てきました。
サムスン電子の好決算
過去最高の営業利益
サムスン電子が2026年1月8日に発表した2025年10〜12月期の連結決算速報値によると、営業利益は前年同期比約3倍の20兆ウォン(約2兆2000億円)に達しました。売上高も23%増の93兆ウォンで、いずれも過去最高を更新しています。
好調の主因は、全社売上高の約4割を占める半導体部門です。生成AIへの活発な投資により、データセンター向けメモリー半導体の価格が上昇したことが寄与しました。
メモリー事業の構造
サムスンの利益の50〜70%は半導体事業によるものです。特にHBM(High Bandwidth Memory)やDDR5などの先端メモリーの販売拡大が、2025年第4四半期として過去最高の半導体部門売上高を達成する原動力となりました。
HBM(高帯域幅メモリー)とは
AI時代の必須部品
HBM(High Bandwidth Memory)は、非常に高い帯域幅(データ転送速度)を持つDRAMです。従来のDDRタイプのDRAMと比較して、HBM第2世代では帯域幅254ギガバイト/秒という高い伝送速度を実現しています。
AIアクセラレータにとってHBMは不可欠な部品です。AIモデルが学習や推論に必要な巨大なデータセットを処理するためには、高速なデータ転送が求められるためです。
需要の急増
NVIDIAのAI半導体をはじめ、データセンター向けの高性能計算機器にはHBMが搭載されています。生成AIの普及に伴い、HBMの需要は急速に拡大しています。
メモリー争奪戦の実態
大手3社の寡占
世界のメモリー市場は、韓国サムスン電子、SKハイニックス、米マイクロン・テクノロジーの3社が事実上寡占しています。これらの企業はいずれも、利益率の高いAI向けHBMの増産に経営資源を集中させています。
2026年分がすでに完売
SKハイニックスは2026年分のHBMがすでに完売したと発表しています。サムスン電子もサーバー向けDRAM契約価格を2025年9月比で最大60%引き上げました。マイクロンも2026年のHBMの大半をAI企業向けに割り当てる方針を示しています。
スターゲート計画の影響
OpenAIの大規模AIデータセンター「スターゲート」プロジェクトが供給逼迫を一段と強めています。OpenAIはサムスン電子およびSKハイニックスと、月90万枚規模のDRAMウエハー供給について協議しており、SKグループは「これは世界のHBM生産量の約2倍に相当する」と述べています。
汎用メモリーへの波及
PCやスマホ向けが後回しに
大手メモリーメーカーがAI向けHBMの増産に注力する結果、PCやスマートフォン、一般サーバー向けの「汎用メモリー」の生産ラインは後回しにされています。市場全体で供給不足が慢性化する状況です。
価格高騰の実態
DDR4型8ギガビット品のスポット価格は、2025年末比で6倍超に達しました。2026年にはさらなる価格上昇が予測されており、最も厳しいのは2026年前半とみられています。
消費者への影響
メモリー不足と価格高騰は、PCやスマートフォン、自動車など幅広い産業に波及します。専門家は2026年を「PCやスマートフォンにとって冬が到来する年」と表現し、「待てるなら2027年まで待つのが得策」との見方も出ています。
供給正常化の見通し
2027〜2028年頃か
S&Pグローバル・レーティングは、メモリーの供給逼迫は2026年まで続く可能性が高く、正常化は2027〜2028年頃と予測しています。
大手メモリモジュールサプライヤーであるTeamGroupは、2026年前半には供給がさらに逼迫すると予測し、この不足は2027年まで続く見込みとしています。
新規投資の遅れ
メモリー工場の建設には長い時間がかかります。現在の需要急増に対応するための新規投資は進められていますが、供給増加が実現するまでには数年を要します。
産業界への影響
自動車産業
電気自動車(EV)や先進運転支援システム(ADAS)の普及により、自動車に搭載されるメモリー量は増加傾向にあります。メモリー不足が深刻化すれば、自動車生産にも影響が及ぶ可能性があります。
PC・スマートフォン市場
2026年はWindows 10のサポート終了に伴うPC買い替え需要が見込まれています。しかし、メモリー価格の高騰により、PCの価格上昇や供給不足が起きる恐れがあります。
データセンター以外のIT機器
サーバーやストレージなど、AI以外のIT機器にもメモリーは使用されています。AI向けに優先的に供給が行われる中、これらの機器の調達にも影響が出る可能性があります。
今後の展望
AI需要の持続性
生成AIの普及は今後も続くと予測されており、HBMをはじめとするAI向けメモリーの需要は中長期的に高止まりする見通しです。メモリーメーカーにとっては好況が続く一方、需要と供給のバランスは当面不安定な状態が続きます。
技術革新の行方
HBM4など次世代製品の開発も進んでいます。技術革新により性能向上と生産効率の改善が実現すれば、供給制約の緩和につながる可能性があります。
まとめ
2026年の半導体市場は、AI向けHBM需要の急増によるメモリー争奪戦が最大のテーマです。サムスン電子は過去最高益を記録し、メモリーメーカーの業績は好調ですが、その裏でPCやスマートフォン向けの汎用メモリーが不足し、価格高騰が進んでいます。
供給正常化は2027〜2028年頃と予測されており、消費者や企業は当面、メモリー不足と価格上昇に対応する必要があります。AI時代の恩恵と代償が、半導体市場で同時に表れている状況です。
参考資料:
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