三菱UFJがiDeCo刷新、eMAXIS Slim中心の新コース
はじめに
三菱UFJフィナンシャル・グループが、個人型確定拠出年金(iDeCo)の商品ラインナップを大幅に刷新する方針を打ち出しました。低コストのインデックスファンド「eMAXIS Slim」シリーズを中心に据えた新コースを設立し、信託報酬の単純平均を0.32%に抑える計画です。
この動きの背景には、2027年1月に予定されているiDeCoの大規模な制度拡充があります。拠出限度額の大幅な引き上げや加入可能年齢の拡大により、新たな加入者の急増が見込まれています。メガバンクとして、この需要を確実に取り込むための布石といえます。
本記事では、三菱UFJの新コースの特徴、2027年のiDeCo制度改正の全体像、そしてネット証券との競争環境について詳しく解説します。
eMAXIS Slimを軸にした新コースの狙い
業界最低水準のコスト追求
eMAXIS Slimシリーズは、「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続ける」というコンセプトを掲げた投資信託です。三菱UFJアセットマネジメントが運用しており、競合ファンドが信託報酬を引き下げた場合には追随して値下げを行う方針を明確にしています。
代表的な商品の信託報酬は以下の通りです。eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)は年率0.05775%(税込)、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)は年率0.09372%(税込)です。いずれも同カテゴリーのファンドの中で最安水準に位置しています。
新コースではこれらのファンドを中心にラインナップを構成し、信託報酬の単純平均を0.32%とする方針です。これは主要な運営管理機関と比較しても競争力のある水準となります。
受益者還元型信託報酬の仕組み
eMAXIS Slimシリーズの特徴の一つが「受益者還元型信託報酬率」です。これはファンドの純資産総額が一定額を超えた部分に対して、段階的に低い信託報酬率が適用される仕組みです。
eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)は、2026年1月時点で純資産総額が約9兆7,528億円に達しています。資産規模が拡大するほど実質的なコストが下がるため、長期投資家にとって大きなメリットがあります。
銀行系iDeCoの課題と改善
これまで三菱UFJ銀行のiDeCoは「標準コース」(33本)と「ライトコース」の2種類を提供してきました。しかし、ネット証券と比較するとラインナップの魅力やコスト面で見劣りする部分がありました。
新コースの設立は、この課題を解消するための施策です。グループ内のeMAXIS Slimシリーズを最大限に活用することで、コスト面でネット証券に対抗できる商品構成を実現する狙いがあります。
2027年iDeCo制度改正の全体像
拠出限度額の大幅引き上げ
2027年1月から、iDeCoの拠出限度額が大幅に引き上げられます。最も影響が大きいのは、企業年金に加入していない会社員(第2号被保険者)です。現行の月額23,000円から月額62,000円へと、約2.7倍に拡大します。
自営業者(第1号被保険者)も、国民年金基金との合算上限が月額68,000円から75,000円に引き上げられます。一方、第3号被保険者(専業主婦・主夫)は月額23,000円のまま据え置きとなります。
この変更により、年間の拠出額は最大で744,000円(月額62,000円×12カ月)となります。所得控除による節税効果も大幅に拡大するため、高所得者層を中心に新規加入の増加が見込まれます。
加入可能年齢の70歳未満への拡大
現行制度では65歳未満が加入上限ですが、2027年1月からは70歳未満に引き上げられます。老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金をまだ受け取っていなければ、定年退職後も積立を継続できます。
人生100年時代において、60代後半でも資産形成を続けられる環境が整うことは大きな前進です。特に再雇用や嘱託勤務で働き続ける方にとっては、老後資金の上積みに有効な手段となります。
退職所得控除のルール変更に注意
2026年1月からは、退職金とiDeCoの一時金にそれぞれ退職所得控除を適用するための期間が、従来の5年から10年に延長されます。退職金とiDeCoの受取タイミングを慎重に検討する必要があります。
この変更は、iDeCoを一時金で受け取る場合の税負担に影響します。年金形式での受取を選択するなど、出口戦略を事前に考えておくことが重要です。
ネット証券との競争環境
SBI証券・楽天証券・マネックス証券の動向
iDeCoの運営管理機関として高いシェアを持つネット証券各社も、低コスト競争を加速させています。SBI証券は約38本、楽天証券は36本、マネックス証券は27本の商品をラインナップしており、いずれも運営管理手数料は無料です。
特に楽天証券は「楽天・プラスシリーズ」で攻勢をかけています。楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンドの信託報酬は0.0561%と、eMAXIS Slim全世界株式(0.05775%)をわずかに下回っています。
銀行の強みとは
ネット証券に対して銀行が持つ強みは、対面相談の窓口です。iDeCoは60歳まで原則引き出せない長期の制度であり、商品選択や資産配分に不安を感じる層は少なくありません。三菱UFJ銀行の全国約300店舗の窓口ネットワークは、こうした層へのアプローチにおいて強みとなります。
また、給与振込口座や住宅ローンなど、既存の取引関係を活かしたクロスセルも期待できます。2027年の制度拡充で新たにiDeCoに関心を持つ層の中には、普段取引のある銀行で始めたいと考える人も多いでしょう。
注意点・展望
コスト以外の比較ポイント
iDeCoの運営管理機関を選ぶ際は、信託報酬だけでなく、口座管理手数料や商品の多様性、サポート体制なども重要です。加入時に国民年金基金連合会へ2,829円、運用期間中は毎月171円(年間2,052円)の手数料がかかる点は全金融機関共通です。
運営管理手数料については、ネット証券大手は無料としていますが、銀行系では有料のケースもあります。新コースの運営管理手数料がどの水準に設定されるかは、競争力を左右する重要なポイントです。
2027年に向けた業界全体の動き
制度拡充を前に、各金融機関がiDeCo向けの商品・サービスを強化する動きが活発化しています。信託報酬の引き下げ競争がさらに進む可能性は高く、投資家にとっては歓迎すべき状況です。
一方で、拠出限度額の引き上げにより、投資経験が浅い層も大きな金額を運用するケースが増えます。適切な投資教育やリスク説明の充実が、業界全体の課題となるでしょう。
まとめ
三菱UFJのiDeCo新コースは、eMAXIS Slimシリーズを中心に据えた低コスト戦略で、2027年の制度拡充による需要増を狙う施策です。信託報酬の単純平均0.32%は、メガバンク系のiDeCoとしては画期的な水準といえます。
2027年1月のiDeCo制度改正では、拠出限度額の大幅引き上げ(最大月額62,000円)と加入可能年齢の70歳未満への拡大が実施されます。これにより、iDeCoの活用メリットは大きく広がります。
iDeCoの新規加入や金融機関の乗り換えを検討している方は、各社の商品ラインナップと手数料を比較したうえで、自身の投資方針に合った選択をすることが重要です。制度改正の詳細が確定次第、各金融機関からさらなるサービス強化の発表があると見込まれます。
参考資料:
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