三菱UFJがイデコ刷新、eMAXIS Slimで信託報酬最低水準に
はじめに
三菱UFJフィナンシャル・グループが、個人型確定拠出年金(iDeCo)の商品ラインナップを刷新する方針を明らかにしました。低コストで人気のインデックス型ファンド「eMAXIS Slim」シリーズを中心に構成する新コースを設定します。
2027年1月にはiDeCo制度の大幅な拡充が予定されており、拠出限度額の引き上げや加入可能年齢の拡大が実施されます。三菱UFJはこのタイミングに合わせて商品を刷新し、新規加入者の獲得を目指します。
本記事では、新コースの特徴とeMAXIS Slimシリーズの強み、そして2027年のiDeCo制度改正の内容を解説します。長期的な資産形成を考える上で、金融機関や商品選びのポイントが分かります。
三菱UFJの新iDeCoコースの概要
業界最低水準の信託報酬
三菱UFJが新設する iDeCoコースでは、投資信託の信託報酬の単純平均を0.32%に設定する計画です。これは主要な運営管理機関のiDeCo商品と比較して最低水準となります。
従来、銀行系のiDeCo商品は信託報酬が比較的高めに設定されている傾向がありました。今回の刷新により、ネット証券と遜色ない低コスト運用が可能になります。
eMAXIS Slimシリーズが中心
新コースの中核を担うのは、三菱UFJアセットマネジメントが運用する「eMAXIS Slim」シリーズです。同シリーズは「業界最低水準の運用コストを将来にわたって目指し続ける」というコンセプトを掲げ、個人投資家から絶大な支持を得ています。
eMAXIS Slimシリーズの特徴は、純資産総額が増えるほど信託報酬が下がる「受益者還元型信託報酬率」を採用している点です。ファンドの規模が大きくなることで運用効率が向上し、その恩恵が投資家に還元される仕組みです。
eMAXIS Slimシリーズの強み
圧倒的な低コスト
eMAXIS Slimシリーズは、つみたて投資枠の対象商品9本中6本が同じカテゴリー内で信託報酬最安となっています。検証されたインデックスファンドの平均信託報酬が約0.25%である中、eMAXIS Slimシリーズの多くは0.20%以下に設定されています。
信託報酬が0.1%違うと、長期運用では数十万円の差が生じる可能性があります。30年、40年という長期投資を前提とするiDeCoでは、わずかなコスト差が最終的な資産額に大きく影響します。
人気のファンドラインナップ
シリーズの中でも特に人気が高いのは「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、通称「オルカン」です。このファンドは、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスに連動し、米国を中心として世界の株式の約85%をカバーしています。
2025年7月には、より分かりやすい商品名への変更も行われました。「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」が「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス(除く日本)」に変更されるなど、投資対象がより明確になっています。
純資産総額の安定成長
eMAXIS Slimシリーズは圧倒的な低コストを実現したことで純資産総額も右肩上がりで増加しています。純資産総額が大きいファンドは、ベンチマーク(指数)との乖離が相対的に小さくなるメリットもあります。
運用コストの低さと運用精度の高さを両立している点が、長期投資家から支持される理由です。
2027年iDeCo制度改正の内容
拠出限度額の大幅引き上げ
2027年1月から、iDeCoの拠出限度額が大幅に引き上げられます。企業年金のない会社員は、従来の月額23,000円から月額62,000円へと約2.7倍に拡大されます。
今回の改正の特徴は、従来設けられていた「iDeCo単体での上限」が撤廃される点です。企業型確定拠出年金(DC)や確定給付企業年金(DB)との併用時も、合計で月額62,000円まで拠出可能になります。
公務員は現行の上限から34,000円引き上げられ、月額54,000円まで拠出できるようになります。自営業者やフリーランスは、iDeCoと国民年金基金の共通拠出限度額が月額68,000円から75,000円へと引き上げられます。
加入可能年齢の拡大
iDeCoの加入可能年齢も大幅に拡大されます。これまで会社員・公務員は65歳未満、自営業者は60歳未満までとされていた上限が、働き方に関わらず70歳未満まで加入可能になります。
ただし、すでに老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受け取っている人は対象外です。新たに加入対象となる65〜69歳の方の拠出限度額は月額62,000円が上限となります。
受け取り時のルール変更に注意
制度拡充と同時に、受け取り時のルール変更も予定されています。従来、iDeCoの一時金と会社の退職金を5年ずらして受け取ることで、それぞれに退職所得控除を適用できましたが、この期間が10年に延長される見込みです。
出口戦略に影響する変更であるため、制度改正後は受け取り方の検討がより重要になります。
金融機関選びのポイント
運営管理手数料の比較
iDeCoでは、国民年金基金連合会に月105円、信託銀行に月66円の手数料が誰でも必ずかかります。これに加えて、金融機関に支払う運営管理手数料が発生しますが、この金額は金融機関によって0円から500円程度まで差があります。
運営管理手数料が無料の金融機関と月440円の金融機関を比較すると、40年間で約21万円のコスト差が生じます。長期運用を前提とするiDeCoでは、この差は軽視できません。
ネット証券と銀行の違い
楽天証券やSBI証券などのネット証券は、運営管理手数料が無料で、商品ラインナップも充実している傾向にあります。一方、銀行系はiDeCoの取扱商品数がネット証券より少ない場合が多いのが実情でした。
三菱UFJの今回の刷新は、銀行系でも低コスト運用が可能になる点で注目されます。対面でのサポートを重視する投資家にとっては、選択肢が広がることになります。
金融機関変更のコスト
運営管理機関を変更する場合は、通常4,400円程度の手数料がかかります。また、移管手続き中は運用が一時停止する期間も発生します。そのため、iDeCoを始める際は金融機関を慎重に選ぶことが重要です。
注意点と活用のポイント
制度改正のメリットを最大化するには
2027年の制度改正により、非課税で運用できる金額が大幅に増えます。特に会社員・公務員は拠出上限が大幅に引き上げられるため、税制優遇を受けながらより多くの資産を形成できるようになります。
ただし、拠出額を増やすかどうかは、家計の状況や他の資産形成手段とのバランスを考慮して判断すべきです。iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、流動性の制約も考慮する必要があります。
信託報酬だけでなく総合的に判断
運用コストは重要な要素ですが、それだけで金融機関を選ぶべきではありません。サポート体制、商品ラインナップの幅、ウェブサイトの使いやすさなど、総合的に判断することが大切です。
特に投資初心者は、コールセンターや店舗でのサポートが受けられる金融機関を選ぶメリットもあります。
まとめ
三菱UFJフィナンシャル・グループのiDeCo刷新は、2027年1月の制度拡充を見据えた戦略的な動きです。eMAXIS Slimシリーズを中心に、信託報酬の平均を0.32%という業界最低水準に設定することで、新規加入者の獲得を目指しています。
2027年の制度改正では、拠出限度額が大幅に引き上げられ、加入可能年齢も70歳未満まで拡大されます。より多くの資金を非課税で運用できるようになるため、iDeCoの重要性は一層高まると考えられます。
長期的な資産形成においては、運用コストの差が最終的な資産額に大きく影響します。三菱UFJの新コースは、銀行系でも低コスト運用を実現する選択肢として、投資家の注目を集めそうです。制度改正の内容を理解した上で、自分に合った金融機関と商品を選ぶことが、老後の資産形成を成功させる鍵となります。
参考資料:
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