日経平均反発の背景にある円安と高市首相の為替発言
はじめに
2026年2月2日の東京株式市場で、日経平均株価は反発し一時900円を超える上昇を見せました。午前終値は前週末比99円高の5万3422円と上げ幅を縮小しましたが、取引時間中の急騰は市場参加者の注目を集めました。
上昇の背景にあるのは、高市早苗首相の為替に関する発言です。1月31日の川崎市での演説で現在の円安について「輸出産業には大チャンス」と述べたことが、円安容認と受け止められました。外国為替市場で円が対ドルで下落し、それを手がかりに海外投機筋が先物買いに動いたとみられています。本記事では、この日の相場の動きと背景にある要因を詳しく解説します。
2月2日の相場動向と円安の影響
一時900円超高から失速した経緯
日経平均は寄り付きから大幅高で始まり、午前中に一時900円を超える上昇を記録しました。円安の進行を背景に、機械や自動車といった輸出関連銘柄が幅広く買われたことが上昇の原動力です。
しかし、買い一巡後は戻り待ちの売りや利益確定売りが出て、午前終値では99円高まで上げ幅を縮小しました。急速な上昇の後に利益確定の動きが出るのは自然な展開であり、相場の地合い自体は底堅いとの見方が市場では優勢です。
円安が進んだ背景
ドル円相場は1ドル=158円台で推移しており、円安基調が続いています。高市首相が1月31日に「外為特会の運用が今ホクホク状態だ」と発言したことが、市場で円安を容認しているシグナルとして受け止められました。
海外の投機筋はこうした政治的なシグナルに敏感に反応します。首相の発言が「日本政府は当面の円安を問題視していない」というメッセージとして解釈され、円売り・日本株買いのポジションが強まった形です。
高市首相の為替発言と釈明の経緯
「円安容認」発言の波紋
高市首相は1月31日の衆院選応援演説で、現在の円安について輸出産業や外為特会への恩恵を強調しました。この発言が報道されると、市場では即座に「首相が円安を容認した」との解釈が広がりました。
為替市場では、政治家の為替に関する発言は極めて重要なシグナルとして扱われます。特に、日本の首相が円安のメリットに言及することは、円売りの材料として市場参加者に受け止められやすい傾向があります。
Xでの釈明と市場の反応
高市首相は翌2月1日、X(旧ツイッター)に「円高と円安のどちらが良くて、どちらが悪いということはない」と投稿し、円安容認との見方を打ち消そうとしました。さらに「誤解がある。円安メリットを強調したわけではない」と釈明し、「足元の円安ではエネルギーや食品など物価高が課題であり、政府として対応すべきなのは当然のことだ」と強調しています。
しかし、市場は当初の発言をより重視する傾向があります。2月2日の相場では、釈明にもかかわらず円安・株高の流れが続きました。
海外投機筋の動向と日本株市場
先物主導の急騰
2月2日の日経平均の一時900円超高は、海外投機筋による先物買いが主導したとみられています。先物市場では、少ない資金で大きなポジションを構築できるため、短期間で相場を大きく動かすことが可能です。
2025年には海外投資家による日本株の買い越しが約5兆円に達し、アベノミクス相場が始まった2013年以来の規模となりました。2026年に入っても、高市政権の積極財政や企業改革への期待から海外勢の日本株への関心は高い水準を維持しています。
「サナエノミクス」と市場の期待
高市政権の経済政策は市場で「サナエノミクス」と呼ばれ、積極財政、企業ガバナンス改革、AI関連投資の推進が柱となっています。Bloombergの分析では、2026年の日本株を押し上げる4つの基軸として「サナエノミクスと企業改革、AI、円安」が挙げられています。
早期衆院解散・総選挙の観測も株価を押し上げる要因です。1月13日には解散報道を受けて日経平均が1600円超上昇し、初めて5万3000円台に乗せた経緯があります。
注意点・展望
円安の「許容限度」はどこか
市場は高市政権の円安許容度を徐々に試す展開が続いています。野村證券は2026年3月末のドル円予想を155円に設定していますが、160円まで上昇した場合はコアCPIが前年比2.0%を再び上回り、政権にとって逆風になると指摘しています。
円安が進みすぎればエネルギーや食料品価格の上昇を通じて消費者心理を悪化させ、選挙を控える政権にとって致命的な問題になりかねません。その場合、日銀に利上げを促す方向に政策が転換する可能性もあり、株式市場にとっては調整要因となります。
利益確定売りへの警戒
日経平均は5万3000円台という高値圏で推移しており、短期的な利益確定売りが出やすい水準です。証券各社の2026年の日経平均予想レンジは5万3000円~6万1000円と幅がありますが、現時点で既に多くの予想の下限付近に位置しています。
先物主導の急騰は、反転時にも急速な下落を伴うリスクがあります。実需の買い(投資信託や年金基金など)が伴わない上昇は持続性に欠けるため、今後の実需動向にも注目が必要です。
衆院選の行方
高市首相が通常国会冒頭での衆院解散を検討しているとの報道は、株式市場では「政策継続期待」として好感されています。しかし、選挙結果次第では政策の方向性が変わる可能性もあり、選挙を巡る不確実性は今後の相場変動要因として意識されるでしょう。
まとめ
2月2日の日経平均反発は、高市首相の円安に関する発言を契機とした海外投機筋の先物買いが主因でした。一時900円超の上昇から99円高まで上げ幅を縮小した動きは、先物主導の上昇と利益確定売りのせめぎ合いを反映しています。
今後の注目点は、円安の進行度合いと高市政権の対応です。158円台で推移するドル円相場がさらに円安方向に振れれば、物価上昇を通じて日銀の利上げ議論が加速する可能性があります。株式市場は円安メリットと利上げリスクの両面を見極めながら、方向感を探る展開が続くでしょう。
参考資料:
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