日経平均961円安、「選挙は買い」にブレーキの背景
はじめに
2026年1月26日、東京株式市場で日経平均株価が前週末比961円(1.8%)安の5万2885円と大幅反落しました。一時は1100円を超える下げ幅となり、約2カ月ぶりの大きな下落となりました。
2月8日投開票の衆議院選挙を控え、株式市場では「選挙は買い」というアノマリー(経験則)が注目されてきましたが、この日は一転してブレーキがかかりました。為替介入への警戒感と選挙結果を巡る先行き不透明感が交錯する中、日本株市場に何が起きているのか解説します。
急落の直接的な要因
為替介入警戒による円高進行
1月26日の急落の直接的な引き金となったのは、為替介入への警戒感の高まりです。ドル円は154円台半ばまで円高が進行し、日米協調介入への警戒感が市場を覆いました。
先週末に日米当局による「レートチェック」(為替介入の準備段階とされる動き)が話題となり、市場参加者の間で介入警戒が一気に強まりました。「日米連携」によるレートチェックは市場の意表を突くものであり、協調介入という高いハードルが現実味を帯びてきたとの見方が広がっています。
自動車株への売り圧力
円高進行の影響を最も受けたのが、輸出関連の代表格である自動車株です。トヨタ自動車とホンダがともに4%安に沈むなど、主力銘柄の下落が日経平均を押し下げました。
企業の想定為替レートは日銀短観ベースで1ドル147円程度とされており、現在の水準は依然として想定より円安ではあります。しかし、これまでの「高市トレード」による円安・株高の流れが急激に巻き戻されたことで、短期的な調整が進んだ形です。
「選挙は買い」アノマリーの検証
過去の実績と今回の違い
「選挙は買い」とは、衆議院の解散総選挙が行われると株価が上昇するという経験則です。1970年以降の衆院解散17回のうち、9割近い15回で解散から総選挙までの間に日経平均は上昇しています。1952年以降では22回中17勝5敗という実績があります。
しかし、2024年の衆院選では、このアノマリーが当てはまらなかった点が記憶に新しいところです。今回も、過去の法則どおりに進むかどうか、市場は疑心暗鬼になっています。
今回の選挙の特殊性
今回の衆院選は、いくつかの点で過去とは異なる特殊な状況にあります。
第一に、立憲民主党と公明党による新党「中道改革連合」結成というサプライズがあり、本格的な政権選択選挙となる可能性が高まっています。選挙後の政治の形が見通しづらく、過去のアノマリーが通用しにくい局面といえます。
第二に、1月23日解散、2月8日投開票という超短期日程です。解散から投開票までわずか16日間は、2021年の岸田首相(当時)による戦後最短記録をさらに1日更新するものです。市場が選挙を材料に反応する時間が限られているともいえます。
「高市トレード」の行方
これまでの株高・円安の流れ
2025年10月に高市早苗氏が自民党総裁に就任して以降、金融市場では「高市トレード」と呼ばれる円安・株高・債券安(金利上昇)の動きが進みました。ドル円は147円台から157円台へ約10円の円安が進行し、日経平均株価は4万6000円程度から5万2000円程度へと10%以上上昇しました。
この背景には、高市政権の積極財政や金融緩和への期待、そして「危機管理投資」「成長投資」といった政策方針への好感があります。AI・半導体など17の戦略分野への投資推進も、市場からは前向きに評価されてきました。
選挙結果による4つのシナリオ
今後の株式市場は、選挙結果によって大きく方向性が変わる可能性があります。自民党の大勝は株式市場にとってベストシナリオとされ、政権運営の安定性が高まることでポジティブな反応が期待されます。
一方で、与党過半数割れとなった場合は、政策の不透明感から株価にはマイナス材料となり得ます。いずれにしても、選挙が終われば株価は為替や景気、海外市場など選挙以外の材料に左右されることになります。
日銀の利上げと市場への影響
選挙後の金融政策
為替介入警戒とともに市場が注視しているのが、日銀の追加利上げの行方です。1月23日の植田総裁会見後、一時円が急騰する場面があり、金融政策正常化への期待と警戒が入り混じっています。
早期の衆院選によって高市政権の政治基盤が強化される場合、日銀の利上げは選挙後にやりやすくなるとの見方があります。政治的安定が、不人気政策である利上げを実施しやすい環境を整えるからです。市場では日銀の利上げは3月または4月の公算が高まっているとの観測が出ています。
円高シナリオへの備え
仮に日銀が利上げに動けば、日米金利差の縮小から円高方向への圧力が強まる可能性があります。為替介入への警戒と相まって、輸出関連株を中心に調整が続くリスクも意識しておく必要があるでしょう。
今後の注目点
選挙までの株価動向
過去のデータでは「選挙は買い」の傾向が確認されていますが、株高の期間は比較的短いことも特徴です。今回は16日間という超短期決戦であり、選挙相場が形成される時間は限られています。
また、1989年から2025年までのデータ検証によれば、「解散日から投票日まで」には統計的優位性が確認されたものの、条件を少し変えるだけでその優位性は消失したとの分析もあります。アノマリーを過信するのはリスクがあるといえます。
半導体決算と最高値更新の可能性
足元の日本株は円急伸と選挙で波乱含みですが、最高値更新の可能性は半導体関連の決算次第との見方もあります。AI・半導体への投資テーマは引き続き重要であり、選挙後の政策動向とあわせて注視が必要です。
まとめ
1月26日の日経平均961円安は、「選挙は買い」のアノマリーに一時的なブレーキがかかったことを示しています。為替介入警戒による円高進行と、政権選択選挙となる可能性がある衆院選への不透明感が重なり、市場は方向感を見失いつつあります。
過去の実績では選挙期間中の株高傾向が確認されていますが、今回は立憲民主党と公明党の新党結成など予想外の展開もあり、従来のパターンが通用するか不透明です。選挙結果と日銀の金融政策、そして半導体関連の決算動向を見極めながら、冷静な投資判断が求められる局面といえるでしょう。
参考資料:
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