日経平均592円安、財政拡張観測で金利急騰の衝撃
はじめに
2026年1月20日、東京株式市場で日経平均株価が592円安と大幅に下落しました。高市早苗首相が19日に衆院解散を表明し、2月8日投開票の衆院選で与野党が消費税減税を掲げて争う構図が明確になったことで、市場では今後の財政拡張への警戒感が急速に高まっています。
長期金利は27年ぶりの高水準となる2.275%まで上昇し、これまで両立していた「株高・金利高」の構図が崩れ始めています。この記事では、急落の背景にある政治・経済の動向と、今後の市場見通しについて解説します。
衆院解散表明と消費税減税の争点化
高市首相の解散決断
高市早苗首相は1月19日午後6時に首相官邸で記者会見を開き、23日召集の通常国会冒頭で衆院を解散すると正式に表明しました。選挙日程は「1月27日公示―2月8日投開票」となり、解散から投開票までの期間はわずか16日と、戦後最短の短期決戦となります。
高市首相は解散の理由として「責任ある積極財政への経済・財政政策の大転換」を挙げ、「抜本的な政策転換の是非について堂々と審判を仰ぐ」と強調しました。維新との新たな連立政権に対する信任を問うとともに、首相としての進退を懸けると断言しています。
与野党の消費税減税競争
今回の衆院選では、与野党が消費税減税を公約に掲げる異例の展開となっています。自民党は日本維新の会との連立合意を踏まえ、食料品の消費税を2年間の時限措置でゼロにする案を検討しています。自民党の鈴木俊一幹事長は連立合意を「誠実に実現していくことが基本的な立場」と述べ、前向きな姿勢を示しました。
野党側も減税を掲げる見込みで、選挙戦は財政拡張路線を競う構図となりつつあります。このような政策環境が、債券市場での売り圧力を強める要因となっています。
長期金利27年ぶり高水準の衝撃
金利上昇の実態
1月20日の国内債券市場では、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが一時2.275%まで上昇し、1999年2月以来27年ぶりの高水準を記録しました。さらに超長期債にも売り圧力が波及し、30年債利回りは4%に接近する場面も見られました。
金利上昇の背景には複数の要因があります。まず、日本銀行の利上げペースが円安を背景に加速するとの見方が広がっています。加えて、与野党が消費税減税を選挙公約に掲げることで、財政収支の悪化懸念が一段と強まりました。
「金利のある世界」の現実化
マネックス証券の広木隆氏は、長期金利が約27年ぶりに2%超へ上昇したことで「金利のある世界」が現実味を帯びてきたと指摘しています。国内債券の評価をアンダーウェイトからニュートラルへ引き上げたことは、歴史的な判断変更だと述べています。
住宅ローン金利にも影響が及んでいます。2026年1月適用分では、三菱UFJ銀行の10年固定最優遇が前月比0.42ポイント上昇して2.68%、三井住友銀行が0.3ポイント上昇して2.65%、みずほ銀行が0.25ポイント上昇して2.55%となりました。
「高市トレード」の転換点
これまでの株高・金利高の共存
高市政権発足以降、市場では「高市トレード」と呼ばれる動きが見られました。高い内閣支持率を背景に、衆院選で自民党が勝利すれば積極財政を進めやすくなるとの期待から、「株買い・円売り・債券売り(金利上昇)」のポジションが取られてきました。
1月上旬に衆院解散観測が報じられた際には、大阪取引所の夜間取引で日経平均先物が53,590円まで上昇するなど、株式市場は強気で反応していました。
共存の崩壊
しかし、金利上昇のスピードが加速するにつれ、株式市場への逆風が強まっています。1月20日の日経平均は下げ幅が一時700円を超え、4日続落となりました。終値は前日比592円(1.11%)安の5万2991円でした。
金利上昇は株式投資の相対的な魅力を低下させます。債券利回りが上昇すれば、配当利回りとの比較で株式の投資妙味が薄れるためです。さらに、金利上昇は企業の資金調達コストを押し上げ、将来の企業収益を圧迫する要因ともなります。
高市銘柄は継続買い
防衛・インフラ関連への期待
全体相場が軟調な中でも、「高市銘柄」と呼ばれる特定のセクターには買いが継続しています。高市政権は防衛費のGDP比2%への増額を今年度中に前倒しで実施する方針を打ち出しており、防衛関連株への期待が根強く残っています。
具体的には、三菱重工業、三菱電機、川崎重工業といった防衛大手に加え、レーダーやミサイルシステムを手がける企業への注目が集まっています。2025年8月には三菱重工業が豪州政府から護衛艦を初受注しており、日本の防衛機器輸出への期待も高まっています。
17の戦略分野
高市政権が掲げる17の戦略分野(AI・半導体、サイバーセキュリティ、造船、防衛、デジタルインフラなど)に関連する銘柄も注目されています。これらは経済安全保障の観点から政府の重点分野とされ、政府支出や税制優遇が期待されています。
また、国土強靭化計画に基づくインフラ投資関連も引き続き物色されています。2026年度から2030年度までの5年間で約20兆円規模の事業が予定されており、建設・資材セクターへの追い風となっています。
注意点・今後の展望
スタグフレーションリスク
市場関係者の間では、「スタグフレーション」(景気停滞とインフレの同時進行)への警戒感も出始めています。金利が上昇を続ける一方で景気が減速すれば、政策対応は極めて困難になります。1970年代の米国では、スタグフレーションにより株価が10年以上実質的に上がらない時代がありました。
積極財政による景気刺激と、それに伴う金利上昇・インフレ圧力のバランスをどう取るかが、今後の重要な論点となります。
選挙結果次第のシナリオ
今後の市場動向は、2月8日の衆院選結果に大きく左右されます。自民・維新連立が勝利すれば積極財政路線が継続し、「高市トレード」が再開する可能性があります。一方、与党が過半数を割れば政局不安が高まり、市場は大きく調整するリスクがあります。
野村證券のメインシナリオでは、日経平均株価は2026年末に5万5,000円と予想されていますが、選挙結果や金利動向次第で大きく変動する可能性があります。
まとめ
1月20日の日経平均592円安は、高市首相の衆院解散表明を契機とした財政拡張懸念と長期金利急騰が重なった結果です。27年ぶりの高金利環境の中で、これまで両立していた「株高・金利高」の構図に転換点が訪れています。
投資家にとっては、選挙結果と金利動向を注視しながら、防衛・インフラなど国策銘柄への選別投資と、金利上昇に備えたポートフォリオの見直しが求められる局面といえるでしょう。
参考資料:
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