日経平均5万4000円突破・解散株高の持続性を検証
はじめに
2026年1月14日、東京株式市場で日経平均株価が史上初めて5万4000円台に乗せました。終値は前日比792円高の5万4341円となり、連日で最高値を更新しています。
株価急騰の背景にあるのは、高市早苗首相による通常国会冒頭での衆院解散観測です。市場では「選挙は買い」の経験則が意識され、半導体関連など「高市銘柄」に買いが殺到しています。
しかし、過熱感を指摘する声もあり、小泉純一郎政権や安倍晋三政権時代の「解散株高」と比較すると、持続性に課題も見えてきます。本記事では、解散株高のメカニズムと今後の展望を解説します。
5万4000円台到達の経緯
解散観測で急騰
日経平均株価は、1月13日の祝日明けから急騰を開始しました。週末に高市首相の衆院解散検討が報じられると、13日は前日比619円高となり、初めて5万3000円台に乗せました。
翌14日には上げ幅が一時600円を超え、5万4100円台を付ける場面もありました。高市首相が同日午後に自民党幹部に解散意向を伝えるとの観測が買いを加速させました。
「高市トレード」の再来
市場では「高市相場」「高市トレード」という言葉が飛び交っています。2025年10月の自民党総裁選で高市氏が勝利した際にも、積極財政への期待から株価が急騰しました。
今回は、総選挙で与党が勝利すれば、高市首相が掲げる財政拡張政策が一段と推進しやすくなるとの見方が広がっています。AI・半導体、造船、量子技術、航空宇宙など「高市銘柄」とされる関連株に買いが集まっています。
「取り残される恐怖」
昨年末からの上げ幅は4000円に達し、短期的な過熱感が意識されています。しかし、市場関係者からは「株高に乗り遅れるのが怖く、ついていくしかない」との声も聞かれます。
「取り残される恐怖(FOMO:Fear Of Missing Out)」が市場を支配し、買いが買いを呼ぶ展開となっています。
「選挙は買い」のアノマリー
過去のデータが示す法則性
日本の株式市場には「選挙は買い」というアノマリー(経験則)が存在します。1990年以降の11回すべての衆院解散・総選挙で、解散から投開票日までの期間に日経平均株価は上昇しています。
さらに1969年以降に遡ると、17回連続で上昇という記録もあります。2000年以降の8回では7勝1敗で、平均騰落率は+3.9%となっています。
株価上昇の理由
解散・総選挙期間に株価が上昇する理由はいくつか考えられます。
まず、選挙前には与党から景気刺激策や減税などの「飴」が提示されることが多く、市場がそれを好感します。また、解散日程が決まると不確実性が消え、投資家が動きやすくなります。
新しいリーダーや政策への期待も株高要因です。2005年以降の5回の選挙では、投開票前の7週間で外国人投資家が平均で総額約3兆円の日本株を買い越しているというデータもあります。
小泉・安倍政権時代の大幅高
特に印象的なのは、2005年の郵政選挙と2012年の政権交代選挙です。
2005年の小泉純一郎内閣下での郵政選挙では、解散から約半年間でTOPIXが44%上昇しました。自民党の圧勝への期待と、郵政民営化による構造改革への評価が株高を後押ししました。
2012年は自民党が政権に復帰し、「アベノミクス」への期待が高まりました。解散から約半年間でTOPIXは70%も上昇するという驚異的なパフォーマンスを記録しています。
今回の解散株高との比較
現状は約1割高
高市政権下での株価上昇率は、2025年10月の総裁選勝利からの期間で見ると約1割高にとどまっています。小泉・安倍政権時代の約2割〜7割高と比べると、まだ上値余地があるとの見方もできます。
大和証券のアナリストは、高市政権が解散・総選挙で勝てば経済政策への期待から半年の株価上昇が見込めるとし、1月解散なら日経平均株価は7〜9月に約3割高い6万8000円に到達すると予想しています。
投資指標では割高感
一方、投資指標を見ると割高感も指摘されています。
2025年12月時点の12カ月先予想PER(株価収益率)は16.8倍となっており、日経平均の適正水準とされる14〜16倍をやや上回っています。中長期投資家の間では、過去平均を上回るPERから、投資の手控えや利益確定売りが出やすいとの見方もあります。
来期(2026年度)の予想PERはアナリスト予想で16.3倍とやや割高感が低下するものの、小泉・安倍政権時代と比べて割安感に乏しいのが現状です。
企業業績の裏付けが鍵
解散株高が持続するかどうかは、企業業績の裏付けがあるかどうかにかかっています。
2005年の郵政選挙後は、輸出企業を中心に業績拡大が続きました。2012年以降のアベノミクス相場では、円安による業績改善と大胆な金融緩和が株高を支えました。
今回は、高市首相が重視するAI・半導体関連の成長期待が株高の原動力となっていますが、実際の業績がこの期待に応えられるかが問われます。
注意点・今後の展望
短期的な過熱感
足元の株価上昇は急ピッチで、短期的な過熱感は否めません。昨年末比で4000円以上の上昇は、利益確定売りを誘う水準です。
選挙結果が市場の期待通りにならなかった場合、反動で大きく下落するリスクもあります。与党の議席減や、予想外の政治展開は株価の波乱要因となります。
為替と金利の動向
株高と同時に、為替市場では円安が進行しています。高市首相の積極財政への期待は、財政悪化懸念を通じて円安・金利上昇圧力となっています。
急激な円安は輸入物価上昇を通じて家計を圧迫し、日銀の利上げ観測を高める可能性があります。金利上昇は株式市場にとってマイナス要因となりかねません。
選挙後の政策実行力
選挙後、高市首相がどこまで政策を実行できるかが中長期的な株価の鍵を握ります。
積極財政やAI・半導体投資などの「高市銘柄」関連政策が着実に実行されれば、株高は持続する可能性があります。一方、連立協議や党内調整で政策が骨抜きになれば、失望売りを招くリスクもあります。
まとめ
衆院解散観測を受けて、日経平均株価は史上初の5万4000円台に到達しました。「選挙は買い」のアノマリーが意識され、外国人投資家を含む買いが殺到しています。
過去のデータは、解散・総選挙期間中の株価上昇が高い確率で実現することを示しています。小泉・安倍政権時代には、解散から半年で約2割〜7割の大幅高を記録しました。
ただし、現在のPERは適正水準をやや上回っており、短期的な過熱感も指摘されています。解散株高の持続には、選挙結果と、その後の政策実行力が問われます。
投資家にとっては、過熱感を認識しつつも、選挙動向と企業業績を注視することが重要です。
参考資料:
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