大阪ダブル選告示、都構想「3度目の正直」は空回りか
はじめに
大阪府の吉村洋文前知事(日本維新の会代表)の辞職に伴う出直し知事選が2026年1月22日に告示されました。吉村氏は過去2度の住民投票で否決された大阪都構想の是非を問うため、2月8日投開票の衆院選にぶつける形で出直し選に臨んでいます。
しかし、主要政党は「大義がない」「独り相撲だ」として候補者を擁立せず、維新の奇策は空回り気味です。本記事では、大阪ダブル選の経緯と都構想を巡る課題について解説します。
出直しダブル選の概要
吉村・横山両氏が辞職
吉村洋文知事と横山英幸大阪市長は2026年1月16日付で辞職願を提出しました。残りの任期は約1年2カ月でしたが、「大阪のさらなる成長に向けて、都構想に挑戦することを認めてほしい」として自ら辞職に踏み切りました。
知事選は1月22日告示、市長選は翌23日告示で、いずれも2月8日の衆院選と同日投開票となります。両氏が再び選ばれた場合でも、次の任期は2027年4月までにとどまります。
衆院選との同日選を狙う理由
維新は衆院選との同日選により投票率を高め、都構想への支持を得たい考えです。吉村代表は、衆院選で維新が大阪の有権者から信任を得られれば、3回目の住民投票実施への弾みがつくと見込んでいます。
ただし、この戦略には億単位の選挙費用がかかり、「選挙をもてあそぶ愚行」との批判も出ています。
主要政党は候補者擁立を見送り
「大義がない」と各党距離
自民党、立憲民主党、公明党は「大義がない」として、今回のダブル選に対抗馬を出さない方針を固めました。維新が仕掛けた「出直し選挙」に乗る必要はないとの判断です。
自民党からは「身勝手だ」との不満が漏れ、与党内の不協和音が衆院選に影響する可能性も指摘されています。各党とも衆院選に集中したい思惑があり、大阪ダブル選には距離を置く構えです。
維新内部からも批判
驚くべきことに、維新内部からも批判の声が上がっています。日本維新の会の前共同代表・前原誠司氏は「する意味が分からない」と発言。大阪維新の会の大阪市議団は緊急総会で出直し選に反対する決議を行いました。
国会議員団でも反対論が大勢で、1月15日の両院議員総会では出席者約40人のうち約25人が反対し、賛成は数人にとどまりました。吉村代表は「都構想をやり遂げたいとの思いは一緒だが、『今ではないんじゃないか』という意見が一番強かった」と認めています。
大阪都構想の経緯
2度の住民投票で否決
大阪都構想は2015年と2020年の2度、住民投票で否決されています。
2015年5月の第1回投票では、反対70万5585票、賛成69万4844票と、わずか1万741票差で否決されました。2020年11月の第2回投票でも、反対69万2996票(50.63%)、賛成67万5829票(49.37%)と僅差で再び否決されました。
いずれも接戦でしたが、大阪市民は2度にわたって都構想にノーを突きつけた形です。
否決された理由
住民投票が否決された主な理由として、以下の点が挙げられています。
住民サービスへの不安: 大阪市を廃止して特別区に再編した場合、現行の住民サービスが維持されるか不透明でした。特に2020年の投票はコロナ禍の中で行われ、生活への不安から現状維持を望む声が強まりました。
大阪市廃止への抵抗感: 日本有数の歴史と伝統を持つ大阪市という自治体の廃止に対する心理的抵抗がありました。住吉区や阿倍野区など、伝統的な地名を残したいという思いも根強くあります。
制度設計への疑問: 特別区設置による行政コストの増加や、広域行政と基礎自治体の役割分担への疑問も投げかけられました。
吉村氏の「再挑戦」
2020年の否決後、吉村氏は「僕自身が再挑戦することはない」と明言していました。前回の知事選・市長選でも都構想は公約にしていませんでした。
しかし、2024年秋の大阪維新の会代表選で吉村氏は「副首都大阪を実現する以上、都構想の案についてもう一度考えたい」と方針を転換。3度目の挑戦に踏み出しました。
批判の声
「15年の執念か民意の軽視か」
都構想への3度目の挑戦について、「15年の執念」と評価する声がある一方、「2度も否決された民意の軽視」との批判も根強くあります。
住民投票という直接民主制の手法で2度否決されたにもかかわらず、再び同じ構想を問うことの正当性に疑問を呈する意見があります。
「選挙をもてあそぶ愚行」
日本経済新聞の社説は「選挙をもてあそぶ愚行といわざるをえない」と厳しく批判しました。残り任期1年余りで辞職し、億単位の費用をかけてダブル選を行う合理性が見当たらないとしています。
また、ある元首長の大学教授は「全部おかしい」として、①任期途中での辞職、②衆院選との同日選、③2度否決された構想の蒸し返し、という3つの要素を問題視しています。
今後の展望と注意点
対抗馬不在の選挙の意味
主要政党が候補者を擁立しないことで、選挙としての意味合いは薄れています。仮に吉村氏と横山氏が再選されても、それを「都構想への信任」と解釈できるかは疑問です。
維新としては衆院選で大阪の議席を固め、その勢いで都構想の住民投票実施へつなげたい考えですが、ダブル選で「民意を問う」という狙いは空回りしつつあります。
次の任期は1年余り
再選された場合でも、吉村氏と横山氏の任期は2027年4月までです。この短い期間で都構想の住民投票まで持っていけるかは不透明です。
住民投票の実施には、大阪府議会と大阪市議会での議決が必要です。府議会では維新が過半数を持っていますが、市議会では過半数に達しておらず、公明党などの協力が不可欠です。
有権者の判断が注目
2月8日の投開票に向けて、大阪の有権者がどのような判断を下すかが注目されます。投票率や得票率が、今後の都構想論議に影響を与える可能性があります。
まとめ
大阪ダブル選が告示され、吉村洋文氏と横山英幸氏の出直し選挙が始まりました。2度の住民投票で否決された大阪都構想の「3度目の正直」を目指す維新の奇策ですが、主要政党は候補者擁立を見送り、維新内部からも批判が出るなど、思惑は空回り気味です。
衆院選との同日選で投票率を高め、都構想への支持を得たいという戦略ですが、対抗馬不在の選挙で「民意を問う」ことができるかは疑問が残ります。2月8日の投開票結果と、その後の都構想論議の行方が注目されます。
参考資料:
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