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by nicoxz

プラチナが初の2900ドル突破、金5000ドル超えが波及

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はじめに

プラチナ(白金)価格の国際指標となるロンドン現物価格が2026年1月26日、1トロイオンス2918.8ドルを記録し、史上初めて2900ドルの大台を突破しました。これは前例のない価格水準であり、貴金属市場全体の歴史的な高騰を象徴する出来事です。

この背景にあるのは、金価格の急騰です。同日、金は5000ドルを突破して5110.5ドルの高値を付けました。デンマーク自治領グリーンランドの取得を目指す米国と欧州諸国の対立激化など、地政学リスクの連鎖が安全資産への資金流入を加速させています。

本記事では、プラチナ価格高騰の要因と今後の見通し、そして投機マネー流入による乱高下リスクについて詳しく解説します。

金価格5000ドル突破の衝撃

歴史的な節目を超える

2026年1月25日、ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物相場が時間外取引で初めて1オンス5000ドルの大台を突破しました。翌26日には5070ドル近辺で推移し、年初からの上げ幅は15%を超えています。

この急騰には複数の要因が重なっています。トランプ米政権によるグリーンランド取得への言及と、これに反対する欧州8カ国への関税示唆が市場の不安心理を大きく高めました。さらに、トランプ大統領がイラン周辺海域への原子力空母派遣に言及したことも、投資家のリスク回避姿勢を強めています。

ゴールドマン・サックスの強気予想

米ゴールドマン・サックスは2026年1月21日付のリポートで、2026年末の金価格予想を従来の4900ドルから5400ドルへと引き上げました。個人投資家や新興国の中央銀行による買いが継続するとの見方です。

独立系アナリストのロス・ノーマン氏はさらに強気で、「金は6400ドルまで上昇し、平均では5375ドルで推移するだろう」と予測しています。NATOの亀裂や国際秩序の不透明感から、金への資金流入が当面続くとの見方が市場では広がっています。

プラチナ2900ドル突破の背景

金に連動した貴金属全体の上昇

プラチナが2900ドルを突破した最大の要因は、金価格の急騰に連動した動きです。投資家が地政学リスクの高まりを受けて安全資産を求める中、同じ貴金属であるプラチナにも資金が波及しました。

注目すべきは上昇率の違いです。年初からの価格上昇を比較すると、金が1.8倍に対し、プラチナは2.7倍、銀も2.6倍に跳ね上がっています。これは、市場規模の小さい貴金属ほど、資金流入時に価格が敏感に反応することを示しています。

小さな市場規模が変動を増幅

プラチナ市場の年間規模は約250メトリックトンで、金の約5,000トンと比較すると非常に小さいことが特徴です。このため、価格は買いに対して非常に敏感に反応します。ロンドンでの高いリースレートは、現物の継続的な不足を示唆しています。

1月23日時点で、日本国内のプラチナ店頭小売価格(税込)は1グラムあたり15,054円となり、史上最高値を更新。前日比1,362円という大幅な上昇幅を記録しました。

EU政策転換が需要期待を押し上げ

プラチナ急騰のもう一つの要因として、欧州連合(EU)の政策転換があります。EUは2025年12月16日、エンジン車の新車販売を2035年に原則禁止する方針を撤回する案を公表しました。

プラチナは排ガスの有害物質を除去する触媒として自動車エンジンの部品に利用されており、この方針変更で需要が高まるとの見方が広がっています。自動車触媒はプラチナ年間需要の約4割を占める最大の用途分野です。

プラチナ市場の需給構造

2026年は4年ぶりの供給超過予想

国際調査機関のワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)は、2026年のプラチナ需給について4年ぶりにわずかながら供給超過に転じるとの見通しを示しています。投資需要の減速が要因として予想されています。

ただし、供給が制約されやすい状況は継続しており、需要が底堅く推移していることが2025年の価格高騰につながりました。2026年に入ってからもプラチナ価格が高値圏で推移しやすい理由となっています。

多様化する需要構造

WPICによれば、プラチナの世界需要の用途別構成比は、自動車34%、工業(自動車除く)26%、宝飾品25%、投資15%となっています。自動車向けが最大ですが、他分野も重要な需要源です。

2023年には世界的な自動車生産回復がプラチナ需要を押し上げました。高騰したパラジウムの代替として、ガソリン車の触媒にプラチナが使われ始め、自動車メーカーはコスト削減のためプラチナへの切り替えを進めています。

水素関連需要の成長期待

プラチナの将来需要として注目されているのが、水素関連分野です。プラチナはPEM(固体高分子膜)技術を利用する水電解装置や燃料電池自動車(FCV)に不可欠な素材です。

燃料電池車1台当たりには、ディーゼル車の約10倍ものプラチナが使用されると推測されています。WPICの予測では、水素関連のプラチナ需要は2040年までに年間需要の35%を占めるとされています。

米国では2022年のインフレ抑制法(IRA)によりグリーン水素産業への支援が強化されており、「インフラ投資・雇用法(IIJA)」では2026年までに2ドル/キロのクリーン水素生産を目指しています。

投機マネー流入と乱高下リスク

価格変動の激しさに注意

プラチナ市場は規模が小さいため、投機マネーの流入・流出で価格が大きく振れるリスクがあります。現在の高値水準は投機的な買いに支えられている側面もあり、利益確定売りが入れば急落する可能性も否定できません。

アナリストの間では、プラチナが2026年中にオンスあたり約2800ドルに達する可能性があるとの予測がある一方、短期的な乱高下への警戒も呼びかけられています。

米国の通商政策リスク

投資上のリスク要因として、米国の貿易・通商政策をめぐる動きが挙げられています。プラチナのインゴットや関連製品に関税が課される可能性が意識されており、政策次第で市場心理が急変する恐れがあります。

また、景気が減速した場合は自動車触媒など工業用途での需要が弱まる可能性もあり、実需と投機需要のバランスが今後の価格を左右するでしょう。

まとめ

プラチナ価格が史上初の2900ドルを突破したことは、貴金属市場全体が歴史的な高値圏にあることを示しています。金の5000ドル超えに連動し、地政学リスクの高まりを背景に投機マネーが流入したことが主因です。

EU政策転換による自動車触媒需要への期待や、水素関連需要の成長見通しなど、ファンダメンタルズ面でも支援材料があります。しかし、市場規模の小ささゆえに価格変動が激しくなりやすい点には注意が必要です。

投資家にとっては、短期的な乱高下リスクを認識しつつ、中長期的な需給動向を見極めることが重要です。地政学リスクがいつまで続くか、FRBの金融政策がどう推移するかなど、複合的な要因を注視していく必要があるでしょう。

参考資料:

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