Research

Research

by nicoxz

ロシア西部ベルゴロドに過去最大の砲撃、ハイマース使用か

by nicoxz
URLをコピーしました

はじめに

2026年1月24日、ウクライナに隣接するロシア西部ベルゴロド州の州都ベルゴロドが、過去最大規模の砲撃を受けました。同州のグラトコフ知事は通信アプリで被害状況を報告し、ウクライナ軍が米国製の高機動ロケット砲システム「ハイマース(HIMARS)」を使用したとの見方を示しています。

ロシアによるウクライナ侵攻から約4年が経過する中、ウクライナ軍によるロシア領土への越境攻撃は新たな局面を迎えています。この記事では、今回の砲撃の詳細、ハイマースの役割、そしてウクライナ戦争の最新情勢について解説します。

ベルゴロドへの砲撃の詳細

過去最大規模の攻撃

グラトコフ知事によると、1月24日にベルゴロドに打ち込まれた砲弾は24発に上りました。この規模は州都への攻撃としては過去最大とされています。

攻撃によりエネルギー施設が被害を受け、車両9台が損傷しました。また農業施設で火災が発生したものの、人的被害の報告はないとされています。

ハイマースの使用指摘

グラトコフ知事は、今回の攻撃にウクライナ軍が米国製の高機動ロケット砲システム「HIMARS(High Mobility Artillery Rocket System)」を使用したとみています。ハイマースは射程約80キロのロケットを装備し、最大射程は約300キロに達します。

ウクライナはこれまでに米国から20基以上のハイマースを受け取っており、2022年の反転攻勢以来「ゲームチェンジャー」として活用されてきました。

米国によるロシア領攻撃の許可経緯

バイデン政権の方針転換

ウクライナ軍による米国製兵器を用いたロシア領攻撃は、バイデン政権の方針転換により可能になりました。2024年5月末、バイデン政権は条件付きで米国製兵器のロシア領攻撃への使用を容認しました。

この背景には、ウクライナ東部ハリコフ州を中心にロシア軍が攻勢を強めていたことがあります。特にベルゴロド州からウクライナ領内への攻撃に対処するため、越境攻撃の必要性が高まっていました。

ATACMS使用許可への拡大

2024年11月には、バイデン大統領がウクライナに対して長距離兵器「ATACMS」のロシア領内での使用も許可しました。主にウクライナ軍が越境攻撃で一時占領したクルスク州での使用が想定されています。

この許可は、ウクライナが可能な限り長期にわたってロシア領内の足場を維持することを支援する目的があるとされています。

ベルゴロド州をめぐる攻防

継続する越境攻撃

ベルゴロド州はウクライナと国境を接しており、2024年8月以降、ウクライナ軍による越境攻撃の対象となってきました。ウクライナ軍は隣接するクルスク州とともに1,000平方キロ以上の領土を一時掌握しましたが、北朝鮮の支援部隊を得たロシア軍の反撃により多くを奪還されています。

2025年3月頃には、ウクライナ軍がベルゴロド西部のデミドフカやポポフカなどに侵入し、足場を拡大する動きを見せました。ロシア軍のヘリコプター4機がハイマースによる攻撃で破壊されるなど、激しい攻防が続いています。

インフラへの影響

2025年10月にはベルゴロド州の貯水池のダムがミサイルや無人機の攻撃を受けて損壊し、約1,000人が居住する集落に浸水の危険が生じました。電力インフラへの攻撃により数千世帯で停電が発生するなど、民生インフラへの被害も拡大しています。

ウクライナ戦争の最新情勢

戦線の膠着と消耗戦

ロシアによるウクライナ侵攻から約4年が経過し、戦争は5年目に突入しようとしています。戦線は依然として東部を中心に膠着しており、双方による消耗戦が続いています。

2025年、ロシア軍はウクライナ領土約4,336平方キロメートルを占領しました。これはウクライナの全領土の約1%に相当します。戦場は双方のドローンにより40〜50キロの範囲で監視され、戦死者の7〜8割がドローン攻撃によるものとの分析もあります。

ロシア軍の圧力強化

ウクライナ南部では特にロシア軍の圧力が強まっており、装備の劣るウクライナの部隊を数で圧倒する形で、ここ数週間で数百平方キロの領土を奪取しています。2025年はウクライナ軍にとって非常に困難な年だったと評価されています。

厳しい冬の攻防

2026年初頭、キーウは氷点下15度前後の厳しい寒波に見舞われています。ゼレンスキー大統領は、2025年末から2026年初めにかけての1週間で、ロシア軍からミサイルなどの攻撃を2,000発以上受けたと明らかにしました。極寒の中でのドローン攻撃により停電が広がり、市民生活への影響も深刻化しています。

和平交渉の行方

アブダビでの3カ国協議

2026年1月23日から24日にかけて、ロシア、ウクライナ、米国による3カ国協議がアラブ首長国連邦のアブダビで開催されました。米政府高官は「協議の雰囲気は予想を超えており、非常に前向きで建設的だった」と評価しています。

しかし、最大の懸案である領土問題では溝が埋まらず、実質的な進展はありませんでした。次回協議は2月1日に同じくアブダビで行われる予定です。

停戦の見通し

トランプ政権主導の和平調停にもかかわらず、ロシア・ウクライナ双方とも2026年初頭の時点で武器を置く見込みは低い状況です。ウクライナ国内では「交渉による終結には前向きだが、降伏と受け止められる妥協は拒否する」との世論が大勢を占めています。

ロシア側も軍事力による戦争目的達成を選択肢から外す姿勢を示しておらず、ドネツク州の残る約22%を制圧するにはなお1年半以上を要するとの分析もあります。

注意点・今後の展望

ハイマースの有効性低下

「ゲームチェンジャー」と称されたハイマースですが、ここ数カ月はロシアの集中的なGPS妨害(ジャミング)により有効性が低下しているとの報告があります。ロシア軍の電子戦能力の向上により、精度が影響を受けている可能性があります。

ロシア経済への影響

油価(ウラル原油)の下落傾向が続いており、戦費捻出に苦しむロシア経済への影響が注目されています。一部の分析では、油価低迷が続けばロシア経済は弱体化し、2026年中に停戦・終戦を余儀なくされる可能性も指摘されています。

北朝鮮との同盟深化

ロシアと北朝鮮の軍事協力が加速しています。2025年4月には北朝鮮兵約15,000人が投入され、ウクライナ軍が逆侵攻したクルスク州をロシア側が奪還することに成功しました。この同盟関係の深化は、東アジアの安全保障環境にも影響を及ぼす可能性があります。

まとめ

ロシア西部ベルゴロドへの過去最大規模の砲撃は、ウクライナ戦争が新たな段階に入っていることを示しています。米国製兵器によるロシア領攻撃が常態化する中、戦闘はより激しさを増しています。

和平交渉は始まったものの、領土問題での隔たりは大きく、早期の停戦は見通せない状況です。双方による消耗戦が続く中、国際社会は引き続き情勢を注視していく必要があります。

参考資料:

関連記事

最新ニュース