社会保障の財源不足はなぜ起きるのか、国債依存の構造を解説
はじめに
日本の社会保障制度は、年金・医療・介護・少子化対策を柱に国民生活を支えています。しかし、その費用は年間140兆円を超える規模にまで膨らんでおり、財源の確保が大きな課題となっています。
社会保障費はおおよそ6割を国民や企業の保険料で、4割を税財源で賄っています。税財源では消費税が主体ですが、それでも不足する分は国債で穴埋めしているのが実情です。本記事では、社会保障の財源構造がどうなっているのか、なぜ不足が生じるのかを分かりやすく解説します。
社会保障の財源はどう成り立っているか
保険料と消費税の二本柱
社会保障の財源は大きく分けて「保険料」と「税金」です。保険料は国民や企業が毎月支払う健康保険料や年金保険料などで、社会保障費全体の約6割を賄っています。残りの約4割は公費(国と地方の税金)で、その中心が消費税です。
消費税法は、消費税の税収を年金、医療、介護、少子化対策の4経費に使うよう定めています。消費税が選ばれた理由は、経済動向や人口構成の変化に左右されにくく、税収が安定しているためです。
消費税収の配分
消費税収の3分の1強は、地方消費税や地方交付税として地方自治体に回ります。地方分についても、地方消費税分の一部を除いて社会保障関連経費に充てることが求められています。2025年度の消費税収は約24.9兆円が見込まれています。
なぜ国債で穴埋めが必要なのか
給付費の膨張に財源が追いつかない
2025年度の社会保障給付費は予算ベースで140.7兆円(対GDP比22.4%)に達しています。一方、社会保険料と消費税を合わせても、これだけの給付を賄いきれません。不足する分は一般財源や赤字国債の発行で穴埋めしています。
2025年度予算では、社会保障関係費は約38.3兆円と歳出全体の33%を占めます。消費税収の大部分がこの財源に充てられますが、それでも足りない分が毎年の赤字国債として積み上がっています。
将来世代への負担先送り
日本の社会保障制度は社会保険方式を採りつつも、後期高齢者医療や介護給付費の5割を公費で賄うなど、税負担に大きく依存しています。本来税財源で賄うべき部分を特例公債(赤字国債)で調達しているため、「受益と負担の対応関係が断ち切られている」と財務省も指摘しています。
現在の高齢者への給付を、将来の世代が国債の返済を通じて負担する構図が固定化しているのです。
消費税と社会保障をめぐる論点
消費税は本当に社会保障に使われているか
消費税の使途をめぐっては議論があります。消費税率が8%から10%に引き上げられた前後で、社会保障給付は5.3兆円増えましたが、公費負担自体は増えていないとの分析もあります。給付増を賄っているのは社会保険料の引き上げや過去の余剰金であり、消費税増収分の実質的な使途に疑問を呈する声もあります。
消費税減税が財源に与える影響
2026年衆院選では与野党が消費税減税を公約に掲げていますが、食料品の消費税率をゼロにすれば年間約5兆円の税収が失われます。社会保障の主要財源である消費税を減らせば、その分だけ国債発行が増え、将来世代の負担がさらに重くなるリスクがあります。
注意点・今後の展望
全世代型社会保障改革の行方
政府は「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋」に基づき、2028年度までに公費節減効果として1.1兆円程度の確保を目指しています。医療・介護制度の効率化や給付の適正化が柱ですが、具体策の実行は政治的に困難な面があります。
現役世代の保険料負担軽減
自民党・公明党・日本維新の会の3党は、現役世代の保険料負担を含む国民負担の軽減を実現するための協議体を設置しています。2026年度以降の具体的な措置については「骨太方針2025」に反映させる方針ですが、給付を抑えずに負担を軽減することは容易ではありません。
根本的な構造問題
少子高齢化により生産年齢人口が減少し、社会保障の支え手が減り続けています。出生率の向上、労働生産性の引き上げ、給付水準の見直しといった根本的な改革なしには、国債依存の構造を脱却することは難しいのが現実です。
まとめ
日本の社会保障は保険料と消費税を柱に支えられていますが、高齢化による給付費の膨張に財源が追いつかず、不足分を国債で穴埋めする構造が続いています。消費税減税の議論が盛り上がる今こそ、社会保障の財源をどう確保し、将来世代への負担先送りをどう抑えるかを真剣に考える必要があります。
参考資料:
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