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by nicoxz

消費税減税で与野党横並び、5兆円の財源問題を検証する

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はじめに

2026年2月8日に投開票を迎える衆議院選挙で、与野党の大半が消費税減税や廃止を公約に掲げるという、過去に例のない展開になっています。自民党は飲食料品を2年間消費税の対象外にする検討を明記し、野党各党も5%への一律引き下げや食料品税率ゼロを訴えています。

しかし、食料品の消費税率をゼロにすれば年間約5兆円の税収が失われます。社会保障費の主要財源である消費税をどこまで削るのか。各党は有権者の歓心を買うだけでなく、財源確保の具体策を示す責任があります。本記事では、消費税減税を巡る各党の公約と財政への影響を検証します。

各党の消費税減税公約を比較する

自民党:飲食料品を2年間対象外に

自民党は公約で「飲食料品を2年間、消費税の対象としないことについて実現に向けた検討を加速する」と明記しました。日本維新の会との連立合意に基づくもので、恒久的な減税ではなく時限措置としています。ただし、具体的な財源確保策や実施スケジュールは「国民会議」での検討に委ねるとしており、詳細は不明です。

野党各党の主張

立憲民主党と公明党による中道改革連合は、恒久的な食料品の税率ゼロを掲げています。国民民主党は消費税率の一律5%への引き下げを主張し、日本共産党も同様に一律5%への減税とその後の廃止を掲げています。れいわ新選組は直ちに廃止、参政党は段階的廃止を訴えています。

消費税40年の歴史的転換点

1989年に税率3%で導入された消費税は、5%、8%、10%と段階的に引き上げられてきました。約40年の歴史の中で、引き下げが政治的な議題に上ること自体が異例です。物価高を背景に「減税ポピュリズム」が与野党に広がったことで、消費税は歴史的な転換点に立っています。

年5兆円の「請求書」の中身

食料品ゼロ税率のコスト

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストの試算によれば、食料品の消費税率をゼロにした場合、年間約5兆円の税収が失われます。消費税収は国と地方を合わせて年間約28兆円(2025年度見込み)であり、その約2割に相当する巨額の減収です。

経済効果は限定的との見方

約5兆円のコストに対して、実質GDPの押し上げ効果は+0.22%程度にとどまるとの試算があります。数千億円程度の経済効果のために5兆円を投じる構図であり、費用対効果の面で疑問の声が上がっています。

国債発行増加の懸念

消費税法は消費税収を年金、医療、介護、少子化対策の4経費に使うよう定めています。減税で税収が減れば、これらの社会保障費を国債で穴埋めする必要が出てきます。日本の公的債務はすでにGDP比で先進国最悪の水準にあり、さらなる国債増発は財政の持続可能性を損なうリスクがあります。

金融市場が発するシグナル

長期金利の上昇と円安

消費税減税を含む財政拡張路線への懸念から、金融市場では日本の長期金利が上昇傾向にあります。国際的な投資家の間では「日本の財政規律への信認が揺らぐ」との見方が広がっており、円安圧力も強まっています。

円安は輸入物価を押し上げ、物価高をさらに悪化させます。物価高対策としての減税が、皮肉にも物価高を助長するという悪循環に陥るリスクがあります。

海外メディアの警鐘

東洋経済オンラインが紹介したニューヨーク・タイムズの記事では、自民党の減税公約が世界の投資家に不安を与えていると報じています。突然の衆院解散と相まって、日本の財政に対する懸念が高まっていると指摘されています。

注意点・今後の展望

「2年限定」は本当に2年で終わるか

自民党は飲食料品の消費税ゼロを「2年間の時限措置」としていますが、一度導入した減税を予定通り終了できるかは不透明です。過去にも「時限措置」として導入された税制優遇が恒久化された例は少なくありません。期限が近づけば延長圧力が強まることは容易に予想できます。

選挙後の政策修正の可能性

選挙公約と実際の政策には乖離が生じることがあります。どの政党が政権を担っても、財務省や日本銀行との調整、国際金融市場の反応を踏まえて、減税幅の縮小や段階的実施に修正される可能性があります。

まとめ

2026年衆院選では消費税減税が与野党の「チキンレース」となっています。食料品の消費税をゼロにすれば年5兆円の税収が失われ、社会保障の財源に穴が開きます。経済効果は限定的との試算もあり、金融市場はすでに財政悪化懸念から長期金利上昇と円安で警鐘を鳴らしています。有権者は各党の減税公約だけでなく、財源確保の具体策と長期的な財政計画を見極める必要があります。

参考資料:

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