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by nicoxz

住友金属鉱山が急落、金先物の歴史的暴落の背景

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はじめに

2026年2月2日、住友金属鉱山(5713)の株価が一時10.4%安と大幅続落しました。直接の要因は、1月30日のニューヨーク市場における金先物価格の歴史的な急落です。金先物は1日で11.4%下落し、1980年以来最大の下落率を記録しました。

金価格の急変動は、金鉱山を保有する住友金属鉱山の業績見通しに直結するため、投資家の間で売りが加速しています。本記事では、金先物暴落の背景にある複数の要因を整理し、住友金属鉱山への影響と今後の見通しを解説します。

金先物価格の歴史的急落

記録的な下落の全容

1月30日、ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物は11.4%下落し、1トロイオンスあたり4,745ドルで取引を終えました。翌2月2日もさらに約5%下落し、4,616ドル台まで値を下げています。

この急落が衝撃的なのは、その直前まで金価格が歴史的な上昇局面にあったためです。1月29日には金先物は1トロイオンスあたり5,608ドルの史上最高値を記録していました。年初からの1カ月間で最大3割ほど上昇しており、6カ月連続の上昇は1980年代以来の強さでした。

つまり、急激な上昇の反動として、同様に急激な下落が発生したことになります。

ウォーシュ次期FRB議長指名の衝撃

金先物急落の最大のきっかけは、トランプ大統領がケビン・ウォーシュ元FRB理事を次期FRB議長に指名すると発表したことです。

ウォーシュ氏はタカ派(金融引き締め派)として知られています。引き締め的な金融政策、より高い実質金利、FRBのバランスシート縮小を支持する立場です。市場はこの人事を「ドル高・金安」の材料として即座に織り込みました。

INGのFXストラテジスト、フランチェスコ・ペソーレ氏は「ドルは回復のきっかけを待っていた。ウォーシュ氏指名のニュースがまさにそれを提供した」と分析しています。実際、ドル指数は2025年5月以来の大幅高を記録しました。

なぜドル高が金安を引き起こすのか

金はドル建てで取引されるため、ドルが上昇すると他通貨の投資家にとって金の購入コストが上がり、需要が減退します。また、金は利息を生まない資産であるため、金利上昇(タカ派的政策)の期待が高まると、利息を生む債券などへの資金シフトが起きやすくなります。

さらに、ウォーシュ氏の指名はFRBの独立性に対する市場の懸念を和らげました。Treasury Partnersのリチャード・サパースタイン氏は「市場が望んでいたまさにその人選」と評価しています。FRBの独立性への信頼回復は、安全資産としての金の需要を低下させる要因となります。

中国投機筋の利益確定売り

急落を加速させたもう一つの要因が、中国の投機筋による大規模な利益確定売りです。金価格の上昇局面では、中国の投資家によるモメンタム買いが相場を押し上げていました。しかし、下落に転じた途端、同じ投資家が一斉に利益確定に動き、下落幅を拡大させました。

この急激な値動きを受け、CMEグループはCOMEX金先物の証拠金率を6%から8%に引き上げています。証拠金の引き上げは追加的な売り圧力を生みやすく、短期的にはさらなる下落要因となります。

住友金属鉱山への影響

金価格と業績の深い関係

住友金属鉱山は日本を代表する非鉄金属メーカーであり、金鉱山の運営を主要事業の一つとしています。2026年3月期の連結純利益は前期の4.5倍となる740億円の見通しで、金・銅価格の上昇が大きな追い風となっていました。

特に注目すべきは製錬事業です。当初150億円の赤字を見込んでいましたが、金価格の上昇による在庫評価益の発生で30億円の黒字に転換する見通しに上方修正されています。金価格が急落すれば、この在庫評価益が縮小または消失する可能性があります。

株価の推移

住友金属鉱山の株価は、金価格の上昇に伴い1月27日には株式併合考慮後の上場来高値を連日更新していました。しかし、1月30日に前日比5.02%安の9,360円に急落。2月2日にはさらに10.41%安の8,385円まで下落しています。

わずか数営業日で上場来高値から大幅な調整を受けた形です。DOWAホールディングスや三菱マテリアルなど、他の非鉄金属株も同様に大幅安となっています。

関連ETFへの波及

金価格の下落は個別株だけでなく、金関連ETFにも波及しています。SPDR金ETF(1326)、WisdomTree金ETF(1672)、野村金連動ETF(1328)なども軒並み下落しました。金関連の投資商品全体に売りが広がっている状況です。

注意点・展望

下落後も年初来プラス圏

急落のインパクトは大きいものの、金価格は年初来でまだ約8%のプラス圏にあります。1月の急騰が異常だったとも言え、一定の調整は健全な動きとする見方もあります。

ウォーシュ氏の就任には不確実性

ウォーシュ氏のFRB議長就任には上院の承認が必要です。共和党のティリス上院議員がパウエル現議長への法的調査が解決するまで反対する姿勢を示すなど、スムーズな承認プロセスとはならない可能性があります。承認が難航すれば、金価格が再び上昇に転じる展開もあり得ます。

構造的な金需要は継続

Oxford Economicsのアナリストは、ウォーシュ氏が「AIによる生産性向上がインフレなき成長を可能にする」という議論に基づき、追加利下げを主張する可能性を指摘しています。タカ派と見られるウォーシュ氏も、実際の政策運営では柔軟な対応を取る可能性があります。

また、各国中央銀行による金の購入需要や、地政学的リスクを背景とした安全資産需要は構造的に継続しています。短期的な急落が中長期的なトレンドの転換を意味するとは限りません。

住友金属鉱山の決算に注目

住友金属鉱山の第3四半期決算は2026年2月9日に発表予定です。金価格の急変動が業績見通しにどの程度反映されるかが、株価の次の方向性を決める重要な材料となります。

まとめ

住友金属鉱山の株価急落は、金先物価格の歴史的な暴落に直結しています。ウォーシュ次期FRB議長指名によるドル高・タカ派期待、中国投機筋の利益確定売り、証拠金引き上げなど、複数の要因が重なった結果です。

投資家にとっては、2月9日の決算発表で金価格変動の業績影響を確認することが重要です。また、ウォーシュ氏の上院承認プロセスや、金の構造的需要の動向も中長期的な判断材料となります。金価格は急落したものの年初来ではプラス圏を維持しており、短期的な変動に過度に反応せず、冷静な分析が求められます。

参考資料:

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