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by nicoxz

TACOトレードとは?米株式市場が2日で全回復した背景

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はじめに

2026年1月22日、米ダウ工業株30種平均は前日比306ドル高の4万9384ドルで取引を終えました。これは、トランプ大統領が前週末に発表した欧州への追加関税を撤回したことを受けた動きです。市場では「TACOトレード」と呼ばれる投資戦略が再び注目を集めています。

TACOとは「Trump Always Chickens Out(トランプはいつも尻込みする)」の頭文字を取ったもので、トランプ大統領が強硬な関税政策を打ち出しても、最終的には撤回するパターンを指します。しかし、株式市場が急回復する一方で、米国債利回りやドル相場は回復していません。この乖離は何を意味するのでしょうか。

グリーンランド関税騒動の経緯

1月17日:突然の関税発表

2026年1月17日(土)、トランプ大統領はSNS「Truth Social」で「国家安全保障関税」を発表しました。対象はデンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランス、ドイツ、イギリス、オランダ、フィンランドの8カ国です。

関税の内容は、2月1日から10%、6月1日から25%に引き上げるというものでした。この発表の背景には、米国政府がグリーンランドの「完全かつ全面的な購入」を求めていることがありました。欧州諸国がグリーンランドの自治権を支援する軍事ミッションを派遣したことに対する報復措置でした。

1月20日:市場の急落

週末を挟んだ1月20日(火)、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア記念日の祝日明けに市場が開くと、株価は急落しました。S&P500は1.39%下落、ナスダック総合は1.64%下落、ダウ平均は650ドル以上下落しました。

この日、いわゆる「セル・アメリカ(米国売り)」トレードが本格化しました。投資家は米国株と米国債を売り、安全資産とされる金や銀に資金を移動させました。10年物米国債の利回りは5カ月ぶりの高水準となる4.3%に上昇しました。

1月21日:関税撤回と急回復

翌1月21日(水)、状況は一変しました。トランプ大統領は、NATO事務総長のマルク・ルッテ氏との間でグリーンランドに関する「将来の合意の枠組み」で合意したと発表し、2月1日に予定されていた欧州諸国への関税を撤回しました。

この発表を受けて、S&P500は1.2%上昇。翌22日にはさらに0.8%上昇し、関税発表前の水準を完全に回復しました。ダウ平均も22日には473ドル上昇し、前週末の終値4万9359ドルを上回りました。

TACOトレードの仕組みと定着

TACOトレードとは

「TACO」という用語は、2025年5月にフィナンシャル・タイムズのコラムニスト、ロバート・アームストロング氏が初めて使用しました。トランプ大統領が2025年4月に発表した「解放の日」関税を、市場の急落を受けてすぐに撤回したことを受けての造語でした。

TACOトレードの基本戦略は単純です。トランプ大統領が関税を発表して株価が下落したら買い、関税が撤回されて株価が回復したら売る。2025年以降、このパターンが繰り返されてきたため、市場参加者の間で一種の「常勝戦略」として認識されるようになりました。

市場の「慣れ」と懸念

TACOトレードが市場に定着したことで、トランプ大統領の関税発言による市場の急落幅は以前より小さくなっています。2025年には脅しから撤回まで数カ月かかっていたものが、2026年には数日に短縮されました。

しかし、この「慣れ」には問題もあります。ブルームバーグの報道によると、投資家がTACOトレードに依存するようになると、市場の下落幅が小さくなり、トランプ大統領が政策を撤回するほどの圧力がかからなくなる可能性があるのです。つまり、TACOトレードが成功しすぎると、そのトレード自体が機能しなくなるリスクがあります。

株高の裏で進む「米国売り」

米国債とドルは回復せず

株式市場がV字回復を見せた一方で、米国債とドルの状況は異なります。10年物米国債の利回りは4.14%から4.27%に上昇(債券価格は下落)し、30年物国債の利回りは4.9%に達しました。ドルインデックスも下落傾向が続いています。

通常、リスクオフの局面では「安全資産」とされる米国債が買われ、利回りは低下します。しかし今回は逆に、米国債が売られています。これは投資家が「米国資産そのもの」に対する信頼を失いつつあることを示唆しています。

トランプ政権への信用低下

エバコアISIのクリシュナ・グハ氏は「これは再び『セル・アメリカ』だ」と指摘しています。株式、国債、ドルが同時に下落する現象は、景気悪化や企業業績の悪化が原因ではありません。投資家が「グローバルシステムの要」としての米国の予測可能性を疑い始めているのです。

ピクテの分析によると、米国債とドルの同時下落は、トランプ大統領の主要政策に対する「明確な拒絶」を示しています。資金の避難先としての米国債とドルの地位が、もはや当然のものではなくなったという警告です。

今後の注目点と投資家へのポイント

中間選挙と金融政策

2026年11月には米国で中間選挙が控えています。トランプ大統領が選挙対策としてドル安政策を実施するかどうかが注目されます。また、パウエルFRB議長の任期が2026年5月に満了するため、後任人事も市場の焦点となります。

野村證券は、日米金利差の縮小を予想し、2026年末のドル円レートを140円と予想しています。トランプ政権の政策不確実性が続く限り、為替市場のボラティリティは高止まりする可能性があります。

TACOトレードの限界

TACOトレードは「トランプ大統領は最終的に撤回する」という前提に基づいています。しかし、すべての政策が撤回されるわけではありません。また、市場がTACOトレードに慣れすぎると、関税発表時の下落幅が小さくなり、政策転換を促す市場からの圧力が弱まるという逆説的な状況も生まれつつあります。

まとめ

TACOトレードによって、米株式市場はグリーンランド関税騒動から2日で完全回復しました。しかし、米国債利回りの高止まりとドル安の継続は、市場がトランプ政権の政策予測可能性に疑問を抱いていることを示しています。

投資家は、株式市場の短期的な回復に安心するだけでなく、債券市場と為替市場が発するシグナルにも注意を払う必要があります。TACOトレードが有効な局面は続くかもしれませんが、その前提となる「トランプ大統領は最終的に撤回する」というパターンが永続する保証はありません。

参考資料:

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