高市首相の冒頭解散論、維新は連立信問う、野党は準備不足懸念
はじめに
23日召集予定の通常国会の冒頭で衆院を解散する案が政権内で浮上しています。高市早苗首相は自民党幹部に「選択肢の一つ」と伝え、2月上中旬の投開票を視野に入れています。一方、連立パートナーの日本維新の会・吉村洋文代表は「維新と自民党の連立合意の内容は国民の信をまだ得ていない」と述べ、解散の場合は連立合意を正面から問う姿勢を示しています。立憲民主党の野田佳彦代表は「理屈や大義ない」と批判し、2026年度予算の遅れによる政治空白を懸念しています。本記事では、冒頭解散論の背景、各党の思惑、そして2026年政局の行方を詳しく解説します。
冒頭解散案の浮上とその背景
高市首相の判断の選択肢
高市早苗首相は、1月23日に召集される通常国会の冒頭で衆議院を解散することを検討しています。自民党幹部には「選択肢の一つ」と伝えており、2月上中旬の投開票を視野に入れています。具体的には「2月3日公示-2月15日投開票」または「1月27日公示-2月8日投開票」の2つの日程が検討されています。
冒頭解散を検討する背景には、高い内閣支持率があります。2025年10月の発足時に読売新聞の全国世論調査で71%を記録し、12月にも73%を維持しています。この高支持率を背景に、早期の信を問うことで政権基盤を固める狙いがあると見られます。
予算遅れへの慎重論
一方で、冒頭解散に踏み切った場合、2026年度予算案の年度内成立が困難になるという慎重論もあります。予算の遅れは経済政策の実行を遅らせ、「強い経済」を主張している高市首相にとって、政治空白を作ることの妥当性が問われることになります。
通常国会では2026年度予算案の審議が最優先課題であり、解散によって審議が中断されれば、年度内成立は極めて困難です。暫定予算による対応も検討されますが、経済政策の遅れによる影響は避けられません。
維新の立場:連立合意を正面から問う
維新・吉村代表の発言
日本維新の会の吉村洋文代表は11日のNHK番組で、高市首相が通常国会の冒頭で衆院を解散する案に関して「維新と自民党の連立合意の内容は国民の信をまだ得ていない」と述べました。「首相が解散の判断をするのであれば正面から国民に問いたい」と強調し、連立合意の内容、特に議員定数削減を争点として明確に打ち出す姿勢を示しています。
吉村氏は9日の政府・与党連絡会議の終了後、首相と話した際に「冒頭という具体的な時期の話はなかった」としつつも、解散が行われる場合は連立合意の内容を国民に問う方針を明らかにしました。
議員定数削減をめぐる攻防
維新は自民党との連立合意において、衆議院の議席を現在の465から10%削減(45議席削減)することで合意しています。2025年12月5日、自民党と維新は「自動削減条項」を含む法案を提出しましたが、野党の反対により臨時国会では審議入りできませんでした。
連立合意では、法施行後1年以内に結論が出なければ、小選挙区25議席、比例代表20議席を自動削減する内容となっています。しかし、この法案の成立見通しは不透明であり、1月召集の通常国会でも党首会談で合意した通りに議席削減法案の成立が困難な場合、維新からの圧力は確実に強まります。
維新の吉村代表は「まず議席削減ができなければ、社会保障改革や副首都構想などの改革はできない」と述べており、議員定数削減を連立合意の核心と位置付けています。
野党の反応:準備不足と大義なき解散
立憲民主党・野田代表の批判
立憲民主党の野田佳彦代表は1月10日、「解散となれば受けて立つしかない」と語りつつも、冒頭解散には批判的な立場を示しています。野田氏は「比較第1党をめざし、中道政権をつくる目標を掲げ、準備は加速したい」と強調する一方で、予算審議への影響を懸念しています。
野田氏は、冒頭解散に踏み切った場合、2026年度予算案の年度内成立が困難になるとも指摘し、「『強い経済』を主張している首相にとって、判断が妥当なのか問われる」と語りました。また、「理屈や大義ない」として、解散の正当性に疑問を呈しています。
野党の選挙準備不足
選挙予測によれば、野党第一党の立憲は野田佳彦代表が存在感を発揮できずに埋没し、現有議席の148から大きく議席を減らす見通しです。共産党と社民党も「党利党略」と批判しており、野党側は準備不足を懸念しています。
国民民主党については、玉木雄一郎代表が次期首相候補に浮上しながらも「日和った」姿勢が支持率に大ブレーキをかけ、予測は1議席減となっています。早期解散は、野党側の準備不足を突く狙いがあると見られています。
自民・維新連立の火種
「閣外連立」のリスク
自民党と維新の連立政権には、複数の火種が存在します。第一に、維新は閣内入りを固辞しており、「閣外連立」という異例の形態となっています。高市首相は維新の閣内入り固辞に「ありえへん」と不快感を示したとされ、連立の基盤は必ずしも強固とは言えません。
第二に、議員定数削減をめぐる攻防です。維新は議席削減を連立合意の核心と位置付けていますが、自民党内には慎重論も根強く、法案成立の見通しは不透明です。通常国会で法案成立が困難な場合、維新は「内閣信任の問題」として強硬姿勢を取る可能性があります。
選挙区競合とパイプの細さ
第三に、自民党と維新は大阪を中心に選挙区で競合しています。連立を組んでいながら、同じ選挙区で候補者を立てて争う構図は、連携の実効性に疑問を投げかけます。
第四に、両党間のパイプの細さも指摘されています。維新が閣内入りしていないため、政策調整や情報共有の面で課題があり、連立維持には継続的な努力が必要です。
2026年政局の4つのシナリオ
シナリオ1:春解散(4〜5月)
通常国会で2026年度予算を成立させた後、4〜5月に解散する案です。予算成立により政治空白を最小限に抑え、統一地方選挙(4月)後のタイミングで国民の信を問います。維新との連立合意である議席削減法案の行方が、このシナリオの鍵を握ります。
シナリオ2:夏解散(7〜8月)
通常国会閉会後、7〜8月に解散する案です。議席削減法案の成立状況を見極め、維新との連立を維持しながら選挙に臨むタイミングです。ただし、真夏の選挙は投票率低下の懸念があります。
シナリオ3:秋解散(9〜10月)
臨時国会の冒頭で解散する案です。2025年10月の総選挙から約1年後のタイミングであり、高市政権1年の実績を問う形になります。ただし、支持率が低下している場合は、早期解散の機会を逃したことへの批判も予想されます。
シナリオ4:解散見送り
2026年中の解散を見送り、2027年以降に先送りする案です。維新との連立維持を優先し、じっくりと政権基盤を固める戦略ですが、支持率が低下した場合、解散のタイミングを失うリスクがあります。
冒頭解散の実現可能性
高支持率という追い風
高市首相が冒頭解散を検討する最大の理由は、70%超の高い内閣支持率です。この追い風を生かして早期に信を問うことで、安定的な議席を確保し、政権基盤を強化する狙いがあります。
野党の準備不足を突く形となり、自民党にとっては有利な展開が予想されます。選挙予測によれば、1月解散は自民圧勝の可能性が高く、戦略的には合理的な選択と言えます。
予算遅れという逆風
一方で、2026年度予算の遅れは大きな懸念材料です。「強い経済」を掲げる高市政権にとって、予算の遅れによる経済政策の停滞は、政権の看板政策に影を落とします。
また、真冬の選挙は有権者にとって投票しにくく、投票率の低下が懸念されます。低投票率は民意の正当性を損なう可能性があり、「大義なき解散」との批判を招くリスクがあります。
まとめ
23日召集予定の通常国会冒頭での衆院解散案は、高市首相にとって高支持率を背景とした戦略的な選択肢の一つです。しかし、維新は連立合意の内容を国民に問う姿勢を示し、野党は「理屈も大義ない」として批判しています。
予算遅れによる政治空白、真冬の投票環境、維新との連立維持など、冒頭解散には多くの課題があります。高市首相は、春・夏・秋・見送りという4つの選択肢の中から、慎重に判断を下すことになります。
2026年政局の最大の焦点は、高市首相の解散判断です。70%超の高支持率をどう生かすのか、維新との連立をどう維持するのか、そして「強い経済」という看板政策をどう実現するのか。この3つの課題のバランスを取りながら、首相は解散のタイミングを見定めることになります。
参考資料:
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