高市首相が通常国会冒頭で衆院解散へ、2月選挙か
はじめに
高市早苗首相が1月23日召集の通常国会冒頭で衆院を解散する意向を固め、1月14日に自民党幹部に正式に伝えることが明らかになりました。衆院選の投開票日は2月上中旬が見込まれており、実施されれば36年ぶりの「真冬の選挙」となります。
日本初の女性首相として2025年10月に就任した高市首相は、内閣支持率76%という高水準を維持しています。この高い支持率を背景に、「責任ある積極財政」路線への信任を国民に問い、与党の議席増により政策推進の基盤を強化する狙いがあります。
本記事では、冒頭解散の背景と狙い、各党の反応、そして選挙戦の見通しについて解説します。
冒頭解散決断の背景
76%の内閣支持率
高市首相が冒頭解散に踏み切る最大の理由は、内閣支持率の高さにあります。2026年1月時点の世論調査では、支持率76.1%、不支持率17.8%を記録しており、発足以来の最高値を更新しています。
特筆すべきは若年層からの支持の厚さです。20代から40代の支持率が特に高く、岸田文雄・石破茂両内閣で離れていった層を引き戻すことに成功しています。産経新聞75.9%、毎日新聞67%、日経新聞75%、読売新聞73%と、各社調査で軒並み高水準を維持しています。
ねじれ国会の解消を狙う
現在の国会は、衆院で与党が過半数を握る一方、参院では野党が多数を占める「ねじれ」状態にあります。2024年10月の衆院選で与党が過半数を割り込んだことで、国会運営に苦慮する場面が続いてきました。
高市首相としては、衆院選で議席を大幅に増やすことで、政策遂行の強力な「白紙委任」を国民から得たい考えです。特に積極財政路線や安全保障政策の推進には、安定した議会基盤が不可欠と判断したとみられます。
野党の準備不足を突く
通常国会冒頭での解散は、野党にとって不意打ちとなります。立憲民主党や国民民主党は選挙区調整が進んでおらず、短期決戦となれば与党に有利との計算も働いています。
一方、野党からは「解散の大義がない」「予算審議を放棄するのか」といった批判の声が上がっており、選挙戦では争点化される可能性があります。
選挙日程の見通し
2月投開票が軸
衆院選の日程は、「1月27日公示・2月8日投開票」または「2月3日公示・2月15日投開票」のいずれかが有力とされています。2月の衆院選となれば1990年以来36年ぶりの「真冬の決戦」です。
総務省は1月10日、各都道府県選挙管理委員会に対し、衆議院総選挙の執行準備に関する通知を発出しています。既に行政側は選挙実施に向けた準備を進めている状況です。
自民党内での調整
自民党は1月13日、都道府県連への書簡で19日までに衆院選の公認候補を申請するよう要請しました。わずか数日での候補者決定を求める異例の対応であり、冒頭解散への本気度がうかがえます。
木原稔官房長官は1月13日、自民党の鈴木俊一幹事長と会談し、解散をめぐり意見交換したとみられています。
「責任ある積極財政」への信任を問う
経済対策の実績
高市首相は2025年11月21日、「強い経済」を実現する総合経済対策を閣議決定しました。2025年度補正予算案は17.7兆円、減税分を含めた経済対策の規模は総額21.3兆円に達します。
「責任ある積極財政」とは、行き過ぎた緊縮財政から転換し、積極的な財政支出によって経済成長を促す方針です。従来重視されてきたプライマリーバランスの黒字化ではなく、政府債務残高の対GDP比を重視しながら、必要に応じて財政支出を拡大する姿勢を示しています。
市場の反応
ただし、積極財政路線に対する市場の反応は必ずしも良好ではありません。国債発行に依存しながらのインフレ下での財政拡大に対し、円が売られ長期金利は上昇しています。
1月13日の金融市場では、衆院早期解散構想の浮上を受けて株高と円安・債券安が同時に進みました。日経平均株価が初の5万3,000円台に乗せた一方、対ドルの円相場は約1年半ぶりの安値水準まで下落しています。「高市相場」再来との見方もある一方、財政拡張への懸念も根強く残っています。
野党の対応と選挙協力
立憲民主党の戦略
野党第一党の立憲民主党は、国民民主党との選挙協力を急いでいます。どちらかの現職がいる選挙区には独自候補を立てない方針を国民民主党に働きかけています。
また、公明党に対しても選挙協力への秋波を送り、票の積み上げに布石を打つ動きが見られます。与野党の垣根を越えた協力関係の構築が、野党にとっての生命線となりそうです。
国民民主党の独自路線
一方、国民民主党は全県擁立の方針を示しており、立憲民主党との調整は難航する可能性があります。「手取りを増やす」をスローガンに掲げた減税路線が若年層に支持されており、独自色を打ち出したい思惑があります。
維新との関係
日本維新の会は、大阪府の吉村洋文知事と大阪市の横山英幸市長が辞職し、出直し選に立候補する方向で調整を進めています。衆院選との同日選挙となる可能性があり、維新にとっては追い風となる可能性があります。
冒頭解散への慎重論
予算審議への影響
冒頭解散に対しては、与党内からも慎重論が出ています。最大の懸念は2026年度予算案の成立が4月以降に遅れることです。物価高対策への影響として、高市政権が最優先課題とする「物価高・低所得世帯支援」の執行が遅れる恐れがあります。
通常国会の冒頭で解散すれば、予算審議は選挙後にずれ込みます。4月からの新年度に予算が間に合わない事態は、国民生活に直接影響を及ぼしかねません。
「解散の大義」への疑問
野党からは「解散の大義がない」との批判も出ています。前回の衆院選から1年余りしか経っておらず、なぜ今解散するのかという国民への説明が求められます。
高市首相としては、積極財政路線への信任を問うという大義を掲げる構えですが、それが国民に受け入れられるかは選挙結果で判明することになります。
今後の展望
選挙戦の争点
今回の衆院選では、積極財政路線の是非、安全保障政策、社会保障改革などが主要な争点となる見通しです。高市首相の個人的な人気は高いものの、自民党の政党支持率28.6%との間には約47ポイントもの乖離があり、政党としての自民党への信任が問われます。
経済政策への期待は各社調査で上位に挙がっており、「責任ある積極財政」が国民にどう評価されるかが勝敗を分けることになりそうです。
政治地図の変化
選挙結果次第では、日本の政治地図が大きく変わる可能性があります。与党が議席を大幅に増やせば、高市首相の政権基盤は一気に強化されます。逆に議席減となれば、政権運営は困難を極めることになります。
2026年は参院選も控えており、衆院選の結果がその後の政局を大きく左右します。
まとめ
高市早苗首相が1月23日召集の通常国会冒頭で衆院解散に踏み切る意向を固めました。内閣支持率76%という高い支持を背景に、「責任ある積極財政」路線への信任を国民に問い、政権基盤の強化を図る狙いです。
投開票日は2月上中旬が見込まれ、36年ぶりの「真冬の選挙」となります。予算審議の遅れや解散の大義など課題も指摘される中、与野党は短期決戦に向けた準備を急いでいます。日本初の女性首相による異例の決断が、日本政治にどのような変化をもたらすのか、注目が集まっています。
参考資料:
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