高市首相が国民民主に「プロポーズ」連立拡大の狙い
はじめに
2026年1月26日、日本記者クラブ主催の党首討論会で、高市早苗首相が国民民主党に対して「公開プロポーズ」とも言える連立参加の呼びかけを行いました。首相は「国民民主には早くからプロポーズを送っている」「私の『責任ある積極財政』に非常に親和性が高い」と述べ、両党の政策的な近さを強調しました。
現在、自民党は日本維新の会と連立政権を組んでいますが、衆参両院ともに過半数ギリギリの状況です。2月8日投開票の衆院選を控え、高市首相は政権基盤の安定化に向けて、国民民主党との連携強化を模索しています。
本記事では、自維連立政権の現状、国民民主党との関係、そして衆院選後の政権枠組みについて解説します。
自民・維新連立政権の現状
異例の連立の経緯
高市早苗氏は2025年9月の自民党総裁選で勝利し、同年10月21日に第104代内閣総理大臣に就任しました。女性初の首相誕生は歴史的な出来事でしたが、自民党は2024年10月の衆院選、2025年7月の参院選で連敗し、厳しい政治状況にありました。
従来の連立パートナーだった公明党は2025年10月に連立離脱を決定。代わって日本維新の会との連立が成立しましたが、維新は「閣外協力」という形を選び、閣僚を出さない異例の形態となっています。
維新との関係
維新は与党として政権運営に加わりながらも、独自色を維持する姿勢を見せています。連立合意では、食料品への消費税免除の検討、衆議院議員定数の1割削減、憲法改正の推進などが盛り込まれました。
しかし、維新が閣僚を出さない「閣外連立」にとどまっていることで、自民党内からは不満の声も上がっています。高市首相は「維新との連立維持がマスト」としつつも、より安定した政権基盤を求めて国民民主党にも秋波を送っています。
国民民主党との接点
「積極財政」という共通言語
高市首相と国民民主党には、「積極財政」という政策面での共通点があります。高市氏は自民党総裁選以来「責任ある積極財政」を掲げてきました。一方、国民民主党の玉木雄一郎代表も「我々は元祖積極財政」と自任しています。
積極財政とは、国が公共投資や社会保障への予算を増やし、経済全体にお金を循環させる政策です。従来の「緊縮財政」路線を転換し、経済成長を優先する考え方で、両者の理念は近いと言えます。
年収の壁引き上げでの協力
国民民主党が2024年から求めてきた「年収の壁」の引き上げについて、高市政権は178万円への引き上げで合意しました。これは国民民主党の主張が実現した形であり、両党の協力関係を示す象徴的な出来事となりました。
また、ガソリン暫定税率の廃止も実現し、国民民主党は「30年ぶりの103万円の壁引き上げ」「50年ぶりのガソリン暫定税率廃止」を成果として掲げています。
玉木代表の対応と課題
解散への反発
一方で、両党の関係は順調とは言い切れません。高市首相が2026年1月23日に通常国会冒頭で衆院解散を断行したことに対し、玉木代表は強く反発しました。
玉木氏は、冒頭解散により2026年度予算案の年度内成立が困難になることを「経済後回し解散」と批判。「賛成を確約できなくなる」と述べ、予算案への協力姿勢を後退させる構えを見せました。
連立参加へのハードル
国民民主党が連立に参加するには、いくつかのハードルがあります。まず、党の独自性をどう維持するかという問題があります。維新のように「閣外協力」にとどまれば独自色を出せますが、政策への影響力は限定的になります。
また、国民民主党の支持層には、自民党への接近に慎重な声もあります。玉木代表は「良い政策には協力する」という「是々非々」の姿勢を維持しており、すぐに連立入りする可能性は低いと見られています。
衆院選後の政権枠組み
各党の議席予想
2月8日投開票の衆院選では、与党が過半数(233議席)を維持できるかが焦点です。選挙予測によると、高市政権の高い支持率を受けて自民党は議席を増やす可能性が高く、単独過半数も視野に入るとの見方もあります。
一方、維新については、高い内閣支持率の中で「与党内での埋没」が懸念されています。国民民主党は直近の国政選挙で議席を伸ばしており、今回も躍進が期待されています。
連立拡大のシナリオ
衆院選の結果次第では、いくつかのシナリオが考えられます。
シナリオ1:自民単独過半数 自民党が単独で過半数を確保すれば、維新や国民民主党との連携は政策協力程度にとどまる可能性があります。ただし、参院では依然として過半数に達しないため、何らかの協力関係は必要です。
シナリオ2:自維で過半数維持 現状と同程度の議席であれば、高市首相は国民民主党に引き続き連立参加を働きかけるでしょう。参院選を見据えた政権安定化のため、3党連立を目指す可能性があります。
シナリオ3:与党過半数割れ 万が一、自維で過半数を割り込めば、国民民主党の協力は不可欠となります。その場合、国民民主党は政策面でより大きな譲歩を引き出せる立場になります。
注意点・今後の展望
野党再編の影響
政界では立憲民主党と公明党が新党「中道改革連合」を結成するなど、大きな再編が進んでいます。この動きは国民民主党の立場にも影響を与える可能性があります。
野党勢力が再編・統合に動く中、国民民主党が独自路線を維持するのか、それとも与党への接近を強めるのかは、今後の政局を左右する重要な要素です。
参院選への布石
高市首相が国民民主党に「プロポーズ」する背景には、次の参院選も見据えた計算があります。参院でも安定多数を確保するためには、国民民主党の協力が有効です。衆院選の結果を踏まえて、両党の関係がどう発展するか注目されます。
まとめ
高市首相が国民民主党に送った「プロポーズ」は、政権安定化に向けた布石です。「積極財政」という共通の政策理念を持つ両党ですが、連立参加には様々なハードルがあります。
2月8日の衆院選結果が、今後の政権枠組みを大きく左右することになるでしょう。国民民主党が「是々非々」の姿勢を維持するのか、それとも本格的な連立参加に踏み切るのか、玉木代表の判断が注目されます。
参考資料:
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