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by nicoxz

トランプ大統領のグリーンランド取得要求と欧州への関税圧力が引き起こす同盟の亀裂

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はじめに

2026年1月16日、トランプ米大統領がデンマーク自治領グリーンランドの取得を支持しない国に追加関税を課す方針を発表し、国際社会に衝撃が走りました。翌17日には、デンマークを含む欧州8カ国に対し2月1日から10%の輸入関税を課し、6月には25%に引き上げると具体的な数値まで示しています。

この発言は、NATO同盟国間の信頼関係を根底から揺るがす深刻な事態です。戦後築かれてきた西側諸国の安全保障体制が、トランプ政権の一方的な要求によって崩壊の危機に直面しています。本記事では、なぜグリーンランドがこれほど重要視されるのか、欧州諸国はどう反応しているのか、そして今後の展望について詳しく解説します。

グリーンランドの戦略的価値とトランプ政権の狙い

地政学的な重要性

グリーンランドは北米大陸と欧州の間に位置し、北極海と大西洋を結ぶ海上航路「GIUKギャップ」に跨る戦略的要衝です。トランプ大統領が「国家安全保障のために必要だ」と繰り返し強調する背景には、この地理的優位性があります。

現在、グリーンランドには米宇宙軍が運用する「ピトゥフィク宇宙基地(旧チューレ空軍基地)」があり、ロシアや中国からの弾道ミサイルを監視するレーダー網の要となっています。北極海では中露が進出を強めており、米国にとってグリーンランドは戦略海域への橋頭堡として軍事・経済安全保障上、極めて重要な位置づけにあるのです。

豊富な地下資源への野心

トランプ政権が重視するもう一つの要素が、グリーンランドの豊富な地下資源です。特にレアアース(希土類)は、スマートフォンやEV、最先端兵器など、あらゆる先端技術に不可欠な戦略物資となっています。

グリーンランドには世界最大規模の鉱床であるクベーンフェルドがあり、酸化物換算量で年間3万8000トンのレアアース鉱石を生産する米国と同等規模の150万トンの埋蔵量が確認されています。未開発地域においては世界最大規模のポテンシャルを秘めているとされます。

トランプ政権の関係者は、グリーンランドの地下資源を「中国のレアアース独占を緩める手段」と捉えています。現在、中国は世界のレアアース供給の大部分を握っており、米国は中国への依存を減らす必要に迫られています。グリーンランドの資源開発は、この戦略的脆弱性を克服する切り札となり得るのです。

開発の現実的な課題

しかし、グリーンランドの資源開発には大きな障壁があります。地表の約80%が氷に覆われており、北極圏での採掘は地球上の他の場所に比べ5~10倍もの費用がかかる可能性があるとされています。

さらに2021年の政権交代後、グリーンランドは脱炭素の方向に大きく舵を切っており、環境への配慮も開発の障害となっています。トランプ政権の野心的な計画が、経済的・環境的な現実と衝突する可能性は高いと言えるでしょう。

欧州諸国の強い反発とNATOの危機

デンマークの警告

トランプ大統領の発言に対し、デンマークのフレデリクセン首相は「米国がNATO加盟国への軍事攻撃を選択すれば、NATOを含め第2次大戦後に築かれた安全保障のすべてが停止する」と強く警告しました。グリーンランドも米国の一部になることを望まないと再三表明しています。

この警告は決して誇張ではありません。NATOは集団的安全保障として同盟国が攻撃されれば一致団結して行動するのが基本原則です。同盟国同士が対立すれば、NATO自体が機能不全に陥る可能性があります。

欧州諸国の連帯行動

トランプ大統領の脅しに対し、欧州諸国は連帯を示しています。ドイツ、スウェーデン、フランス、ノルウェーは、デンマーク軍との合同演習のため、グリーンランドに軍要員を派遣する方針を確認しました。

「北極の忍耐(Arctic Endurance)作戦」と名付けられたこの演習には、ドイツやフランス、英国、デンマークなどNATO内の欧州加盟国の多数が参加しています。これはトランプ政権に対する明確な反発のメッセージと言えるでしょう。

関税という経済的圧力

トランプ大統領は、グリーンランド領有に反対しデンマークを支持する欧州諸国に対し、具体的な経済制裁に踏み込んでいます。対象となるのは、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランス、ドイツ、英国、オランダ、フィンランドの欧州8カ国です。

2月1日から10%の輸入関税を課し、6月には25%に引き上げるという段階的な圧力をかける構えです。この関税は「米国によるグリーンランドの完全かつ全面的な購入に関する合意が成立するまで継続する」としており、明確な恫喝と言える内容です。

同盟国に対して経済制裁を課すという異例の事態は、戦後築かれてきた西側諸国の協力関係を根本から破壊しかねません。

注意点と今後の展望

NATO同盟の信頼崩壊リスク

同志社大の吉田徹教授は「NATOは集団的安全保障として同盟国が攻撃されれば一致団結して行動するのが基本。(武力行使があれば)機能不全に陥りかねない」と危惧しています。

トランプ政権が本当に武力行使に踏み切るかは不透明ですが、発言だけでも同盟国間の信頼は大きく損なわれています。欧州諸国は米国の安全保障コミットメントを疑い始めており、独自の防衛体制強化の動きが加速する可能性があります。

グリーンランドの自己決定権

この問題で最も軽視されているのが、グリーンランド住民の意思です。グリーンランドはデンマークの自治領ですが、約5万6000人の住民は独自のアイデンティティを持ち、将来の完全独立を視野に入れています。

米国による一方的な領有要求は、グリーンランドの人々の自己決定権を無視したものであり、国際法の観点からも問題があります。仮にデンマークが譲歩しても、グリーンランド住民の同意なしに実現することは困難でしょう。

中国・ロシアの動向

この混乱から利益を得る可能性があるのが、中国とロシアです。NATO同盟の分断は、両国にとって戦略的に有利な状況を生み出します。特に北極圏での影響力拡大を狙う両国は、米欧の対立を注視しているでしょう。

グリーンランドのレアアース鉱床には、中国企業が既に投資しており、中国の影響力も無視できません。米国の強引な姿勢が、かえって中国に漁夫の利を与える結果になる可能性もあります。

まとめ

トランプ大統領のグリーンランド領有要求と関税による圧力は、戦後の国際秩序を揺るがす深刻な問題です。グリーンランドの戦略的価値とレアアース資源は確かに重要ですが、同盟国への経済制裁という手段は西側諸国の結束を破壊しかねません。

デンマークと欧州諸国は連帯してトランプ政権に抵抗しており、NATO同盟の危機は深まっています。この対立が長期化すれば、米欧関係の修復不可能な亀裂を生み、中国やロシアに戦略的優位を与える結果になるでしょう。

今後の展開を注視し、国際社会がどのようにこの危機に対応するのか、引き続き見守る必要があります。同盟国間の対話と相互尊重こそが、この問題を解決する唯一の道であることは間違いありません。

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