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by nicoxz

トランプ氏がJPモルガンとダイモンCEOを提訴した背景

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はじめに

2026年1月22日、トランプ米大統領が米銀最大手JPモルガン・チェースと同社の最高経営責任者(CEO)ジェイミー・ダイモン氏を提訴したことが明らかになりました。訴訟の請求額は50億ドル(約7900億円)にのぼります。

訴訟の争点は「デバンキング」と呼ばれる問題です。デバンキングとは、銀行が特定の顧客との取引を一方的に停止することを指します。トランプ氏は、2021年1月の連邦議会襲撃事件後にJPモルガンが自身や関連企業の口座を解約したのは「政治的動機」によるものだと主張しています。

本記事では、訴訟の経緯と内容、JPモルガン側の反論、そしてこの訴訟が米国の金融業界や政治に与える影響について詳しく解説します。

訴訟の背景と経緯

議会襲撃事件後の口座解約

2021年1月6日、トランプ大統領(当時)の支持者らが米連邦議会議事堂を襲撃する事件が発生しました。この事件は米国政治史上に残る重大な出来事として、国内外に大きな衝撃を与えました。

事件から約7週間後、JPモルガン・チェースはトランプ氏および関連企業の口座を閉鎖しました。当時、トランプ氏はジョー・バイデン前大統領への選挙敗北を経て退任した直後であり、政治的な立場は弱まっていた時期でした。

提訴に至る経緯

トランプ大統領は2026年1月17日、自身のSNSで「1月6日の抗議行動後に不当かつ不適切にデバンキングの扱いを受けたことについて、JPモルガン・チェースを2週間以内に提訴する」と予告していました。そして予告通り、1月22日にフロリダ州マイアミ・デイド郡の州裁判所に訴状が提出されました。

訴状によると、原告(トランプ氏側)は数十年にわたりJPモルガンの顧客でした。長年の取引関係があったにもかかわらず、銀行は「警告も理由の説明もなく」一方的に口座の解約を通知したと主張しています。

訴状の主な主張

政治的差別の訴え

訴状の核心は、JPモルガンによる口座解約が「政治的・社会的動機」に基づいていたという主張です。訴状では、銀行が「ウォーク(woke)」な信条に基づき、「トランプ大統領および保守的な政治的見解から距離を置く必要がある」と判断したと指摘しています。

「ウォーク」とは、社会正義や人種差別への意識が高いことを指す言葉で、保守派からは進歩的な企業姿勢を批判する文脈で使われることがあります。トランプ氏側は、JPモルガンがこうしたリベラルな価値観に基づいて顧客を選別したと主張しています。

ブラックリストへの登録

訴状はさらに踏み込んだ主張も展開しています。JPモルガンは口座を解約しただけでなく、トランプ氏、トランプ・オーガニゼーション、そして家族をウェルス・マネジメント(富裕層向け資産運用)口座の「ブラックリスト」に登録したとされています。

これにより、トランプ氏側は単に既存の口座を失っただけでなく、将来にわたって同行の高付加価値サービスから排除されたと主張しています。

法的根拠

訴状は以下の法的根拠に基づいて提起されています。

  • 取引誹謗(Trade Libel): 銀行の行為がトランプ氏のビジネス上の評判を傷つけたという主張
  • 信義誠実義務違反(Breach of Implied Covenant of Good Faith): 長年の取引関係において暗黙に期待される誠実な対応を銀行が怠ったという主張
  • フロリダ州欺瞞的取引慣行法違反: ダイモンCEO個人に対する主張

JPモルガンの反論

訴訟に対する公式見解

JPモルガンは訴訟に対し、正式なコメントを発表しました。広報担当のパトリシア・ウェクスラー氏は「トランプ大統領に訴訟を起こされたことは残念ですが、この訴訟には根拠がないと考えています」と述べました。

また、「大統領には訴訟を起こす権利があり、私たちには自らを弁護する権利があります。それが裁判所の存在意義です」と、法廷で争う姿勢を示しました。

口座解約の理由

JPモルガンは、政治的または宗教的な理由で口座を解約することはないと主張しています。同行の声明によると、「口座を閉鎖するのは、それが会社に法的または規制上のリスクをもたらす場合です。そうせざるを得ないことは残念ですが、多くの場合、規則や規制上の期待がそうさせるのです」と説明しています。

この説明は、口座解約が政治的差別ではなく、コンプライアンス(法令遵守)上の判断だったことを示唆しています。

トランプ氏とダイモン氏の対立

緊張関係の高まり

今回の訴訟は、トランプ大統領とダイモンCEOの間で高まっていた緊張関係の延長線上にあります。多くの米国企業のCEOがトランプ氏の経済政策を公に批判することを避ける中、ダイモン氏は比較的率直に意見を述べてきました。

先週、ダイモン氏はトランプ政権による連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長に対する調査を批判しました。また、今週スイスのダボスで開催された世界経済フォーラムでは、トランプ大統領が提案したクレジットカード金利の10%上限について「経済的災害」を招くリスクがあると述べ、「アメリカ人の80%がクレジットへのアクセスを失う」と警告しました。

大統領権力と企業経営者の関係

現職の大統領が米国最大の銀行とそのCEOを個人的に提訴するという事態は、前例のないものです。この訴訟は、大統領権力と企業経営者の関係、そして政治的な対立が司法の場に持ち込まれることの是非について、重要な問いを投げかけています。

デバンキング問題の広がり

保守派に対するデバンキングの主張

トランプ大統領は、JPモルガンだけでなく複数の大手銀行を「保守派をデバンキングしている」と批判してきました。昨年には同様の主張でキャピタル・ワンを提訴しており、今回のJPモルガン訴訟はその延長線上にあります。

2025年8月には、「政治的または違法なデバンキング」を標的とした大統領令に署名しました。トランプ氏はこの問題を、保守派やキリスト教徒、銃所持者などが銀行サービスから不当に排除されているという、より広範な社会問題の一部として位置づけています。

訴訟戦略の一環

今回の訴訟を担当する弁護士アレハンドロ・ブリト氏は、フロリダ州コーラルゲーブルズを拠点としており、キャピタル・ワン訴訟も担当しています。同氏はまた、トランプ大統領の代理人として、ニューヨーク・タイムズ紙、ウォール・ストリート・ジャーナル紙、BBC(英国放送協会)に対しても名誉毀損訴訟を起こしており、請求額は合計350億ドルにのぼります。

注意点・展望

訴訟の行方

この訴訟がどのような結末を迎えるかは不透明です。JPモルガン側は「根拠がない」として争う姿勢を示しており、長期化する可能性があります。

訴訟で争われる重要なポイントは、銀行が口座を解約した真の理由が「政治的差別」だったのか、それとも「法的・規制上のリスク管理」だったのかという点です。この立証は容易ではありません。

金融業界への影響

この訴訟の結果にかかわらず、金融業界には一定の影響が及ぶ可能性があります。銀行が顧客の口座を解約する際の判断基準や説明責任について、より厳格な対応が求められるようになるかもしれません。

また、政治的に敏感な顧客との取引について、銀行がより慎重になる可能性もあります。これは、政治活動家や論争的な人物にとって金融サービスへのアクセスがより困難になるという意味を持ち得ます。

大統領としての訴訟提起

現職の大統領が個人として民事訴訟を提起することの妥当性についても議論があります。大統領権力を背景にした訴訟は、相手方に対する圧力として機能する可能性があるためです。

まとめ

トランプ大統領によるJPモルガン・チェースおよびダイモンCEOへの50億ドル訴訟は、2021年の議会襲撃事件後の口座解約を「政治的差別」と主張するものです。トランプ氏は、銀行が「ウォーク」な信条に基づいて保守派を排除したと訴えています。

一方、JPモルガン側は政治的理由での口座解約を否定し、訴訟には根拠がないと反論しています。この訴訟は、デバンキング問題という社会的議論、トランプ氏とダイモン氏の個人的対立、そして大統領権力と企業の関係という複数の文脈が交錯する複雑な事案です。

訴訟の行方は不透明ですが、金融業界における顧客選別の基準や、政治と金融の関係について重要な先例となる可能性があります。

参考資料:

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