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by nicoxz

英スターマー首相、トランプ大統領に「関税は間違い」と直言

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はじめに

2026年1月18日、英国のキア・スターマー首相は、トランプ米大統領と電話協議を行い、グリーンランド取得を目的とした欧州8カ国への追加関税措置について「間違っている」と直接伝えました。

トランプ大統領は前日の17日、デンマーク自治領グリーンランドを「完全に購入する」まで、英国を含む欧州8カ国からの輸入品すべてに10%の関税を課すと発表しており、この突然の措置がNATO同盟国間に深刻な亀裂を生んでいます。本記事では、スターマー首相の対応、英国への経済的影響、そして欧州の団結した反発について解説します。

スターマー首相の対応と主張

トランプ大統領との直接対話

英首相官邸の発表によると、スターマー首相はトランプ大統領との電話協議に先立ち、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相、欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長、NATOのマルク・ルッテ事務総長とそれぞれ電話会談を行いました。

その上でトランプ大統領に対し、「北極圏の安全保障はユーロ大西洋の利益を守る観点から、すべてのNATO加盟国の最優先事項である」と説明し、「NATOの集団安全保障に貢献しようとしている同盟国に関税を課すことは間違っている」と明確に伝えました。

グリーンランドに関する英国の立場

スターマー首相は「グリーンランドはデンマーク王国の一部であり、その将来はグリーンランドの人々とデンマークの人々が決める問題だ」と述べ、主権尊重の原則を明確にしました。

同時に、「我々は北極の安全保障がNATO全体にとって重要であることを明らかにしてきた。同盟国はロシアの脅威に対処するため、北極圏のさまざまな地域でより多くのことを共に行うべきだ」と強調し、北極圏の安全保障強化については米国と目標を共有していることも示しました。

ダウニング街での声明予定

スターマー首相は翌19日(月曜日)にダウニング街で声明を発表する予定で、同盟国との協力に関する英国のアプローチについて説明すると報じられています。首相は「英国は価値観に導かれる」姿勢を示し、国民の安全保障、生活水準、将来を守る決意を表明する見込みです。

関税措置の概要と英国経済への影響

トランプ大統領の関税発表

トランプ大統領は1月17日、自身のSNS「Truth Social」で、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランス、ドイツ、英国、オランダ、フィンランドの8カ国に対し、2月1日から10%の追加関税を課すと発表しました。6月1日にはこれを25%に引き上げ、グリーンランド購入の合意に達するまで維持するとしています。

この発表は同盟国への事前通告なく行われ、関係国の政府関係者は疎外感と苛立ちを感じていると報じられています。ある当局者はこれを「米欧関係における潜在的な転換点」と表現しました。

英国経済への想定される影響

英国から米国への輸出はGDPの約2.2%を占め、EU平均の約3%、ドイツの約4%と比較すると相対的に低い水準にあります。そのため、関税による直接的なGDPへの影響は0.2%程度と見込まれています。

ただし、特定のセクターへの影響は深刻です。英国が米国に輸出する製品の10%は自動車であり、医薬品も関税の影響を受けやすい分野です。経済協力開発機構(OECD)は、関税戦争の影響で英国の2026年の経済成長率予測を当初の1.2%から1.0%に下方修正しています。

為替への影響

全米経済社会研究所(NIESR)のモデルによると、関税引き上げに対応して投資家がドルに殺到し、ポンドは10〜15%程度下落する可能性があります。この為替変動は輸入物価の上昇を通じて、英国のインフレに影響を与える可能性があります。

欧州8カ国の団結した反発

共同声明の発表

関税の対象となった8カ国(デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、英国)は1月18日、共同声明を発表しました。

声明では「関税の脅迫は大西洋を跨ぐ関係を損ない、危険な悪循環を招くリスクがある」と警告し、「我々は団結して協調的に対応し続ける。主権と領土保全を守ることに全力を尽くす」と宣言しています。

また、デンマーク主導の軍事演習「オペレーション・アークティック・エンデュランス」について、「同盟国と共に行う事前調整された演習であり、誰への脅威にもならない」と説明しました。

各国首脳の反応

デンマークのフレデリクセン首相は「欧州は恫喝に屈しない」とソーシャルメディアに投稿し、欧州大陸からの一致したメッセージに勇気づけられたと述べました。

フランスのマクロン大統領は関税措置を「受け入れられない」と非難し、EUの対抗措置の検討を求めています。ドイツのメルツ首相も「我々はデンマークとグリーンランドの人々と共にある」と連帯を表明しました。

グリーンランドでの抗議活動

グリーンランドの中心都市ヌークでは抗議集会が行われ、人口5万6,000人の島で約5,000人が参加したと推定されています。グリーンランドのニールセン首相は「選択を迫られるなら、我々はデンマークを選ぶ。NATOを選ぶ」と明言しています。

英国の北極圏戦略

デンマークへの軍事支援

英国はデンマークの要請を受け、グリーンランドに軍将校1名を派遣しました。これは北極圏耐久演習に先立つ偵察グループへの参加目的とされ、「展開」には当たらないとダウニング街は説明しています。

スターマー首相は、トランプ大統領にグリーンランド併合の必要がないことを説得する外交努力の一環として、欧州のNATO同盟国に北極圏でのセキュリティプレゼンス強化を呼びかけてきました。

北極安全保障の重要性

英国政府は、北極圏の安全保障がNATO全体にとって重要な課題であることを強調しています。ロシアの北極圏での活動活発化を背景に、同盟国間の協力強化が求められています。

注意点・今後の展望

ダボス会議での首脳外交

今週開催される世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、トランプ大統領と欧州首脳の直接対話が予定されています。この場での外交交渉が、関税紛争の緩和につながるかどうかが注目されています。

2月1日の発動期限

10%関税の発動まで約2週間しかなく、交渉の時間は限られています。EUも930億ユーロ規模の報復措置を準備しており、双方が妥協点を見いだせなければ本格的な貿易戦争に突入する可能性があります。

英国の立ち位置

Brexit後の英国は、EUとは別個の立場で米国との関係を構築してきました。2025年5月には米英経済繁栄協定の大枠が合意され、12月には医薬品の関税免除も発表されています。今回の関税措置がこれらの二国間関係にどのような影響を与えるかは、今後の交渉次第といえるでしょう。

まとめ

スターマー首相は、トランプ大統領のグリーンランド関税措置に対し、「間違っている」と明確に反対の姿勢を示しました。NATOの集団安全保障を追求する同盟国への関税措置は、戦後の大西洋同盟の根幹を揺るがす問題として受け止められています。

欧州8カ国は団結して対応する姿勢を示しており、今後のダボス会議での首脳外交、そして2月1日の関税発動期限に向けた交渉が、米欧関係の行方を左右する重要な局面となります。英国は価値観に基づく外交を掲げつつ、米国との対話を続ける方針です。

参考資料:

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