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by nicoxz

米欧対立が深刻化、ダボス会議でマクロン氏がトランプ批判

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はじめに

2026年1月、スイス東部ダボスで開催中の世界経済フォーラム(WEF)年次総会、通称「ダボス会議」が、米欧間の深刻な対立の舞台となっています。トランプ米大統領がデンマーク自治領グリーンランドの取得に向けて欧州8カ国に10%の追加関税を表明したことを受け、フランスのマクロン大統領らが痛烈な批判を展開しました。

マクロン大統領は「帝国主義の再来」「無法世界の到来」と警告し、欧州は威圧に屈しないと強硬姿勢を示しています。西側同盟国間でのこれほど激しい対立は、戦後の国際秩序の根幹を揺るがしかねません。本記事では、ダボス会議での米欧対立の実態と今後の影響について解説します。

ダボス会議2026の焦点

「対話の力」がテーマも対立が激化

2026年のダボス会議は1月19日から23日まで開催され、テーマは「対話の力」です。世界60カ国以上の首脳が集まる今年の会議ですが、皮肉にも最大の焦点は米国と欧州の「衝突回避」となりました。

トランプ大統領は1月21日に現地で演説する予定で、6年ぶりのダボス訪問となります。しかし、マクロン大統領は1月20日のみの参加で、トランプ大統領との直接会談は予定されていません。マクロン氏は予定を変更してダボス滞在を延長する計画はないと明言しました。

ウクライナ和平も議題に

ダボス会議にはウクライナのゼレンスキー大統領も参加し、ウクライナ和平が主要な議題の一つとなっています。しかし、米欧間の対立が激化する中、西側の結束を前提としたウクライナ支援の枠組みにも影響が及ぶ可能性があります。

グリーンランド問題の経緯

トランプ大統領の領有要求

トランプ大統領は、米国がデンマーク自治領グリーンランドを取得すると繰り返し主張しています。北極圏に位置するグリーンランドは豊富な天然資源と戦略的重要性を持ち、トランプ大統領は「この神聖な土地は誰にも手を出させない」と述べています。

さらにトランプ大統領は、グリーンランドを「何らかの方法で」取得すると宣言し、軍事力の使用も示唆してきました。自身のSNSには、「グリーンランド、米国領土、2026年設立」と書かれた看板の横に米国旗を立てる合成画像まで投稿しました。

欧州8カ国への関税表明

2026年1月17日、トランプ大統領は欧州8カ国からの輸入品に10%の追加関税を課すと表明しました。対象国はデンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、英国です。

関税は2月1日に発動し、6月1日には税率を25%に引き上げる方針です。トランプ大統領は、これらの国々が米国の「グリーンランド購入」を支持するまで関税を継続すると述べました。

注目すべきは、対象となった8カ国が1月15日にグリーンランドへの軍事要員派遣を発表していた点です。関税表明はこれへの報復とも受け取れます。

ダボスでの欧州首脳の反応

マクロン大統領の痛烈な批判

マクロン大統領は1月20日のダボス会議での演説で、トランプ政権を痛烈に批判しました。「私たちは、ルールのない世界へと移行しつつある。国際法は踏みにじられ、唯一重要なのは強者の論理であり、帝国主義的野心が復活している」と警告しました。

さらに「今は新たな帝国主義や植民地主義の時代ではない」と述べ、「私たちは威圧よりも敬意を、残虐さよりも法の支配を選ぶ」と強調しました。

マクロン氏は、トランプ政権の関税措置について、特に領土をめぐる圧力手段として使われる場合は「根本的に受け入れられない」と断言しました。

私的メッセージの公開という異例の事態

トランプ大統領は自身のSNSで、マクロン大統領との私的なメッセージのやり取りを公開するという異例の行動に出ました。公開されたメッセージでは、マクロン氏が「グリーンランドで何をしているのか理解できない」と困惑を示していたことが明らかになりました。

マクロン氏側の関係者はこのメッセージが本物であることを認めています。外交上の私的やり取りを一方的に公開することは極めて異例であり、両国関係の悪化を象徴する出来事といえます。

他の欧州首脳も反発

デンマークのフレデリクセン首相は議会で、トランプ大統領のグリーンランド取得の脅しは「暗い章」だと述べつつ、欧州は立場を守ると宣言しました。「誰かが我々に対して貿易戦争を始めるなら、当然対応しなければならない」と強調しました。

欧州委員会のフォンデアライエン委員長も、トランプ氏の関税表明を「誤り」と批判し、EUの対応は「揺るぎなく、団結し、相応のもの」になると述べました。

欧州の対抗措置

EUが930億ユーロ規模の報復関税を検討

欧州連合(EU)は、930億ユーロ(約17兆900億円)相当の米国製品に報復関税を課す可能性を協議しています。EU加盟27カ国は1月18日に大使級会合を開き、対応策の準備を開始しました。

マクロン大統領はEUに対し、「貿易バズーカ」と呼ばれる反威圧措置(ACI)の発動を要請しています。これは経済的威圧に対抗するためのEUの制裁ツールです。

ただし、EUはまず外交的解決を図る方針で、対話の余地を残しています。

フランスの軍事増強

フランスはグリーンランドへの軍事プレゼンスを強化しています。すでに約15人のフランス兵がヌーク(グリーンランドの首都)で演習を行っており、陸海空の追加アセットが増強されています。

マクロン大統領は2026年から2030年にかけて360億ユーロの追加軍事支出を計画していることを確認しました。

注意点・展望

関税発動の不透明さ

トランプ大統領の関税表明が実際に発動されるかは不透明な面もあります。関税政策は米国経済を損ね、国民からの批判も高まっているとの指摘があります。

早ければ1月20日にも、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税の合法性について米最高裁の判断が示される可能性があり、これが関税政策に影響を与える可能性があります。

西側同盟への影響

米欧間のこれほどの対立は、NATOを中心とした西側同盟の結束に深刻な影響を与えかねません。対ロシア、対中国という共通課題を抱える中での同盟国間の分裂は、地政学的リスクを高める要因となります。

トランプ大統領はノルウェー首相宛ての書簡で、自身がノーベル平和賞を受賞できなかったことを理由に「平和だけを考える義務を感じなくなった」と述べたと報じられています。首相はノルウェー政府が同賞を授与するわけではないと釈明しましたが、対話の難しさを示すエピソードといえます。

今後の焦点

1月21日のトランプ大統領のダボス演説が次の焦点となります。グリーンランド問題や関税政策についてどのようなメッセージを発するか、世界が注目しています。

欧州各国は報復措置の発動と外交的解決の間で慎重なバランスを取る必要があります。対立がエスカレートすれば、世界経済や国際秩序に大きな影響を与えることは避けられません。

まとめ

ダボス会議2026は、米欧間の深刻な対立を浮き彫りにしました。トランプ大統領のグリーンランド取得への執念と、それに反発する欧州首脳との溝は簡単には埋まりそうにありません。

マクロン大統領が警告した「無法世界」の到来は大げさな表現ではなく、戦後の国際秩序を支えてきた西側同盟の結束が試されています。「対話の力」をテーマに掲げたダボス会議で、皮肉にも対話の難しさが浮き彫りになった形です。

今後の展開次第では、世界経済や安全保障環境に大きな影響が及ぶ可能性があります。日本を含む同盟国は、この事態を注視しつつ、自国の立ち位置を慎重に検討する必要があるでしょう。

参考資料:

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